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第二言語習得研究への誘い

理論から実証へ

吉村紀子/中山峰治[著]

定価
2,420円(2,200円+税)
ISBN
978-4-87424-765-5 C1080
発売日
2018/7/11
判型
A5
ページ数
256頁
ジャンル
言語習得 ― 言語習得入門
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 本書で紹介している研究は日本に住む日本語母語話者による英語習得と北米で学ぶ英語母語話者による日本語習得に関する資料に基づきますが、課題によっては第三言語として日本語を学習する大学生からの資料も取り扱っています。
 本書の特色は2 つあります。第一の特色は一般的に文法領域として分類されている形態・統語・意味・音声から、コミュニ・・・(全文を読む)ケーションの接点で重要な機能を果たす語用・談話構造・応答ストラテジーまで、幅広い領域に渡って第二言語習得のテーマや現象を取り扱っていることです。第二の特色は、第二習得習得について単に基本的な観察をするだけでなく、「なぜ第二言語習得ではこのような問題に直面するのか」あるいは「どのように第二言語習得では知識を獲得するのか」を明らかにするために、実証的な調査結果について理論的な説明を加えていることです。
 本書では、日英語の第二言語習得研究の分野において重要な関心をもって議論されてきた主要なトピックを集約して取り上げました。特にこの一冊で目指した点は、パラミター値再設定仮説から意味素性マッピング仮説への理論的変遷の中で第二言語習得研究が経験した大きな流れを把握しつつ、これまでの実践調査の中で何が明らかになり、何が未解決の問題として残されているかについて理解できるよう、すなわち日英語の第二言語習得研究に関する今日の全体像の把握にあります。わかりやすく、ていねいに解説しましたので、大学や大学院で英語や日本語の第二言語習得を学ぶ学生・大学院生・若手研究者の方がたに読んでいただければと思います。
(まえがきより)

関連情報

目次
第1章 第二言語習得研究―課題と理論
1. 本書の目標
2. 臨界期と外国語習得
3. インターフェイス理論
4. 本書の構成

第2章 形態素─2種類の-s
1. はじめに
2. 英語の形態素―2種類の-s
3. 3人称単数-s
4. 名詞複数形-s
5. なぜ-sは欠落するのか
6. まとめ

第3章 WH-移動
1. はじめに
2. 理論的背景―WH-移動とスクランブリング
3. 先行研究―前置詞残留と随伴
4. 長距離WH-移動習得の問題点
5. まとめ

第4章 再帰代名詞の解釈
1. はじめに
2. 束縛理論―C-統御と統率範疇
3. 先行研究―himself
4. 先行研究―「自分」
5. 不定詞節の主語―PRO
6. 今後の課題 ―PRO主語欠如仮説

第5章 束縛変項解釈
1. はじめに
2. 束縛変項と弱交差現象
3. 英語母語話者による束縛変項解釈
4. pro脱落言語の母語話者による束縛変項解釈
5. 日本人英語学習者の束縛変項解釈
6. まとめ―「彼」とhe

第6章 コントロール・タフ・主語繰り上げ構文
1. はじめに
2. 構文の統語特徴と母語習得
3. 第二言語習得研究の成果―主語と介在効果
4. 考察―seem構文のむずかしさ
5. 今後の課題―経験者句の指示性

第7章 テンス・アスペクト
1. はじめに
2. 日本語と英語のアスペクト
3. 日本人英語学習者による過去・現在完了の用法
4. なぜ母語転移の克服はむずかしいか
5. 素性組立仮説に基づく分析
6. 日本語学習者による「た」・「ている」の習得
7. まとめ―明示的指導に向けて

第8章 談話構造における(代)名詞の用法
1. はじめに
2. 顕在代名詞と非顕在代名詞
3. 母語話者の代名詞用法―子どもと大人
4. 第二言語習得者の(代)名詞用法
5. 考察―母語と外国語の転移

第9章 プロソディ―ポーズ・フォーカス語句・ピッチ幅
1. はじめに
2. モーラとシラブル
3. 韻律境界・ポーズの習得―右枝分かれ・左枝分かれ
4. フォーカスプロソディの習得―核強勢・ピッチ・プロミネンス
5. 先端研究の成果と今後の課題
6. まとめ―母語転移の3ステップ

第10章 応答ストラテジー
1. はじめに
2. 応答ストラテジーのタイプと特徴
3. 先行研究―イタリア語・フランス語
4. 日本人英語学習者の応答ストラテジー
5. 日本語学習者の応答ストラテジー

おわりに—今後の展望
参照文献
索引
著者紹介
吉村紀子(よしむら のりこ)
静岡県立大学言語コミュニケーション研究センターセンター長・特任教授。専門は言語学、第二言語習得。南カリフォルニア大学大学院言語学研究科博士課程修了。Ph. D.(言語学)。昭和女子大学文学部講師、静岡県立大学国際関係学部教授などを経て、現職。静岡大学教員免許更新講座「英語教師のための教育言語学」(2012~2018)、日本言語学会夏期講座「第二言語習得」(2016)担当。主著に『海外短期英語研修と第2言語習得』(中山峰治氏との共著, ひつじ書房、2010)。論文多数。

中山峰治(なかやま みねはる) 
オハイオ州立大学東アジア言語文学科教授。専門は心理言語学。コネチカット大学大学院言語学研究科博士課程修了。Ph.D.(言語学)。コネチカットカレッジ講師、オハイオ州立大学日本学研究所所長、国立国語研究所客員教授などを経て、現職。Journal of Japanese Linguistics前編集長。主著に『Acquisition of Japanese Empty Categories』(くろしお出版、1996)、編著に『Handbook of East Asian Psycholinguistics Vol. 2: Japanese』(共編著、Cambridge University Press, 2006)、『Handbook of Japanese Psycholinguistics』(De Gruyter Mouton, 2015)、『Studies in Chinese and Japanese Language Acquisition』(共編著、John Benjamins, 2017)など。論文多数。