児童文学批評の新地平 3
〈物語〉のゆらぎ
見切れない時代の児童文学
奥山恵[著]
- 定価
- 2,200円(2,000円+税)
- ISBN
- 978-4-87424-538-5 C0095
- 発売日
- 2011/11/11
- 判型
- 四六
- ページ数
- 256頁
- ジャンル
- その他 ― <児童文学批評の新地平>
子ども時代からその先へ、確立すべき自己の「ゆらぎ」や、社会の「あやうさ」をつかまえようとする作品に迫る。またユーモアやファンタジーが人を厳かにし、希望を抱かせる理由についても考える。
<児童文学批評の新地平>
『おしいれのぼうけん』などの作家として知られ、児童文学論の第一人者でもある古田足日氏、雑誌『日本児童文学』の編集長・・・(全文を読む)の西山利佳氏、本作品で日本児童文学者協会新人賞を受賞した奥山恵氏が、現代児童文学について論じた評論集。全3巻(完結、品切あり)。
関連情報
- 目次
- ■Ⅰ 〈自分〉のゆらぎ、〈物語〉のゆらぎ
1 「もうひとりの自分」考
『ぼくと〈ジョージ〉』をめぐる二つの読み/上野瞭の答え/谷本誠剛の答え/再び、〈ジョージ〉は消えたのか?
2 作品の〈出口〉へ
『ぼくらは海へ』の結末/〈事件の完了〉への期待/『14歳――Fight』の結末/〈事件の完了〉の持つ欺瞞性/作品の〈出口〉/『ぼくらは海へ』の〈出口〉/多様な〈出口〉へ
3 二つの語り、その九〇年代的〈出口〉をめぐって
一九九〇年代のはじめに/『愛ときどき曇り』のサムとジェニー/『きらきらひかる』の睦月と笑子/『1973年のピンポール』の「僕」と鼠/『もうちょっとだけ子どもでいよう』の光と咲/『800ーーTWO LAP RUNNERS』の中沢と広瀬
4 ひとは何になるのか
若木のメタファー/『西の魔女が死んだ』におけるおばあちゃんの台所/『ステゴザウルス』におけるステゴザウルスの家/変容とその「場所」
■Ⅱ 世界のゆらぎと児童文学
5 「戦争」という不可解 ――ティム・オブライエン『本当の戦争の話をしよう』を読む
6 家族とその外 ――ハックルベリー・フィンからはじめて
7 〈すきま〉を名付ける ――児童文学と「老人」
8 ノンフィクション時評2003 ――比較ではなくつながりとして
9 「けなげな子ども」をこえて ――貧困と児童文学
10 「民主主義」をめぐる旅 ――東京・沖縄・京都
■Ⅲ 見切れない時代のエンターテインメント
11 「少数者」の系譜
『空色勾玉』と『月の森に、カミよ眠れ』、ふたりの「巫女」/『光車よ、まわれ!』における善悪二元論の崩壊/現代ファンタジー、その「少数者」の系譜/「人」と「神」と、そして「巫女」/「少数者になる」ということ
12 一歩手前の精神――ズッコケ的「殺人から身をかわす方法」
殺人、殺人、また殺人……/殺人から身をかわす方法1ハチベエの場合/2ハカセの場合/3モーちゃんの場合/一歩手前の精神
13 見える・見えない・見切れない ーー上橋菜穂子「守り人」シリーズを中心に
見えすぎる『少年H』への疑問/「守り人」シリーズにおける「現実の世界」と「見えない世界」/見切れないものへ/「戦争児童文学」としての展開/生きのびるネットワーク
- 著者紹介
- 奥山恵(おくやま めぐみ)
「Huckleberry Books」(ハックルベリーブックス,千葉柏市子どもの本専門店)経営。白百合女子大学・共立女子大学非常勤講師。
1963年千葉県生まれ。千葉大学大学院修士課程修了。都立高校教員などを経て現在に至る。本書掲載の批評など,児童文学作品への批評執筆多数。