イベント(日本語教育)

オンラインイベント:「読む」学習の新しいかたち ―「日本語多読道場」の活用

講師: 高見智子 先生(ペンシルベニア大学 東アジア言語文明学部現代日本語プログラムディレクター)、遠藤和彦 先生(仙台国際日本語学校 教務主任、NPO多言語多読会員、TONGARI BOOKS)
日時: 2022年7月17日(日) 9:00 - 10:30
場所: オンライン

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【2022/07/28 開催レポート掲載】

こちらのセミナーは終了しました。
お申し込み・ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
「お寄せいただいた質問と、講師/くろしお出版からの回答」を掲載しました。

お寄せいただいた質問と、講師/くろしお出版からの回答

Q:あらためて、お二人の先生方が考える「多読」と「読解・精読」の違いについて、教えていただけないでしょうか。
A:「多読」は(4つのルールにしたがって)自分で好きな素材を選び、好きなように読む。楽しむことが目的です。「読解・精読」は教師が決めた素材を決められた時間の中で、問いに対する正しい答えを出すために読む。学習が目的です。【遠藤】
A:多読はそれぞれが自分で読みたいものを選び、好きなペースで読み、楽しむことが目的だと考えています。今回私が発表した実践例は多読用に書かれた読み物を1つ選び、クラスで読解指導のために使った例でした。精読については、一文、一文、文法や語彙、文の構造などに注目して、文を解読して行く様な印象を持っています。読解は読んで理解することで、それは何のために読むかという目的が重要だと思います。例えば、必要な情報を求めて読む、短い時間で読み書いてあることの基本的な情報を掴むなど、目的によってどこまで何を理解するのかということが変わり、具体的な学習活動もそれによって決まって行くと思います。私の発表は、多読用に書かれた「北海道」の読み物を、大体の情報を理解できるようになることを目的とした読解の学習活動として使わせていただいた例のお話でした。【高見】

Q:遠藤先生がご紹介くださった多読の記録シートには、具体的にどんなことを書くのでしょうか。特に指示はなく、たとえば「おもしろかった」の一言などでもいいのでしょうか。
A:どのようなことを書いても構いません。たくさん感想を書く学習者もいますし、毎回「おもしろかった」のような一言しか書かない学生もいます。あらすじを書いてくれたり、絵文字を使う学生もいます。特に指示をしないのは、コメントを書くこと自体が負担になってはいけないからです。コメントは評価の対象とせず、誤りがあっても添削したりしません。

Q:高見先生の多読のクラスでは、1つのユニット(たとえば「北海道」)で、どのくらいの時間をかけて行っているのでしょうか。
A:北海道ユニットをクラスで使った時間は2時間ぐらいでした。追記させていただきたいのですが、私のクラスは多読のクラスではなく、いわゆる一般的な中級(後半)の日本語のクラスです。そこで、何か読み物を読んで、ディスカッションなどをしております。北海道はその読み物として使ったものの一つです。

Q:高見先生のクラス内で「北海道」という1つの読み物を課題とした場合、クラス内のレベル差は問題にならなかったのでしょうか(読み物が簡単すぎてつまらない、または難しすぎて楽しめないなど)。レベル差があった場合は、どのように解決されましたか。
A:私のクラスは中級(後半)のクラスということで設定されているので、若干の差はありますが、大きくレベル差があることはあまりありません。ただ、読むスピードなどが違うと思いますので、読むのは宿題として、自分のペースで読めるようにはしています。また読み物の課題をした際も、その読み物を理解するだけではなくそのトピックについて話す、話し合う、書くなどいろいろな活動を組み合わせ、いろいろな形で学習者がチャレンジできる様に心がけています。

Q:学生が各自図書館に行って多読をする際の、司書と教師の役割についてもう少し詳しく教えてください(両者がどのように連携していたのか、両者が学生の多読活動にどのように介入していたか、購入図書はどのように決めていたか、学生のレベルに適した本をどのように勧めていたのかなど)。
A:基本的には司書と教師で、購入図書を相談して決めています。学生にリクエストを聞くこともあります。教師はコース内で多読活動を取り入れ、一学期に2、3回学生を図書館に連れていき多読活動を行います。図書館には多読の本が常備してあるので、学生は各自いつでも図書館に行って本を読むことができます。【高見】

Q:読むことが苦手な学習者は動画の視聴のみでもよいという話がありましたが、それは日本語を音声で聴く「多聴」の考え方なのでしょうか。多読と多聴の関係が気になりますが、どのようにお考えでしょうか。
A:映画のような動画をたくさん見るのは「多観」と言います。好きなものを楽しんで大量にインプットする点で多読と同じです。すみません。音声だけを聴くという「多聴」はやったことがありません。【遠藤】

Q:小学校の日本語支援にぜひ多読道場を利用したいと思いました。児童の教室で多読の実践を行う際は、どのような点に注意すればよいでしょうか。
A:私の勤める日本語学校では、夏休みなどに外国につながる児童向けに日本語教室を開いています。読むことに慣れていない児童には「読み聞かせ」が有効だと感じました。ぜひ音声付きで読ませてみてください。【遠藤】

