- 多言語社会・言語政策
- 子ども
親と子をつなぐ継承語教育
日本・外国にルーツを持つ子ども
近藤ブラウン妃美/坂本光代/西川朋美[編]
- 定価
- 3,740円(3,400円+税)
- ISBN
- 978-4-87424-807-2 C1081
- 発売日
- 2019/8/22
- 判型
- A5
- ページ数
- 336頁
- 重量
- 423g
- ジャンル
- 日本語教育 ― 日本語教育専門書
複言語環境下で生きる子どもや若者のために、家庭、教育機関、コミュニティで何ができるか。子どもの言語発達・教育に関する悩み・疑問について、気鋭の執筆陣と共に考える。海外で子育てをする親や継承日本語教育に携わる教育者に。
■「はじめに」より
「バイリンガルに育てたいが、子どもは日本語と英語の混ざった言葉を話す。このままではどちらの言語も年齢相応のレベルに達することができなくなるのではないか」
「子どもを日本語教室に通わせているが、現地校での勉学や部活動が忙しくなり、最近行くのをとても嫌がる。子どもには現地校で落ちこぼれてほしくないし、日本語の勉強を続けさせるべきだろうか」
「継承日本語学習者の中には、日常会話には全く問題がないのに、読み書きのあまりできない学習者もいる。このような学習者に、読み書きをどう教えたらいいのか」
本書は、親や教師からのこのような悩みや疑問を受け止め、今日の日本国内外における継承語教育を「親と子をつなぐ継承語教育」と位置づけることで、その意義と価値、そしてその問題や課題について考察します。本書では、日本にルーツを持つ海外の子どもの継承日本語教育だけでなく、日本国内に住む外国にルーツを持つ子どもの継承語教育にも注目し、複言語環境下で生きる子どもや若者のために、家庭、教育機関、そしてコミュニティで何ができるかについて考えます。
- 追加情報
- 【書評・紹介】
『英語教育』2020年1月号(大修館書店)に書評が掲載されました。
評者は湯川笑子氏(立命館大学)。「居住地の違いを超えて、児童・生徒の複数の言語を同時に育てる視点と方法を共有・開発する重要性を指摘している」https://www.taishukan.co.jp/book/b492388.html
『KLA Journal』(vol.6、駒場言葉研究会)に書評が掲載されました。
評者は谷口ジョイ氏(静岡理工科大学)。「『日本・外国にルーツを持つ子ども』に光を当て、どのような働きかけが有効であるのかを多くの人が考えるきっかけになる」
https://sites.google.com/view/komaba-language-association/kla-journal/kla-journal-volume-6-may-2020
ブログ「さくまログ」(佐久間司郎氏)にレビューが掲載されました。
「バイリンガル教育や外国における日本語補習校の現状、若年層のための教材開発など、非常に幅広い分野に渡る話が盛り沢山」
https://shirogb250.com/2020/06/02/keishougo/
- 目次
- はじめに
序章 親と子をつなぐ継承語教育(近藤ブラウン妃美)
第1部 バイリンガル・マルチリンガル発達理論からみた継承語習得
1章 バイリンガル・マルチリンガルの継承語習得(坂本光代)
2章 継承語習得と認知能力発達(田浦秀幸)
3章 家庭・学校・コミュニティにおける継承語話者の言語選択(坂本光代)
4章 日本語を優勢言語としない子どものバイリテラシー習得・発達(折山香弥)
COLUMN 1 第一言語、母語、ネイティブランゲージの違い(近藤ブラウン妃美)
第2部 海外における継承日本語学習者:言語学習・モチベーション・アイデンティティ
5章 米国現地校における英語学習者(バトラー後藤裕子)
6章 継承語学習のモチベーション/動機づけ(森美子)
7章 継承日本語とアイデンティティ形成(知念聖美)
8章 米国における学齢期の子どものための継承日本語学習の機会(片岡裕子)
COLUMN 2 継承語の言語的特徴(西川朋美)
第3部 海外における継承日本語教育:指導・教材・評価
9章 幼児や低学年児童対象の継承日本語教室で使う教材(山本絵美)
10章 北米の日本語学校における学習者のニーズの多様化(リー季里・ドーア根理子)
11章 外国語学習者と継承語学習者の混合日本語クラスでの指導(ダグラス昌子)
12章 欧州における継承日本語教育と欧州言語共通参照枠(CEFR)(奥村三菜子)
13章 海外における継承日本語学習者のための評価(近藤ブラウン妃美)
COLUMN 3 海外で育つ子どもの実態(坂本光代)
第4部 日本における外国にルーツを持つ子どもの継承語教育
14章 日本の公立学校における日本語を母語としない子どもへの言語教育(西川朋美)
15章 国境を越えた子どもの異言語・異文化の壁(川上郁雄)
16章 対話型言語能力アセスメント「DLA」の有用性(櫻井千穂)
17章 中国にルーツを持つ子どもの母語・継承語教育(高橋朋子)
18章 日本における外国にルーツをもつ子どものための継承語教育と言語政策(久保田竜子)
COLUMN 4 継承語教室は誰のため?(西川朋美)
引用文献
キーワード索引
執筆者紹介
- 著者紹介
- 近藤ブラウン 妃美(こんどうぶらうん きみ)
ハワイ大学マノア校東アジア言語・文学科修士・博士課程プログラム教授、および言語・言語学・文学部の副学部長。同校で、継承日本語学習者のバイリンガル言語発達に関する研究で博士号取得。過去30年間、ハワイを中心に外国語・継承語としての日本語教育・評価の研究およびその指導を行う。専門は日本語教育、継承語教育、第二言語評価。
坂本 光代(さかもと みつよ)
上智大学外国語学部英語学科、および同大学大学院言語科学研究科教授。2000年博士号取得。トロント大学大学院でバイリンガル研究の第一人者、ジム・カミンズ博士に師事。8歳で渡加、30年以上カナダで過ごす中、自身の言語習得過程について疑問・興味を持ったことがきっかけでこの分野に進んだ。専門はバイリンガル・多文化教育。
西川 朋美(にしかわ ともみ)
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科准教授。ハワイ大学マノア校より博士号(Second Language Acquisition)取得。日本在住の外国ルーツの子どもの支援に関わる中、第二言語習得理論に興味を持つようになった。専門は第二言語習得(臨界期仮説・年齢要因)、年少者日本語教育。