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学習者を支援する日本語指導法Ⅰ 音声 語彙 読解 聴解

畑佐由紀子[著]
定価
3,080円(2,800円+税)
ISBN
978-4-87424-906-2 C3081
発売日
2022/9/22
判型
A5
ページ数
286頁
重量
369g
ジャンル
日本語教育 ― 日本語教師参考書
オンライン書店
amazon.co.jp 楽天ブックス

日米豪で教鞭をとった著者が、過去70年の日本語指導法を概観し、最新の研究などの知見に基づいた理論とその科学的な裏づけに基づいた実践的指導法を紹介。第Ⅰ巻は、音声 語彙 読解 聴解。2023年刊行の第Ⅱ巻は、文法 会話 作文 総合学習。

■「まえがきより
日本語を教えはじめたばかり時は、何をどう教えればいいのかわからず、とりあえず自分が担当する教科書の内容や、与えられた内容をカバーするのに精一杯という人が多いと思います。日本語教育の初歩的な指導書を読んだり、経験のある先生の授業を見てまねしてみたりするなど、教え方のノウハウを知るだけになってしまい、個々の活動が学習者の言語習得にどのように役立つのか考える余裕もないと思います。経験を積むにつれ、どのような説明や教示の仕方が学生に分かりやすいとか、こういう活動は学生が積極的に取り組むとか、授業の流れを作るにはどうすればよいのかといった、教育現場からでしか得られない知識や技能が増えていきます。経験に基づく知見は、これから教師を目指そうとする人たちが必要とする指導のコツや、留意点、そして、それを学ぶことによる安心感を与える重要な資源となります。しかし、経験を積んでもなかなか得られない知識や技能も多々あります。
<中略>
一人の教師が身に着ける教授法は、おそらくその人が初めに使った教科書や教員研修で採用されているものが主で、それに他のものを足すこともあれば、そのまま同じ教え方をより洗練されたものにしていく方が多いのではないでしょうか。教育現場は、新しい教授法を取り入れ、使いこなせるほどの余裕がない忙しい現場ですから、教師の仕事をしながら、第二言語教育に対する新たな知見を獲得し、教授法や指導法の変化についていくのは至難の業です。
<中略>
本書では、理論と実践を組み合わせることで、何を指導すべきか、それはどうしてなのか、指導するのであれば、どのようにすることが学習者の言語習得を促すのかについて考えていきます。日本語の教科書はあくまでも素材であり、多様な学習者すべてに対応できる教科書というものは存在しません。いかに効果的な指導ができるかは、自分の学生について最もよく知っている現場の教師にかかっています。教科書に依存するのではなく、学習者の学習過程や言語習得上の問題点を理解することがまず大切です。そして、授業で行う一つ一つの活動の役割や意味を考え、授業をデザインすることで、より高い効果を上げられるのではないかと思います。本書がそのための参考資料として、学習者を支援する一助となること願っています。

追加情報

目次
まえがき

第 1 章 音声指導
1. はじめに
2. 分節音(単音 segments)と超分節音(suprasegments)
3. 分節音
子音 母音 音と音素 母音の無声化  
4.超分節音
モーラと音節 言語のリズム 日本語のリズムとフット アクセント イントネーション  
5. 発音習得の問題
6. 音声の指導
習熟度と音声指導 分節音の指導 母音  子音 リズムの練習 拍感覚の獲得 アクセントの練習 イントネーションの練習 シャドーイング  

第 2 章 語彙指導
1. はじめに
2. 形態素,語,語彙と語彙数
3. 語彙数と語彙頻度
ワードファミリーとレンマ  1 年間に習得する平均語彙数  語彙頻度とカバー率  
4. 語彙知識
5. L2 学習者の心内辞書
6. 定式表現
7. 日本語の語彙の特徴
和語の特徴  漢語の特徴 外来語の特徴 混種語 接辞と語構成  
8. L2 語彙習得に影響する要因
9. 語彙指導について
漢字の指導  指導項目 語彙学習のアプローチ  

第 3 章 読解指導
1. はじめに
2. 読むということ
3. 流暢な読みと流暢でない読み
流暢な読みの特徴  流暢でない読みの特徴  
4. 読みの過程
下位レベルの処理過程 上位レベルの処理過程 一般的な認知過程  
5. 読解ストラテジー
6. テキスト理解のモデル
ボトムアップ処理 トップダウン処理 インターアクティブ処理 構成・結合モデル(Construction-Integration Model)
7. L2 日本語学習者の読解の問題
初級学習者の問題  中級学習者の問題 上級学習者の問題  
8. 読解指導
テキストの選び方 教室外活動:多読 読解ストラテジーの指導 四技能を用いる指導とペア・グループワークの活用  習熟度別の指導  

第 4 章 聴解指導
1. はじめに
2. 聞くことと読むこと
3. リスニングの過程
ヒヤリングとリスニングの違い 下位レベルの処理 上位レベルの処理  
4. 聴解能力の習得
L1 習得 L2 習得 
5. 聴解指導
聴解能力の習得に必要なスキル 聴解教材・発話資料の選び方 聴解指導における留意点 
聴解指導の種類と指導法  

教材リスト 参考文献
著者紹介
畑佐 由紀子(Hatasa、Yukiko)
広島大学 大学院教育学研究科 日本語教育学講座・教授
1992年イリノイ大学にて博士号(言語学)を取得。1983 年より日本語教育に従事し、イリノイ大学、パデュー大学、アイオワ大学、モナシュ大学等で教鞭を執るとともにカリキュラム開発及び教員養成を行う。2007 年に広島大学大学院日本語教育学講座の教授に就任。専門は日本語教授法と第二言語習得。主な著書に、『日本語の習得を支援するカリキュラムの考え方』『第二言語習得研究への招待』『外国語としての日本語教育―多角的視野に基づく試み―』『第二言語習得研究と言語教育』(編著、くろしお出版)、Nakama: Japanese Communication Context、Culture(共著、Cengage Publishing)など。Modern Language Journal、Japanese Language and Literature、Language Assessment Quarterly、『第二言語としての日本語の習得研究』、『日本語学』などに論文を発表している。Association for Teachers of Japanese の理事、日本語教育学会の評議員を務め、現在は大学日本語教員養成課程研究協議会の理事を務めている。