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言語と文化

言語学から読み解くことばのバリエーション

南雅彦[著]

定価
3,300円(3,000円+税)
ISBN
978-4-87424-459-3 C3080
発売日
2009/11/16
判型
A5
ページ数
372頁
ジャンル
言語学・英語学 ― 社会言語学入門
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紀伊國屋書店 丸善・ジュンク堂書店・文教堂

言語とは何か、社会と言語と人間はどのように関わっているのか。ポップカルチャーやスポーツなど文化に関わる例を数多く収録、そこから言語と文化のつながりを探る。社会言語学・心理言語学・言語人類学の研究成果を平易に解説。

関連情報
【関連サイト】
「くろしお言語大学塾」言語と文化:社会言語学への導入
著者による講義動画が視聴できます。
https://www.gengoj.com/seminar/view.php?seminar_list_id=10
目次
■第1章 言語と文化 社会言語学への導入
 1. 言葉の仕組み
  1.1. 音素・音韻論
  1.2. 形態論・形態素論
  1.3. 統語論
  1.4. 意味論
  1.5. 語用論
  1.6. ディスコース(談話)分析
  1.7. 要約
 2. 文化とは何か
  2.1. 文化の定義
  2.2. 文化化
  2.3. 文化化と自己
  2.4. 文化的スキーマ・スクリプト
 3. 文化研究と言語研究の統合としての社会言語学
  3.1. Chomskyの言語学 vs. HymesやLabovに代表される社会言語学
  3.2. 異文化間コミュニケーション
 4. 生きた言語使用をどう考察するか:言葉の変化(バリエーション)
  4.1. 言語の記述方法
  4.2. 動詞・形容詞・副詞に見られる「言葉の乱れ」
  4.3. 「言葉の乱れ」が古い表現なのか新しい表現なのか
  4.4. 曖昧表現
  4.5. 言葉の動き
  4.6. 社会言語学で取り扱う諸様相

■第2章 文化と言語 言語相対性仮説(認知意味論の立場から)
 1. 生まれか育ちか:普遍性と固有性
  1.1. 生得的・先天的 vs. 学習・後天的
  1.2. 知能指数が何を意味するのか: 知能(IQ)テストの包含する問題
  1.3. 要約
 2. 言語普遍性と言語固有性
  2.1. 言語固有性:翻訳で生じるさまざまな問題
  2.2. 言語固有性:主語の問題
  2.3. 言語普遍性
  2.4. 言語普遍性:認知意味論の立場から
 3. 社会心理学における普遍性の研究
  3.1. Ludwig Wittgenstein:家族的類似性
  3.2. 階層分類
  3.3. プロトタイプ理論
  3.4. 色彩分類
  3.5. 認知意味論の要約
 4. 言語固有性:言語相対性仮説
  4.1. Sapir-Whorf仮説
  4.2. 具体例から考察した言語相対性仮説:ミシュテック語(Mixtec)
  4.3. 具体例から考察した言語相対性仮説:数の数え方
  4.4. 具体例から考察した言語相対性仮説:助数詞
  4.5. 具体例から考察した言語相対性仮説:受動態
  4.6. 具体例から考察した言語相対性仮説:名詞の性
  4.7. 言語相対性仮説の要約
 5. 具体例:仮定法の時制
  5.1. 新聞等に見られる言葉遊び(pun・懸詞)
  5.2. 新聞等に見られる仮定表現
  5.3. ナラティヴ現在
 6. 仮定法の時制の有無が概念に影響を及ぼすのか:Alfred Bloomの研究
  6.1. 反事実を表す仮定表現
  6.2. Sapir-Whorf仮説を支持するBloomの研究
  6.3. Bloomの研究の要約
 7. 仮定法の時制の有無が概念に影響を及ぼすのか:Terry Kit-fong Auの研究
  7.1. Bloomの研究への反論
  7.2. BloomとAuの研究結果をどう解釈するのか
  7.3. 認知的アクセスを容易にする語彙の存在
 8. 第2章の要約
  8.1. 言語普遍性
  8.2. 言語相対性

