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引用形式を含む文の諸相

叙述類型論に基づきながら

岩男考哲[著]

定価
3,740円(3,400円+税)
ISBN
978-4-87424-797-6 C3081
発売日
2019/5/28
判型
A5
ページ数
200頁
ジャンル
日本語学 ― 日本語学専門
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紀伊國屋書店 丸善・ジュンク堂書店・文教堂

本書は、引用の助詞「と」に動詞「言う」のレバ形式、タラ形式、ト形式が後接してできた「といえば、といったら、というと」を含む文について考察を行うものである。当然ながら、これらの形式は基本的には、条件構文の前件に生起する引用構文で用いられるものである。
(中略)
ところが用例を見てみると、これらの形式が用いられるのは必ずしも引用構・・・(全文を読む)文に限ったことではないことが分かる。
(中略)
このように引用構文に由来する表現は、その働きを引き継いだり変化させたりしながら、現代日本語の中で広く使用されていると言える。それはなぜか、という問いは現段階ではあまりにも大き過ぎる問いであるが、それぞれの表現が具体的にどういう性質のもので、「その働きは何か」といった問題についての考察であれば本書でも可能であるし、上記の大きな問いの答えへと近づく一歩となるだろう。
そこで本書では、「といえば、といったら、というと」を用いた文は、どのような広がりを見せ、それに伴いその働きをどう変えているか、そしてその広がりは日本語という言語の性質とどう関わるものなのか考えていきたい。(「序論」より)

関連情報

目次
第1章 序論
1. はじめに
2. 本書の構成と課題
3. おわりに

第2章 叙述類型論からの提言
1. はじめに
2. 叙述の類型研究小史
2.1 佐久間鼎の文類型
2.2 三上章の文類型
2.3 益岡隆志の叙述の類型
2.3.1 叙述の類型概観
2.3.2 叙述の類型と提題文
3. おわりに

第3章 引用形式を用いた文のひろがり―「といえば、といったら、というと」を中心に―
1. はじめに
2. 「といえば、といったら、というと」を用いた文の広がり
2.1 先行研究概観
2.2 3形式に共通する用法
2.2.1 引用構文
2.2.1.1 「事象+事象」タイプ
2.2.1.2 「事象+評価・属性」タイプ
2.2.2 連想文
2.2.3 課題設定文
2.2.4 提題文
2.2.5 話題転換文
2.2.6 これまでの用法のまとめ
3. 前件と後件の関係
4. 一部の形式に見られる用法の概観
4.1 反復文
4.2 応答文
5. おわりに

第4章 用法の背景
1. はじめに
2. 用法の背後に見られる構造
2.1 連想文
2.2 課題設定文
2.3 評価・属性を述べる引用構文
2.4 話題転換文
3. 用法の背景
4. おわりに

第5章 引用形式を用いた提題文の叙述の類型
1. はじめに
2. 議論の背景
3. 先行研究概観
4. 各提題文の叙述の叙述
4.1 属性叙述
4.1.1 カテゴリー属性
4.1.2 性質属性
4.1.3 習性属性
4.1.4 履歴属性/事象
4.2 指定叙述
4.3 まとめ
5. おわりに

第6章 研究の今後の展開に向けて
1. はじめに
2. 本書をふりかえって
3. 提題文をめぐる更なる課題
3.1 コミュニケーションの前景と背景
3.2 〈主観的把握〉と〈客観的把握〉、そして〈好まれる言い回し〉
3.3 試論:「といえば、といったら、というと」による主題の捉え方
4. 評価的意味をめぐる課題
4.1 考え得る課題
4.2 試案の提示
5. その他の課題:談話・語用論的展開
6. おわりに

補説 「ときたら」を用いた文の諸相―提題文を中心に―
1. はじめに
2. 「ときたら」を用いた文の用法
2.1 行為の接近
2.2 認識の接近
2.3 主題の提示
3. 先行研究概観
4. 「ときたら」構文の「評価」的意味について
4.1 「評価」的意味の整理・観察
4.2 「程度」「評価」の根拠となる事柄の性質
5. 「ときたら」構文が提示する主題
6. 「ときたら」構文の叙述の類型
7. おわりに

参考文献
あとがき
索 引
著者紹介
岩男考哲(いわお・たかのり)
1976年、宮崎県生まれ。
大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程修了。
博士(言語文化学)。
現在、神戸市外国語大学准教授。