「評価」を持って街に出よう

「評価」を持って街に出よう

「教えたこと・学んだことの評価」という発想を超えて

宇佐美洋[編]

価格
3,600円+税
ISBN
978-4-87424-686-3 C3081
発売日
2015/12/29
判型
A5
ページ数
368頁
ジャンル
日本語教育 ― 日本語教育専門書
オンライン書店
amazon.co.jp 楽天ブックス

従来「評価」について言及されるとき、それは、「安定しているべきもの」、つまり、だれが評価者となっても常に同じ結果が出るようなものであるべきだ、ということが前提となっていたように思われる。評価の結果によって、被評価者の人生が大きく左右されることを考えれば、客観性・公平性が担保されねばならないことは当然の要請であっただろう。
しか・・・(全文を読む)し、その前提をちょっとだけ留保してみよう。「評価の結果やプロセスが、評価者によって大きく異なることはあり得る」。あるいは、「同一の評価者が同一の評価対象に向き合う場合でも、ほんのちょっとの条件が変わるだけで、評価のプロセスも結果も大きく変わり得る」――日常生活の中では、ごく当たり前に起こり得ることであろう。いや、教育現場でもこういうことは自然に起こっている(学習者の日本語作文に対する採点結果が教師の間で大きくずれ、調整に苦労することは日常茶飯事であろう)。それが、本当にいけないことなのか? 常に排除されなければならないようなことなのか?
そんなことはないであろう。評価者が変わると、なぜ評価の結果やプロセスが変わるのか、同じ評価者でも常に同じような評価を下すわけでないのはなぜなのか、何を要因として評価はばらついたりゆらいだりするのか。また、異なったやり方で評価を行う人々同士が出会ったとき、何が起こるのか、そのような人々同士が良好な人間関係を築いていくためには何が必要なのか――。「評価は~でなければならない」という発想をほんのちょっと脇に追いやるだけで、実に豊かな課題が次々と生まれてくる。(「序章」より)

関連情報

目次
まえがきに代えて

序章 人間探求のための「評価」,という新しい視点 宇佐美 洋

第1部 評価の背後にある多様な観点

第1章 話し合いの評価の観点とそれに影響を与える相互行為―留学生と日本人学生による話し合いの分析から―
森本 郁代・水上 悦雄・柳田 直美

第2章 パフォーマンス評価はなぜばらつくのか?―アカデミック・ライティング評価における評価者の「型」―
田中 真理

第3章 グループによるライティング評価における個人評価点の統一パターン
阿部 新・田中 真理

第2部 評価価値観の形成と変容

第4章 ある成人韓国人の価値観に影響を与えた日本での経験―評価のあり方の変遷に注目して―
李 奎台

第5章 留学生が意味づけた「日本語」とその変容プロセスに関する考察
道端 輝子

第6章 外国人とのやりとりの経験は日本人の言語使用の意識を変えるか―中高年の日本人男性を対象に―
野原 ゆかり

第7章「よい話し合い」のイメージはどのように形成されるか―リーダーのイメージ形成に注目して―
文野 峯子

第3部 「評価」を「学び」につなげる

第8章 学習につながる自己評価―「生活のための日本語」教育の可能性―
金田 智子

第9章 場面に重点を置いたコミュニケーション教育において評価の多様性に注目する意義
田所 希佳子

第10章 多様な価値観を理解する教育実践―職場での協働を目指して―
近藤 彩

第11章 学生の評価観を理解する―日本語学校でのナラティブ的探究から―
工藤 育子

第12章 教師教育における評価活動を通した学び―模擬授業時の相互評価に見られる多様な評価の観点とその拡がり―
林 さと子・八木 公子

第13章 学習者によるアノテーションを用いた協調学習過程観察支援システムの設計
山口 昌也・大塚 裕子・北村 雅則

第4部 評価表現の集約による行動規準の探索

第14章 小学生の話し合い活動に対する評価基準策定のための評価表現の帰納的探索
森 篤嗣

第15章 価値観をあぶりだす道具としての評価表現
佐野 大樹

第16章 日本語音声教育の方向性の探索―音声教育に対する日本語教師のビリーフの自由回答をデータとして―
阿部 新・嵐 洋子・須藤 潤

第17章 非母語話者は母語話者の「説明」をどのように評価する―「やさしい日本語会話」の評価観点の抽出―
柳田 直美

第18章 講義における一般語の語義説明に対する日本語学習者の評価―理工系専門講義における「わかりやすい日本語」を探る―
俵山 雄司

第5部 「言語そのものに対する評価」がもたらすもの

第19章 母語に対する評価の諸相―在日パキスタン人の言語使用意識調査を手がかりに―
福永 由佳

第20章 首都圏在住者の方言話者への評価意識
鑓水 兼貴・三井 はるみ
著者紹介
宇佐美 洋(うさみ よう)
東京大学文学部卒。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。博士(日本語学・日本語教育学)(名古屋外国語大学)。新潟大学,国立国語研究所での勤務を経て,2015年から東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻准教授。専門は,日本語教育,評価論,言語能力論。主著に,『「非母語話者の日本語」は,どのように評価されているか―評価プロセスの多様性をとらえることの意義―』(ココ出版,2014),「「やさしい日本語」を書く際の配慮・工夫の多様なあり方」庵功雄・イヨンスク・森篤嗣(編)『「やさしい日本語」は何を目指すか』第12章(ココ出版,2013),「実行頻度からみた「外国人が日本で行う行動」の再分類―「生活のための日本語」全国調査から―」『日本語教育』144号(日本語教育学会,2010)など。