■第3章 丁寧表現、敬語における普遍性と多様性待遇表現(social deixis)としてのポライトネスとポライトネス行動(語用論)
 1. 文化と自己
   1.1. 相互依存の自己 vs. 自立した自己
   1.2. 自己を構成する要因:社会と性
 2. 人称代名詞が意味するもの:Brown & Gilmanの連帯感(solidarity)に関する研究
   2.1. インフォーマル・親密感・連帯感・仲間意識 vs. フォーマル・儀礼的
   2.2. 英語の場合
 3. 人称代名詞と呼称語(称号・敬称)の意味するもの
   3.1. 呼称
   3.2. 名前・ニックネーム vs. 姓における距離感の違い
   3.3. 日本語の人称代名詞
   3.4. 親族の呼称:丁寧語・尊敬語と謙譲語
   3.5. 要約:自分はいったい何者なのか
 4. 普遍概念としてのポライトネス行動
   4.1. スピーチレベル・シフト
   4.2. リスペクト
   4.3. Brown & Levinsonのポライトネス理論
   4.4. 丁寧さはどのようにして増すのか
 5. 普遍概念としてのポライトネス行動ストラテジーの具体的検証:ポジティブ・ポライトネス
   5.1. ストラテジー1:興味・欲求に応える
   5.2. ストラテジー2:関心・(称賛などの)承認・同情を誇張する
   5.3. ストラテジー3:(感謝などで)貢献度を強調する
   5.4. ストラテジー4:仲間であることを示す
   5.5. ストラテジー5:同意点を探す
   5.6. ストラテジー6:意見の相違を回避する
   5.7. ストラテジー7:協力関係を強調する
   5.8. ストラテジー8:申し出たり、約束する
   5.9. ストラテジー9:(依頼などで)楽観的な態度を取る
   5.10. ストラテジー10:共同行為であることを示す
   5.11. ストラテジー11:理由を説明したり、説明を求めたりする
 6. 普遍概念としてのポライトネス行動ストラテジーの具体的検証:ネガティブ・ポライトネス
   6.1. ストラテジー1:定型表現を用いて間接的に働きかける
   6.2. ストラテジー2:ヘッジを用いる
   6.3. ストラテジー3:悲観的にふるまう
   6.4. ストラテジー4:強制や押しつけを極力避ける
   6.5. ストラテジー5:敬意を示す
   6.6. ストラテジー6:謝罪する
   6.7. ストラテジー7:非人称表現を用いる
   6.8. ストラテジー8:一般的規則としてフェイス侵害行為を述べる
   6.9. ストラテジー9:名詞化する
   6.10. ストラテジー10:受けた恩義は認め、与えた恩義は押しつけない
 7. 文化固有性・独自性としてのポライトネス行動
   7.1. 文化固有性
   7.2. 文化的要因と状況的要因:異文化間語用論(cross-cultural pragmatics)
   7.3. 褒め言葉にどう返答するか:異文化比較
 8. 日本語の敬意表現
   8.1. 尊敬語と謙譲語
   8.2. 曖昧表現
   8.3. さらに議論すべき問題:方言・地方語
 9. 第3章の要約
   9.1. Brown & Gilmanの研究
   9.2. 普遍概念としてのポライトネス:Brown & Levinsonの研究
   9.3. 文化固有性・独自性としてのポライトネス行動

■第4章 言語内変異(1) 言葉の変化と方言・地方語(言語地理学・方言地理学)
 1. 社会言語学とは:言語内変異
   1.1. 想像上の村:スピーチコミュニティー
   1.2. 世代による語彙の相違
   1.3. 「ジッ」か「ジュッ」か
   1.4. 「ら抜き言葉」に見る規則性
   1.5. 英語の代名詞に見る規則性・不規則性
 2. 社会言語学的研究をどのようにして行うか
   2.1. 言語資料の収集方法・手段
   2.2. 等語線
 3. 方言周圏論
   3.1. 言語資料の収集方法・手段
   3.2. 家:いえ vs. うち
   3.3. 方言周圏論
   3.4. おんな vs. おなご
   3.5. いる vs. ある
   3.6. 明後日の翌日を何というのか:隣接意味分野への侵入・滲み出し
   3.7. 「こわい」の意味するもの
 4. 方言周圏論が成り立つかどうか:語彙調査
   4.1. バカ vs. アホ
   4.2. 『全国バカ・アホ分布考』との出会い
   4.3. 「アホ・バカ」言葉の分布状況
   4.4. 「アホ・バカ」言葉の歴史的変遷
   4.5. 「デレスケ」と「テレスケ」
   4.6. 定型表現・常套句からの「アホ・バカ」歴史考察
   4.7. 定型表現・常套句の一般的考察
 5. 社会史表形式・行動におけるバリエーション:
   対話相手に合わせてものを言う
   5.1. 関西弁内の多様性・地方性
   5.2. 京都弁・京ことば
   5.3. 関西弁再考察
   5.4. スピーチ・アコモデーション理論
 6. 方言周圏論の文化論への敷延:Center of Innobation(革新の中心)
   6.1. 文化の伝播
   6.2. 文化と自己(アイデンティティ)
 7. 第4章の要約
   7.1. 革新の中心
   7.2. 方言周圏論

