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『決定木分析による言語研究』出版記念講演シリーズ5(最終回):音韻論への応用

日程: 2023年11月29日(水)
場所: オンライン

『決定木分析による言語研究』出版記念講演シリーズ5
テーマ:「音韻論への応用―方言のアクセントの変化と中国人および韓国人日本語学習者の連濁の習得―」

▼日時詳細 2023年11月29日(水)20:00-21:00(日本時間)

▼講師 玉岡賀津雄(上海大学教授・名古屋大学名誉教授)
 
▼要旨:今回の講演は著書の第5章と第6章の紹介です。第5章では,方言の世代間の変化を示した池田・玉岡(2013)の研究を紹介しています。山口方言ではアクセント核が特殊拍あるいは連続した母音に置かれることが知られています。ところが若年層ではその頻度が減少しているようです。そこで,山口県内だけに居住してきた若年層と老年層に,促音,撥音,長音,二重母音/ai/の4種類を含む語彙についてアクセントの頻度を数えて,分類木分析で世代間の違いを検討しました。その結果,同じ山口方言話者であっても,世代間でアクセント核を置く頻度に大きな違いがみられました。第6章は,連濁におけるライマンの法則に関する研究(Tamaoka, Hayakawa & Vance, 2016)です。日本語には,「青空 /ao zora/ アオゾラ」など複合語を作る際に第2要素のはじめの子音の清音が濁音になるという「連濁」という特徴がみられます。ただし,第2要素にすでに濁音が含まれている場合は,基本的に連濁は起こりません。これは,ライマンの法則と呼ばれる不連濁規則です。ライマンの法則は,類似した要素の繰り返しを避けるという普遍的なOCP(Obligatory Contour Principle)原理に導かれている可能性があります。そこで,中国語と韓国語を母語とする日本語学習者を対象に知覚調査を行いました。分類木分析の結果,中国語と韓国語の日本語学習者は,第2要素に濁音が有る場合,無い場合と比べて連濁を避けることを実証しました。

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