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品切

シリーズ記述文法 1
南琉球宮古語伊良部島方言

下地理則[著]

定価
5,940円(5,400円+税)
ISBN
978-4-87424-760-0 C3380
発売日
2018/4/6
判型
A5
ページ数
368頁
ジャンル
言語学・英語学 ― <シリーズ記述文法>
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リアル書店在庫
紀伊國屋書店 丸善・ジュンク堂書店・文教堂

2009年にUNESCOから発表された消滅危機言語のリストのうち、日本で話されている言語は8つ含まれている。本書ではそのうちの1つ、南琉球諸語に属する宮古語の伊良部島方言について、音韻から品詞・形態・構文に至るまでを体系的に記述した文法書である。言語学者から見て興味の尽きないこの言語の体系を、その共時と通時に目を配りながら内的・・・(全文を読む)一貫性を持たせつつ説明していく。言語学の最も根本的な「言語を記述する」という営為の魅力をあますところなく伝えた、筆者の言語学者としての悪戦苦闘の記録。


<シリーズ記述文法>
■編集委員会:小林正人/澤田英夫/下地理則/千田俊太郎/星泉/山越康裕/米田信子/渡辺己
執筆者自らが現地調査に赴き、そこで得た一次資料をもとに研究し明らかにした文法体系をまとめた、いわゆる少数言語の記述文法書のシリーズ。音韻論も含めた対象言語の文法全体を、専門性を保ちつつも当該言語の専門家でなくとも理解できるように記述する(品切あり)。

関連情報
【書評・紹介】
本書の研究が、第47回金田一京助博士記念賞を受賞しました。
https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/affil/kkprize/
目次
シリーズ刊行にあたって
目次
略語リスト

第1章 伊良部島方言の概要
1.1. 地理
1.2. 系統
1.3. 言語の名前
1.4. 伊良部島内部の方言差と本書の記述する対象
1.5. 話者数
1.6. 先行研究
1.7. 研究データ

第2章 音韻論
2.1 音韻論の記述の前に
2.1.1 「語」について
2.1.2. 音韻標示について
2.2. 音素目録
2.2.1. 子音
2.2.2. 半母音
2.2.3. 母音
2.3. 最小対と疑似最小対
2.3.1. 子音
2.3.2. 半母音
2.3.3. 母音
2.4. 単純語の音節構造
2.4.1. 音節の3タイプ
2.4.2. 特記すべき事項
2.4.3. 重音節と超重音節
2.4.4. 長母音と二重母音
2.5. モーラ
2.5.1. 定義
2.5.2. 最小語制約
2.5.3. 長さ
2.6. 音韻規則
2.6.1. 連濁
2.6.2. 重子音化規則
2.6.3. /ï/挿入規則
2.6.4. /ï/拡張規則
2.6.5. 共鳴重子音削除規則
2.6.6. 鼻子音連続削除規則
2.6.7. 特定の形態素に見られる音韻規則
2.7. その他の分節音韻論的諸問題
2.7.1. /ž/の音韻解釈
2.7.2. 長母音の音韻解釈
2.7.3. /ïï/の解釈とその問題点
2.8. 韻律
2.8.1. 単純語の韻律
2.8.2. フット構造
2.8.3. トーン付与
2.8.4. HL交替の句への拡張
2.9. 統語的複合語の音韻的特徴

第3章 記述の諸単位
3.1. 語・接語・接辞の区別
3.1.1. 形態統語的自立性
3.1.2. 音韻的自立性
3.1.3. bound wordタイプの接語
3.1.4. 文法化
3.2. 語類(word class)
3.2.1. 名詞類
3.2.2. 連体詞
3.2.3. 動詞
3.2.4. 形容詞
3.2.5. 助詞
3.2.6. その他の語類
3.2.7. 品詞転換
3.3. 文法関係
3.3.1. 主語
3.3.2. 直接目的語
3.3.3. 間接目的語
3.4. 形態法の類型
3.4.1. 語根と語幹
3.4.2. 複合
3.4.3. 重複

第4章 名詞句
4.1. 従属部
4.1.1. 従属部に名詞句が立つ場合
4.1.2. 連体詞および連体節による修飾
4.1.3. 従属部を埋めるその他の要素
4.2. 主要部
4.2.1. 形式名詞
4.2.2. 主要部を欠く名詞句(準体)
4.3. 格
4.3.1. 格助詞のリスト
4.3.2. 主格と属格
4.3.3. 対格と第二対格
4.3.4. 与格と方向格
4.3.5. 具格=sii
4.3.6. 共格=tu
4.3.7. 比格 =jarruu
4.3.8. 奪格 =kara
4.3.9. 限界格 =gami

第5章 名詞類
5.1. 代名詞
5.1.1. 人称代名詞
5.1.2. 再帰代名詞
5.2. 名詞
5.3. 数詞
5.4. 名詞形態論
5.4.1. 指小辞
5.4.2. 複数接辞
5.4.3. 曖昧化接辞 -nagi

第6章 指示詞と疑問詞
6.1. 指示詞
6.1.1. 体系
6.1.2. 指示代名詞
6.1.3. 指示場所名詞
6.1.4. 指示様態詞
6.1.5. 指示連体詞
6.2. 疑問詞
6.2.1. 体系
6.2.2. 疑問代名詞
6.2.3. 疑問場所名詞
6.2.4. 選択疑問名詞
6.2.5. 疑問時間名詞
6.2.6. 疑問数量名詞と疑問数詞
6.2.7. 疑問様態詞
6.2.8. 疑問理由副詞
6.2.9. 不定表現

