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実践方言学講座 第2巻 方言の教育と継承

大野眞男/杉本妙子[編]

定価
4,730円(4,300円+税)
ISBN
978-4-87424-846-1 C3381
発売日
2020/12/10
判型
A5
ページ数
326頁
ジャンル
言語学・英語学 ― <実践方言学講座>
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紀伊國屋書店 丸善・ジュンク堂書店・文教堂

学校における方言教育や方言の教材作成といった教育と方言との関わり、また昔話の語り活動などの地域社会と方言との関わりについてその実践を紹介し、今後の展望を示す。

■「地域文化の多様性を守るために―第2巻への招待―」より
 日本の近代史の中で、地域を越えて広域にわたるコミュニケーションに使用されるいわゆる「標準語・共通語」と、・・・(全文を読む)地域社会の中で使用される「方言」とは、標準語・共通語の方に教育的・社会的評価面での圧倒的な比重が置かれつつも、事実上は社会生活の中で共生関係に置かれてきた。その間、方言は豊かな地域文化の多様性を創成し、地域社会のアイデンティティーを表出するための重要な手段として、標準語・共通語ではなしえない役割を日本各地で果たしてきたといえる。しかしながら、戦後の高度経済成長にともなう都市部への若年労働人口の集中などにより地方社会は疲弊し、豊かな地域文化を支えてきた方言も、若い話し手たちを奪われ、各地の方言は衰退の窮地に追い込まれている。今日のようなグローバル化の進展する状況下にあって、日本各地で多様な地域文化を醸成してきた方言が失われてしまうことも、ある程度は仕方がないという意見もあるかもしれない。しかし、たとえば関西人から関西弁を取り上げるといったら、関西のみなさんはどう感じるだろうか。決して愉快なことではあるまい。関西弁ほど優勢ではない方言を話す日本各地においては、自分たちの言葉を奪われる危機の度合いははるかに高く、それ故に方言に対する愛惜の念は一通りのものではないだろう。あるいは、自方言が失われることをすでに諦めている地域もあるかもしれない。かつての言語研究者のように自然の成り行きに任せるのではなく、その方言の話し手の立場に立って、方言を残したいという地域社会の思いを受け止めて、方言が次世代に継承されるためのポジティブ・アクションを、多様な社会的立場から模索する時が来たのではないか。


<実践方言学講座>
■小林隆 編集代表
社会の中での方言の使われ方に注目し、その効果的運用について実践的に考える学問である「実践方言学」について、その分野を網羅的に取り上げた初の講座。それぞれの課題について現状を紹介し、今後のあり方や研究の方向性を示す。全3巻。

関連情報

目次
まえがき―新たな方言学の誕生―
地域文化の多様性を守るために―第2巻への招待―

【学校教育と方言】
第1章
学校教育における方言学習の可能性
大野眞男・杉本妙子

第2章
小中学校での方言教育の実践と課題
児玉 忠

第3章
ふるさとのことばを学ぶ被災地での授業実践
小林初夫

第4章
高等学校での方言教育の実践と課題
札埜和男

第5章
大学での方言教育の実践と課題
佐藤髙司

【地域社会と方言】
第6章
生涯学習における方言の役割
加藤和夫

第7章
方言継承と昔話の語りの活動
杉本妙子・今村かほる・竹田晃子・小島聡子

第8章
地域のことばによる演劇活動
山浦玄嗣

第9章
地域の行政との連携による方言継承支援活動
三樹陽介・茂手木清・金田章宏

【方言の教材・学習材づくり】
第10章
方言教科書のつくり方
山田敏弘

第11章
地域の暮らしを継承するための方言教科書
菊 秀史

第12章
沖縄県の「しまくとぅば」教育と多様な学習材
中本 謙

第13章
継承の基盤としての方言会話の記録
小林 隆・内間早俊・坂喜美佳・佐藤亜実・小原雄次郎・櫛引祐希子

索引
執筆者紹介
著者紹介
大野眞男(おおの まきお)
國學院大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学。文学修士。岩手大学教育学部元教授。著書・論文に『方言を伝える 3.11東日本大震災被災地における取り組み』(共編、ひつじ書房、2015)、「方言語彙の継承と教育」(共著、『シリーズ日本語の語彙8方言の語彙』朝倉書店、2018)、「グローバル化と文法概念」(『國學院雑誌』119(11)、2018)などがある。

杉本妙子(すぎもと たえこ)
國學院大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。文学修士。現在、茨城大学人文社会科学部教授。著書・論文に「茨城方言資料としての昔話の有用性の検討」(『茨城大学人文社会科学部紀要人文コミュニケーション学論集』4、2019)、「方言談話が伝える震災と民俗―茨城と福島の談話を中心に―」(『方言を伝える 3.11東日本大震災被災地における取り組み』ひつじ書房、2015)などがある。