- 多言語社会・言語政策
- 異文化コミュニケーション
- 子ども
探究型アプローチの大学教育実践
早大生が「複言語で育つ子ども」を考える授業
川上郁雄[著]
- 定価
- 2,860円(2,600円+税)
- ISBN
- 978-4-87424-844-7 C0081
- 発売日
- 2020/11/5
- 判型
- A5
- ページ数
- 272頁
- 重量
- 351g
- ジャンル
- 日本語教育 ― 日本語教師参考書
- オンライン書店
- amazon.co.jp 楽天ブックス
学生が主体的に考え、意見交流を行うプロセスを重視した新しい授業のあり方を提案。『日本語を学ぶ/複言語で育つ』を教材として学んだ早大生たちの授業実践の記録。学部生12名の提出レポートを特別公開。対話を通した学びとは。
■「はじめに」より
今、世界各地で求められているのは、社会状況の急激な変化の中で、何が正しい情報かを見極める判断力や、深く考える思考力、多様な要素を総合的にまとめ表現する力などです。また、そのような力を育成する方法が模索されています。一人で学ぶだけではなく、他者と対話をすることによって学び合うという教育実践も、その一つです。
本書は、以上のような問題意識から行われた探究型アプローチによる大学教育実践の記録です。幼少期より複数言語に触れながら成長する子どものうち、「日本語を学ぶ/複言語で育つ」子どもをテーマに、学生たちが課題を解き、意見交流を重ね、自分の考えを深め、まとめ、発表することを行った半年間の授業実践の記録です。
教員が大教室でマイクを持って一方的に学説や自分の研究成果を語る講義形式の大学教育は、古い方法論としてすでに役目を終えたように見えます。本実践は、そのような古い方法論とはまったく異なります。本書は、どのような素材と問いから学生が主体的に考え、意見交流を行い、自分の考えを深めていくのか、そのプロセスを追いながら、学生の意見をふんだんに提示することで、新たな授業づくりのヒントを提示することを目的とします。
追加情報
- 目次
- 第1部 グローバル化する大学キャンパス
1 誰もが「移動する時代」
国際化する大学キャンパス
英語による大学教育
グローバル人材とダイバーシティ
2 どのような力を育成するのか
自分で考える力
体験を語る/言語化する力
知的構想力
3 授業をデザインする
授業の構造
テキスト
シラバス
学生たちのプロフィール
第2部 複言語で育つ子どもを考える
4 春クォーターの授業展開―複言語で育つ子どもをめぐって
4.1 第1回目 オリエンテーション
4.2 第2回目 移動する時代と子どもたち
4.3 第3回目 日本で日本語を学ぶ子どもたち
4.4 第4回目 ことばの学びとことばの力
4.5 第5回目 海の向こうで日本語を学ぶ子どもたち
4.6 第6回目 ことばとアイデンティティ
4.7 第7回目 それぞれの「日本語」
4.8 第8回目 コースの振り返り
4.9 私の学び、私の意見①〈課題レポート1〉
4.10 担当教員の振り返り①
5 夏クォーターの授業展開―複言語で育った大人のライフストーリーをめぐって
5.1 第1回目 オリエンテーション 社会の中で育つことば
5.2 第2回目 子どもたちの心とことばの学び
5.3 第3回目 ことばの学びを支える「教材」とことばを支える言語活動
5.4 第4回目 ライフストーリーを解釈する1
5.5 第5回目 ライフストーリーを解釈する2
5.6 第6回目 ライフストーリーを解釈する3
5.7 第7回目 コースのまとめ
5.8 第8回目 ライフストーリーを聴く
5.9 私の学び、私の意見②〈課題レポート2〉
5.10 担当教員の振り返り②
第3部 移動する時代に生きる私たちは、複言語社会をどう生きるのか
6 「21世紀型人材」と探究型アプローチの大学教育実践
アクティブ・ラーニングと探究型アプローチ
Inquiry based learning の思想と実践
「複言語で育つ子ども」を考える実践とは
体験から経験へ
「日本語を学ぶ/複言語で育つ子ども」というフィールド
「移動とことばとアイデンティティ」を考える実践
複言語社会を生きるために―「移動する子ども」という視点
- 著者紹介
- 早稲田大学大学院日本語教育研究科教授。博士(文学、大阪大学)。
オーストラリア・クイーンズランド州教育省・日本語教育アドバイザー(国際交流基金派遣日本語教育専門家)、宮城教育大学教授等を経て、2002年より現職。専門は、日本語教育、文化人類学。
主編著に、『「移動する子どもたち」のことばの教育学』(2011、くろしお出版)、『移民の子どもたちの言語教育』(2012、オセアニア出版社)、『JSLバンドスケール 小学校編』『JSLバンドスケール 中学・高校編』(ともに2020、明石書店)、『「移動する子どもたち」と日本語教育』(編著、2006)、『「移動する子どもたち」の考える力とリテラシー』(編著、2009)、『海の向こうの「移動する子どもたち」と日本語教育』(編著、2009、以上明石書店)、『私も「移動する子ども」だった』(編著、2010)、『「移動する子ども」という記憶と力』(編著、2013)、『日本語を学ぶ/複言語で育つ』(共著、2014)、『公共日本語教育学』(編著、2017)、『移動とことば』(共編著、2018、以上くろしお出版)など。