第7章 動詞の構造
7.1. 概要
7.2. 語幹
7.2.1. 語幹クラス
7.2.2. 語幹の種類
7.2.3. 語幹の機能
7.2.4. 語幹拡張辞
7.3. 屈折形態論
7.3.1. 定動詞
7.3.2. 副動詞
7.3.3. 特殊な動詞の屈折パターン
7.3.4. 存在動詞・状態動詞・アスペクト補助動詞・コピュラ動詞の比較
7.4. 語幹の内部の構造
7.4.1. 語幹核
7.4.2. 派生接辞類と語幹のクラス

第8章 PC語群(Property Concept words)
8.1. 概要
8.2. PC語根
8.2.1. PC語根の品詞性
8.2.2. PC語根と名詞語根の連続性
8.3. PC語根から形成される諸形式
8.3.1. 動詞形式(PC動詞)
8.3.2. 複合名詞形式
8.3.3. 準複合名詞
8.3.4. 形容詞(PC語根の重複形式)
8.3.5. 状態名詞化-sa
8.4. 統語機能・意味・談話から見た複合,準複合,PC動詞,形容詞
8.4.1. 分布特徴
8.4.2. 主節述語として:複合名詞 vs. 準複合名詞 vs. PC動詞
8.4.3. 名詞修飾要素として:形容詞 vs. PC動詞

第9章 述語句の構造
9.1. 動詞述語の分類
9.2. 複合動詞
9.2.1. V1の語幹形式
9.2.2. 語彙的複合動詞
9.2.3. 統語的複合動詞
9.3. 補助動詞構文
9.3.1. アスペクト補助動詞構文
9.3.2. モーダル補助動詞構文
9.3.3. 方向補助動詞構文
9.3.4. 受益補助動詞構文
9.4. 軽動詞構文
9.4.1. 軽動詞(a)sïを使った構文
9.4.2. 状態動詞arを用いる場合(クアル構文)
9.5. 名詞述語

第10章 助詞
10.1. 助詞の分類
10.2. 限定助詞
10.3. 情報構造助詞
10.3.1. 主題助詞
10.3.2. 焦点助詞
10.4. モーダル助詞
10.4.1. Yes-No自問 =bjaam
10.4.2. WH自問 =gagara
10.4.3. 推測=pazї「~だろう,かもしれない」
10.4.4. 断定 =dara
10.4.5. 同意要求 =suda
10.5. 接続助詞
10.5.1. 引用接続助詞 =ti
10.5.2. 逆接 =suga
10.5.3. 順接=ssiba
10.6. 終助詞
10.6.1. 訂正 =ju
10.6.2. 提題 =da
10.6.3. 確認要求 =i
10.6.4. いらだち =ra, =sja
10.6.5. 疑問 =ru, =ga
10.6.6. 疑問 =e
10.6.7. 非主語焦点=doo(i)
10.6.8. 伝聞 =ca, =tim

第11章 単文の構文論
11.1. 項構造
11.1.1. 概要
11.1.2. E項について
11.2. 格配列
11.2.1. 主格対格型
11.2.2. 分裂自動詞性
11.2.3. ハダカ名詞句(格助詞を伴わない名詞句)
11.3. ヴォイス
11.3.1. 使役
11.3.2. 受動
11.4. 可能
11.5. アスペクト
11.5.1. 体系の概要
11.5.2. 継続相のアスペクト的意味
11.5.3. 残存結果相のアスペクト的意味
11.5.4. 消失結果相と残存結果相の対立に見るアスペクト的意味
11.5.5. 消失結果相の非実現バイアス
11.6. ムード
11.6.1. 直説法
11.6.2. 希求法
11.7. テンス
11.8. 情報構造
11.8.1. 係り結び
11.8.2. 焦点ドメインと焦点標示
11.8.3. 焦点タイプと焦点標示

第12章 複文
12.1. 節連結から見た文構造の分類
12.2. 主節並置(単文構造)と等位接続
12.2.1. 主節並置
12.2.2. 等位接続
12.3. 従位接続
12.3.1. 周辺副詞節
12.3.2. 中核副詞節
12.3.3. 連体節
12.3.4. 補文(名詞節)
12.4. 節の独立性
12.4.1. 定動詞屈折
12.4.2. 情報構造上の従属性
12.4.3. 独自の主語を取れるか
12.5. 中止形節

引用文献
索 引
著者紹介
下地理則(しもじ・みちのり)
オーストラリア国立大学大学院太平洋アジア高等研究院言語学科修了。Ph.D(Linguistics)。
群馬県立女子大学国際コミュニケーション学部専任講師(2009年~2012年)を経て,現在,九州大学大学院人文科学研究院准教授。国立国語研究所客員准教授。
2005年より沖縄県宮古島市伊良部島で伊良部島方言の現地調査を続けている。
主な著書として,A Grammar of Irabu, a Southern Ryukyuan Language (Kyushu University Press, 2017),Handbook of the Ryukyuan Languages (共編著,Mouton de Gruyter, 2015), 『琉球諸語の保持を目指して』(共編著,ココ出版,2014)などがある。

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