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新刊

言語政策研究への案内

村岡英裕/上村圭介[編]

定価
2,970円(2,700円+税)
ISBN
978-4-87424-979-6 C1080
発売日
2024/10/25
判型
A5
ページ数
284頁
ジャンル
言語政策 ― 言語政策入門
オンライン書店
amazon 楽天ブックス 紀伊國屋書店 丸善ジュンク堂書店  e-hon 

グローバルな人の移動の増加、多言語化、多様化が意識にのぼりつつある中、言語政策は社会にとって重要な役割を果たしている。言語政策学会の全面協力のもと、言語政策および、その研究の分野を示し、全体像を明らかにする。

■「まえがき」より
本書は、グローバルな人の移動の増加、社会の多言語化、多様化が意識にのぼりつつある現在、言語政策・・・(全文を読む)、そして言語政策研究に関心をもつ人々を対象に、言語政策とその研究の分野を示し、全体像を出来る限り明らかにすることを目的に編集された。
本書は、序論と4つの部から構成される。序論では上に述べた言語政策とは何か、言語政策にとって言語とは何か、といった言語政策をこれから考えるうえで最も大切になる基本的な枠組みを述べる。
第1部と第2部は言語政策の基礎として8つの章を用意した。第1部では、言語政策が扱っている対象や内容について論じる。まず言語政策研究史を概観し(第1章)、言語政策の重要な課題である言語の地位の考え方とその変化を述べる(第2章)。さらに近代化に応じるために言語に対して具体的にどのような変更・修正が行われてきたかを紹介し(第3章)、さらに現在のグローバル化によって重要さが増している異言語間コミュニケーションの政策を取り上げる(第4章)。
第2部は言語政策がどのようなプロセスで実現されているかを論じる。まず言語政策の出発点となる言語問題の考え方、とくに言語問題はだれにとっての問題かといった言語政策の正当性にかかわる諸点について考察する(第1章)。次いで、政策研究の枠組みを参考にしながら、言語問題がどのようなプロセスを経て、政策課題となり(第2章)、さらにさまざまな政策の担い手によって実施計画が作られるのかを述べる(第3章)。そして言語政策のプロセスの最後に位置づけられる、実施された政策の評価とその課題を概観する(第4章)。
言語政策研究は極端に学際的である。そのため研究の方法も多くの場合は研究者の背景にある学問分野によって変わってくると言える。そのため第3部では言語政策研究の研究方法をそれぞれの学問分野ごとに述べるようなことはせず、研究対象の規模や広がりをもとに、事例研究(第2章)、地域研究(第3章)、比較研究(第4章)、量的研究(第5章)に分けて紹介する。また、言語政策研究に際しての留意事項についても触れる(第1章)。
第3部までが言語政策についての基礎編だとすると、第4部は言語政策研究のいわば実践編になる。ここでは言語政策研究の最前線として、10章にわたって各分野のこれまでの研究でわかっている知見や課題を紹介する。ある程度の分野は扱えたと思うが、残念ながらすべてを網羅することは到底叶わなかった。その点、前もってご容赦をお願いする次第である。
また、本書では第1部、第2部、第4部に研究の具体例を示すためにコラムを置き、研究者の方々にご自身の研究論文の紹介をしていただいた。関心をもたれた読者はぜひ紹介された論文を手に入れて一読されることをお勧めする。

関連情報

目次
序論 言語政策とは何か 木村護郎クリストフ
1. はじめに
2. 言語政策の定義
3. 政策対象としての言語
4. 言語政策研究の発展
5. 言語政策の再定義の試み
6. 言語政策の課題の変遷
7. まとめ

第1部 言語政策とは何か

第1章 「言語政策概念」の多様さ 西島佑
1. はじめに
2. マクロ・アプローチの時代:1950年代〜
3. ミクロ・アプローチの登場と現在:1990年代〜
4. おわりに:「言語政策概念」の今後

第2章 言語の地位 山川和彦
1. はじめに
2. 国家語とその役割の変化
3. 地域公用語と言語の地位
4. 日本国内における地域語の位置付け—石垣市を事例として
5. 観光文脈での言語の地位
6. まとめ

第3章 言語の近代化と標準化をめぐる言語政策 原隆幸
1. はじめに
2. 言語計画と実体計画
3. 成文化、標準化、近代化、言語改良など
4. 日本における実体計画
5. まとめ

第4章 
異言語間コミュニケーショングローバル化時代に求められる
言語政策の特徴 サウクエン・ファン
1. はじめに
2. いわゆる「相互理解度」
3. 国勢調査の盲点
4. 言語問題の時代性
5. グローバル化時代に求められる言語政策の2つの事例
6. まとめ