■第5章 言語内変異(2) 方言、社会階級差、性差(クリティカル言語学)
 1. 方言から社会階級差へ:William Labov vs. Basil Bernstein
   1.1. William Labovの研究:マーサズ・ヴィニヤードの発音調査
   1.2. William Labovの研究:ニューヨーク市の発音調査
   1.3. Basil Bernsteinの研究
 2. 言語と性差:男性と女性の言語行動
   2.1. 社会文化的要因
   2.2. 演歌に見る性差
   2.3. 生得的・先天的側面:生物学的要因
   2.4. 要約と今後の議論のために
 3. 英語に見られる性差
   3.1. 英語の語彙に見られる性差
   3.2. 意識革命としての女性解放運動
   3.3. Robin Lakoffの研究:言語使用を権力具現装置として捉える
   3.4. Daniel Maltz & Ruth Borkerの研究:
      文化差モデル(Difference Framework, Dual-culture Model)
   3.5. 要約
 4. 日本語に見られる性差
   4.1. 女性後の普遍的側面と言語固有的側面
   4.2. マスメディアに見られる性差を示す表現
 5. 第5章の要約
   5.1. 翻訳・通訳における役割後の与える心理的効果
   5.2. 異文化比較

■第6章 言語と発達 発達心理言語学の立場から
 1. 人間発達の普遍性と文化固有性
   1.1. 認知発達理論:Jean Piagetの発達段階理論
   1.2. 言語発達に見られる規則性:認知発達の立場から
   1.3. 語用面からの考察の重要性
   1.4. 文化固有性
   1.5. 文化的影響:双方向作用の重要性
 2. 「話しことば」から「書きことば」へ
   2.1. 語りの発達とその重要性
   2.2. 話しことばと書きことば
   2.3. 連続体、非連続体としての話しことばと書きことば
   2.4. 連続体としての話しことばと書きことば:国語の教科書から
   2.5. 書きことばに見られるさまざまなスタイル:
      書き手と読み手の関係
 3. 第6章の要約
著者紹介
南 雅彦(みなみ・まさひこ)



大阪府出身。大阪教育大学付属高校、京都大学卒業。学部生として京都大学在学中はゴルフ部に所属し、プロゴルファーを夢見て日々ゴルフ道に精進・邁進するも、トッププロの豪打・巧打を目の当たりにし、以後、舞台・演劇・芸能に傾倒する。1993年、ハーバード大学博士課程在学中、演劇界では著名なボストンのエマーソン・カレッジ(Emerson College)にて準主役として念願の舞台に立つ。1995年、ハーバード大学教育大学院より「人間発達と心理学」で博士号を授与される。その後、マサチューセッツ州立大学ローエル校(University of Massachusetts,Lowell)心理学部で教鞭を執る。現在、サンフランシスコ州立大学(San Francisco State University)人文学部教授。専門は、言語発達・発達心理学。人間が『ことば』、特に『語り』という行為を通してどのように成長し、他者と関わりあっているかに興味を持ち、言語人類学、応用言語学、社会言語学、心理言語学、認知言語学などの諸分野から、異文化比較を通して国際的、多面的に調査している。また、北カリフォルニア日本語教師会(Northern California Japanese Teachers’Association)会長として、研究者や教育者ばかりでなく広く言葉に関心を持ってもらおうと、言語使用に関して興味深いと思われる事柄をニュースレターやホームページで紹介している。余暇は、カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリアの北部に位置しワインで有名なナパ(Napa)でワイナリー巡りをしている。



<主著:英語>

・Language Issues in Literacy and Bilingual/Multicultural Education(Harvard Educational Review 1991年共編)

・Culture-Specific Language Styles:The Development of Oral Narrative and Literacy(Multilingual Matters 2002年単著)

・Studies in Language Sciences(3),(4),(5),(6)(Kurosio Publishers 2004,2005,2006,2007年共編)

・Applying Theory and Research to Learning Japanese as a Foreign Language(Cambridge Scholars Publishing 2007年単編)



<主著:日本語>

・言語学と日本語教育II,III,IV,V:New Directions in Applied Linguistics of Japanese(くろしお出版 2001年 2004年共編/2005年 2007年単編)

・文化と心理学-比較文化心理学入門(北大路書房 2001年共翻訳)

・ヨウチエン:日本の幼児教育、その多様性と変化(北大路書房 2004年共翻訳)

・やわらかアカデミズムわかるシリーズ『よくわかる言語発達』(ミネルヴァ書房 2005年分担執筆)