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日本語配慮表現の原理と諸相

山岡政紀[編]

定価
4,620円(4,200円+税)
ISBN
978-4-87424-815-7 C3081
発売日
2019/11/8
判型
A5
ページ数
272頁
ジャンル
日本語学 ― 日本語学専門
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日本語には配慮表現と呼ぶべき一群の表現群があるという直観的把握があって、個々の表現についての研究が進んでいく。それがある程度の段階に達すると、配慮表現の全体像を整理する必要性が生じる。そうした観点から配慮表現を研究するための原理を整理したのが本書第Ⅰ部「配慮表現の原理」(第1章~第3章、山岡政紀担当)である。第1章「配慮表現研・・・(全文を読む)究史」では配慮表現という用語の初出から今日までに公刊されている配慮表現研究の流れを概観する。第2章「配慮表現の定義と特徴」では、配慮表現の定義を明確にし、それによって必然的に浮かび上がってくる配慮表現の文法的特徴について述べる。第3章「配慮表現の分類と語彙」では、多数に上る配慮表現を整理する目的で形式分類と機能分類の2種の分類を提示し、機能分類ごとに主要な語彙についての記述例を掲示する。

第Ⅱ部「日本語配慮表現の諸相」(第4章~第10章)は、第3章でリストアップされた配慮表現語彙群のなかからいくつかを取り上げて、その配慮機能についてポライトネス理論をもとに考察する。研究対象も多様で、単語レベルのもの(第4章)、機能的な文法形式(第5章~第7章)、単語と文法形式との呼応(第8章)、文法形式の選択(第9章)、配慮言語行動(第10章)とバラエティに富んでいるが、研究方法にもそれぞれの個性があり、配慮表現研究法の幅の広さが見て取れるであろう。

第Ⅲ部「配慮表現の対照研究」(第11章~第14章)では、日本語の配慮表現と他言語において対応する表現との対照を試みた論考を収めた。このような章群を設けた一つの理由は、現状の日本語教育において配慮表現が適切に導入されておらず、教室活動や教材を通して体系的に習得していくことが難しく、日本での生活で経験的に習得していくしかないのが実情である。この体系的整備の基礎理論として、他言語との対照研究のなかで配慮表現の体系を整理する端緒としたいという考えである。もう一つの理由は、純粋に理論的に考えた場合、第2章で示す配慮表現の定義によって示される“ポライトネス機能が慣習化した配慮表現”は日本語に限定される理由は何もなく、どの言語にも見られるはずのもので、その意味では、日本語での配慮表現と他の当該言語での配慮表現とを対等に比較していく視点も必要になってくる。そこで第Ⅲ部では日本語と他言語に精通した研究者にそれぞれの観点からの試論を執筆してもらった。
(本書序章より)

関連情報

目次
序 章 配慮表現とは何か?
山岡政紀

第Ⅰ部 配慮表現の原理

第1章 配慮表現研究史
第2章 配慮表現の定義と特徴
第3章 配慮表現の分類と語彙
山岡政紀

第Ⅱ部 日本語配慮表現の諸相

第4章 配慮表現「ちょっと」の機能と慣習化
―ポライトネス理論からの再検証―
牧原功

第5章 配慮表現「よね」に見られる情報共有の諸相
金玉任

第6章 とりたて詞「なんか」の捉え直し用法に見られる配慮表現
大和啓子

第7章 配慮表現「させていただく」の違和感をめぐって
塩田雄大

第8章 配慮表現としての「“全然”+肯定形」
斉藤幸一

第9章 引用表現における配慮表現
小野正樹

第10章 モバイル・メディアにおける配慮
―LINEの依頼談話の特徴―
三宅和子

第Ⅲ部 配慮表現と対照研究
第11章 代名詞の指示対象から見た対人配慮の日英対照
西田光一

第12章 慣習的配慮表現の日中対照
李奇楠

第13章 配慮表現の日本語・アラビア語対照
―断り表現を中心に―
Lina Abdelhameed Ali

第14章 配慮表現の日本語・ウズベク語対照 
―授受補助動詞を中心に―
岩崎透・Umarova Munojot
著者紹介
山岡政紀(やまおか まさき)
創価大学文学部教授
牧原 功(まきはら つとむ)
群馬大学学術研究院准教授
金 玉任(김옥임、キム オギム)
韓国・誠信女子大学校人文科学大学日本語文・文化学科教授
大和啓子(やまと あきこ)
群馬大学学術研究院講師
塩田雄大(しおだ たけひろ)
NHK放送文化研究所主任研究員
斉藤幸一(さいとう こういち)
広島修道大学学習支援センター学習アドバイザー
小野正樹(おの まさき)
筑波大学人文社会系教授
三宅和子(みやけ かずこ)
東洋大学文学部教授
西田光一(にしだ こういち)
山口県立大学国際文化学部教授
李 奇楠(LI Qinan, リ キナン)
北京大学外国語学院副教授
Lina Abdelhameed ALI(リナ アブデルハミード アリ)
エジプト・カイロ大学文学部日本語専門翻訳専攻長、日本語日本文学科上級講師
岩崎 透(いわさき とおる)
国際交流基金ジャカルタ日本文化センター・日本語教育専門家
UMAROVA Munojot(ウマロヴァ ムノジャット)
ウズベキスタン世界言語大学付属外国語イノベーティブ教授法開発科学実践センター研究員