Q:初級後半のクラスでは、どのように多読を導入していけばよいか、詳しく教えていただけないでしょうか。
A:多読実践に役に立つ本とサイトについては、下記をご覧ください。【遠藤】

A:私の大学では初級から多読活動として、一学期に2、3回図書館に行き、本を読むという活動をしています。自分が好きな本を、自分が好きなペースで楽しく読むという目的をきちんと伝えると、初級の学生も安心して本を読み始め、多読の日を心待ちにしている様子がみられます。【高見】

Q:多読の記事を読み終えた後、オンライン上で感想を交換する方法をもう少し詳しくお聞きしたいです。使われているソフトやアプリがあれば教えてください。
A:Zoomを使っています。またSlackというアプリで、チャットのように感想を書かせたりしたこともあります。【遠藤】
A:私の大学ではキャンバスLMSというオンライン学習プラットフォームを使っています。そこではディスカッションフォーラムという学習者が書いたものをお互い読み、コメントし合うという機能や、自分で話して録音したものを入れ、お互いのものを聞き合い、コメントし合うという機能が入っていますので、それを使っています。随分前ですが、それを使う前はFacebookにクラスでグループを作り、使ったことがあります。【高見】

Q:大学の授業などで成績をつける必要がある場合、多読をどのように評価すればよいでしょうか。アイデアがありましたら、教えてください。
A:難しいですね。私の大学では多読のコースはなく、一学期に2、3回図書館に行って多読活動をしておりますので、その活動に対して基本的には評価はしておりません。大学での多読コース、活動、評価については、NPO多言語多読さん監修の『日本語多読 上・下巻(日本語教師読本12·13)』で素晴らしい実践報告や提案がされていますので、そちらをご参照されることをお勧め致します。【高見】

Q:多読の活動そのものに前向きでない学習者に、どうやって取り組ませるとよいのか、意識の向け方についてヒントがあれば伺いたいです。
A:まずは「日本語が上手になりたいですか?」と質問します。それから、多読の目的を説明します。そして、学習者の趣味や興味があるものを聞いて、それと関係がありそうな本を薦めます。【遠藤】
A:実は今まで多読の活動に前向きでない学生にあったことがないので、想像してお答えします。まず、学生に「(自分の母語で)本を読むのが好き?」と聞くと、ほぼ100%の学生が好きだと答えると思います。「それでは、まずは日本語で本を読むのが好きになれたらいいね、楽しむことが目的ですよ」と伝え、多読のルールを説明します。学生が好きな本を選んでもらい、決まった時間自分のペースで読む。ソファに座ってもいいし、お菓子食べながらでもいいし。私自身も学習者と一緒に自分が好きな本を読みます。終わった後に、「どうだった? 面白かった? よかったね」などの声かけをします。「楽しい時間になるように」を1番に考えていくといいと思います。【高見】

Q:「利用上の注意」に「商用目的の利用、無断でのコピーは禁止」とありますが、日本語学校の授業やプライベートレッスンでの利用は可能でしょうか。また、必要な読み物を印刷して学習者に配布したり、図書館に置くという使い方は可能でしょうか。
A:日本語学校の授業やプライベートレッスンでの利用は商用目的ではありませんので、ぜひご活用ください。また、学習者に配布したり、図書館に置いたりすることも、純粋に教育目的の限りであれば問題ありません。

Q:「日本語多読道場」の原稿を書いてみたい場合は、どちらに連絡すればよろしいでしょうか。
A:下記お問い合わせフォームより、お問い合わせの内容のところで「執筆に興味がある」を選んでお送りください。くろしお出版よりご連絡いたします。

「日本語多読道場」お問い合わせフォーム >

開催情報

日本語学習者向けのウェブサイト「日本語多読道場」開設1周年の記念イベントを開催します。

日本語多読道場

■会場 オンライン(Zoomミーティング)

■日時 2022年7月17日(日)9:00-10:30AM 日本時間
(7月16日(土)20:00-21:30 アメリカ東部時間)
(7月16日(土)17:00-18:30 アメリカ太平洋時間)
海外の方もご参加可能な時間帯で開催します。

■参加費 無料

■講師
高見智子 先生(ペンシルベニア大学 東アジア言語文明学部現代日本語プログラムディレクター)
遠藤和彦 先生(仙台国際日本語学校 教務主任、NPO多言語多読会員、TONGARI BOOKS)

■予定内容
・「日本語多読道場」の基本情報と使い方(くろしお出版)
・「日本語多読道場」を使った授業と読解指導(高見先生)
・「日本語多読道場」読み物の作成意図、多読授業の実践(遠藤先生)

■「日本語多読道場」について

  1. 100以上のコンテンツをN1以上からN5以下にレベル分けし、毎月、新たなコンテンツを追加掲載。
  2. サイトはリフロー型で、スマホでも見やすく、アクセス数もPCとスマホとほぼ同数。
  3. 全てのコンテンツに音声がついている。
  4. 学習者が理解しやすいように写真を多用。
  5. 日本各地の情報、グルメ情報、日本文化、防災、ごみの分別、防災、行事など多彩なトピックを掲載。

自習用、日本語の授業の中で、また、課題などとして、是非、ご活用ください。

「日本語多読道場」にアクセス >


■申し込み
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