バリエーションの中の日本語史

新刊

バリエーションの中の日本語史

岡崎友子/衣畑智秀/藤本真理子/森勇太[編]

価格
3,700円+税
ISBN
978-4-87424-766-2 C3081
発売日
2018/5/29
判型
A5
ページ数
304頁
ジャンル
日本語学 ― 日本語学専門
オンライン書店
amazon.co.jp 楽天ブックス

本書は、2016年4月30日と5月1日に行われた、研究発表会「バリエーションの中での日本語史」(主催:大阪大学大学院文学研究科日本文学・国語学研究室、共催:土曜ことばの会)での発表を元に、数編の論文を加えて編まれたものである。
伝統的な日本語史(国語史)研究は、文献資料を緻密に読むことによって発展して来た。そのことにより得られ・・・(全文を読む)た文献資料に対する知見は計り知れないが、その一方で、日本語史研究が文献資料の内部に閉じこもる面があったのも事実である。極端に言えば、各文献の用例数を数えることを以って、日本語史研究としていた面もあろう。それに対し、近年の日本語史研究では、諸方言に見られるバリエーションをも勘案して、日本語の歴史を捉え、説明していく傾向がはっきりしてきた。また、現代日本語や方言を専門とする研究者にとっても、全ての現象が共時的に説明できるものではなく、歴史的な説明が必要であることが認識されつつある。その意味で、日本語史研究は、単に日本語史の研究者だけのための領域ではなく、また、日本語史研究者は、日本語史の研究の中だけに閉じこもってはいられなくなっていると言えるだろう。
このような状況のもと、言語の変異がどのように起こるかに興味を持つ日本語史研究者や方言研究者などを集め、その知的交流を図ろうと意図したのが、上記の研究発表会である。発表会では、大きく3つのシンポジウムが企画された。一つは存在表現とアスペクトに関するもの、一つは指示詞に関するもの、そしてもう一つは受身に関するものである。この3つのシンポジウムで報告された内容は、それぞれ本書の柱となっている。それに加え、個別の研究発表も行われたが、そこでは、日本語史に見られるスタイルシフトや役割語に関するものがあった。本書では、それらの発表を1部にまとめた。(「まえがき」より)

関連情報

目次
存在表現とアスペクト

東北諸方言の存在表現とアスペクト・テンス 高田祥司
日本語諸方言における被動者項を指向するパーフェクトの他動詞文の多様性 竹内史郎
市来・串木野方言の静態化体系 黒木邦彦
存在型アスペクトの文法化のバリエーション―宮古狩俣方言からの示唆― 衣畑智秀
リスト存在文について 金水 敏

指示表現の地理・歴史的研究

中古のカ(ア)系列とソ系列の観念指示用法―古典語における知識の切り替わりから― 藤本真理子
現代語・中古語の観念用法「アノ」「カノ」 岡崎友子
直接経験が必要ない記憶指示のアノ 堤 良一

「非情の受身」の発達をめぐって

「非情の受身」のバリエーション―近代以前の和文資料における― 岡部嘉幸
ラル構文によるヴォイス体系―非情の受身の類型が限られていた理由をめぐって― 志波彩子
可能表現における助動詞「る」と可能動詞の競合について 青木博史

スタイルと役割語

役割語の周縁の言語表現を考える―「人物像の表現」と「広義の役割語」と「属性表現」― 西田隆政
書き手デザイン―平賀源内を例にして― 渋谷勝己
行為指示表現「~ておくれ」の歴史―役割語度の低い表現の形成― 森 勇太
比喩によって生じるキャラクター属性―ラベルづけられたキャラクタの観点からみた― 大田垣 仁
著者紹介
岡崎友子(おかざき・ともこ)
大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。大阪大学助手、就実大学人文科学部准教授を経て、現在、東洋大学文学部教授。主要な著書・論文として、『日本語指示詞の歴史的研究』(ひつじ書房、2010)、『ワークブック日本語の歴史』(くろしお出版、2016)、「指示詞再考―コロケーション強度から見る中古のコノ・ソノ・カノ+名詞句―」(『日本語学』11月増刊号、2014)などがある。

衣畑智秀(きぬはた・ともひで)
大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。福岡大学人文学部講師を経て、現在、同准教授。主な論文として「南琉球宮古方言の終止連体形―方言に見る活用形の合流―」(『日本語文法』17-1、2017)、「南琉球宮古語の疑問詞疑問係り結び―伊良部集落方言を中心に―」(『言語研究』149、2016)、「係り結びと不定構文―宮古語を中心に―」(『日本語の研究』12-1、2016)などがある。

藤本真理子(ふじもと・まりこ)
大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、尾道市立大学芸術文化学部准教授。主な著書・論文として『グループワークで日本語表現力アップ』(共著、ひつじ書房、2016)、「現実世界の対象を表さないソの指示―歴史的変遷をとおして―」(『日本語語用論フォーラム』2、ひつじ書房、2017)などがある。

森 勇太(もり・ゆうた)
大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員(PD)、関西大学文学部助教を経て、現在、関西大学文学部准教授。主な著書として、『発話行為から見た日本語授受表現の歴史的研究』(ひつじ書房、2016)、『ワークブック日本語の歴史』(くろしお出版、2016)等がある。