第2部 言語問題と人為的介入

第1章 出発点としての言語問題 高民定
1. はじめに
2. 言語問題をめぐる議論
3. 言語問題の範囲と出発点
4. 言語問題処理の2つのレベル
5. 言語問題における当事者
6. 当事者の問題から政策課題へ—言語教育を例に
7. おわりに—言語教育施策から社会参加のための支援施策へ

第2章 政策課題から政策決定へ 上村圭介
1. はじめに
2. 政策問題における複雑性
3. 政策に求められる知識
4. 政策過程の諸段階
5. 政策決定の分析
6. まとめ

第3章 政策の設計と実施 上村圭介
1. はじめに
2. 政策の階層性
3. 政策実施のための手段
4. 資源交換としての政策
5. 言語政策の横の広がり
6. まとめ

第4章 言語政策の評価 嶋津拓
1. はじめに
2. 言語政策と評価
3. 企業の言語政策
4. 独立行政法人の言語政策
5. まとめ

第3部 研究方法とその特徴

第1章 学際研究としての言語政策研究と研究上の課題 村岡英裕
1. 学際研究としての言語政策研究とは?
2. 研究上の諸課題

第2章 質的研究法としての事例研究 福永由佳
1. はじめに
2. 事例研究とは
3. 事例研究の実際
4. まとめ

第3章 地域研究 沓掛沙弥香
1. はじめに
2. 研究対象
3. 研究内容
4. 研究方法
5. 研究事例紹介—タンザニアの言語政策研究
6. まとめ

第4章 比較研究 貞包和寛
1. はじめに
2. 比較研究の事例
3. 比較研究の展望—席次計画分析における比較研究の可能性—
4. まとめ

第5章 量的研究 寺沢拓敬
1. はじめに
2. 大量観察ではじめてわかること
3. 一般化=母集団推測
4. 因果推論
5. 量的研究が扱う言語政策的トピック
6. 研究手法
7. まとめ

第4部 研究の最前線

第1章 言語と国際標準 井佐原均 神崎享子
1. はじめに
2. 国際標準化
3. 言語の標準化
4. おわりに

第2章 外国語教育 下絵津子
1. はじめに
2. 近代教育における外国語教育政策の形成
3. 戦後教育における外国語教育政策形成におけるアクター
4. 外国語教育政策に関するこれまでの研究
5. おわりに

第3章 社会統合のための多言語主義・複言語主義 西山教行
1. はじめに
2. 多言語主義
3. 複言語主義
4. 社会統合のための多言語主義と複言語主義
5. まとめ

第4章 言語権と少数言語コミュニティ 杉本篤史
1. はじめに
2. 日本国内における人権アレルギーの問題
3. 国際人権法における言語権概念
4. 言語権の日本国内法へのローカライズの問題
5. 日本の少数言語の状況
6. まとめ

第5章 言語サービス 岩田一成
1. はじめに
2. 外国人住民調査の結果
3. 情報発信における言語選択
4. 言語サービスと課題
5. まとめ

第6章 外国人移住者と日本語教育 松岡洋子
1. はじめに
2. 外国人材受入れ施策の展開とその背景
3. 外国人移住者を取り巻く日本語教育施策の動向
4. 移住者の第二言語教育の在り方
5. 
外国人移住者受入れのための言語教育政策としての
日本語教育の在り方
6. まとめ

第7章 継承語教育 落合知子
1. はじめに
2. 母語教育、継承語教育その用語と歴史的展開
3. 継承語教育の意義と重要性
4. 今後の課題
5. まとめ

第8章 異文化接触 加藤好崇
1. はじめに
2. 観光接触場面とやさしい日本語
3. やさしい日本語の習得計画
4. まとめ

第9章 コミュニティ・レベルの言語政策 猿橋順子
1. はじめに
2. コミュニティ・レベルの言語政策と少数派のエンパワーメント
3. 飲食店(エスニック・レストラン)の言語政策的な営み
4. 国際的なフェスティバル(国フェス)の言語政策的な営み
5. コミュニティ・レベルの言語政策研究の意義と方法
6. まとめ

第10章 差別と言語 岡本能里子
1. はじめに
2. 問題の所在
3. メディアを通して配信された差別問題
4. 差別に関する法整備状況
5. 性差別や排除をなくすための言語教育の課題
6. まとめと今後の課題
著者紹介
村岡英裕 (むらおか ひでひろ)
 千葉大学 名誉教授
 著書に『日本語教師の方法論』(凡人社)
 編著に『接触場面の言語学』(ココ出版)

上村圭介(かみむら けいすけ)
 大東文化大学 外国語学部 教授
 編著に『今そこにある多言語なニッポン』(くろしお出版)