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新刊

日本語構文大全 第III巻 談話の地平へ

三原健一[著]

定価
4,620円(4,200円+税)
ISBN
978-4-87424-954-3 C3081
発売日
2023/8/25
判型
A5
ページ数
320頁
ジャンル
日本語学 ― <日本語構文大全>
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紀伊國屋書店 丸善・ジュンク堂書店・文教堂

生成文法の枠組みで発掘されてきた、日本語の言語事実を総括する『日本語構文大全』第III巻(全III巻)。生成文法が発掘してきた成果に談話の視座から知見を加えることにより、強力なデータベースを示し、新たな地平を拓く。

◼︎「序」より
 生成文法は,基本的に1つの文を分析対象として,「文(sentence)」の統語構造と意味構造・・・(全文を読む)を解明しようとしてきた。言語は多面体であるから,その全てを一度に知ろうとしても叶わず,自ずと,研究対象をどの面に絞るかが要求されることになる。その意味でも,生成文法が1つの文を分析対象としてきたことは,方法論として正しかったと言えよう。しかし,同時に,そのことで切り捨ててきた面も多い。我々の日常生活において,1つの文だけで事が足りる状況はさほど多くはなく,2つ以上の文を用いる状況の方が遥かに多いだろう。これがいわゆる談話を構成するのだが,2つ以上の文からなる連鎖は,何の法則もなくただ併置されるのではなく,ある一定の結束性を持って存在する筈である。これが,生成文法が解明を目指してきたものとは異種の言語現象であるならば,それを得意とする学派に委ねるのもよいかもしれない。しかし実際には,生成文法がまさに対象としてきた言語現象の中には,談話を考慮に入れざるを得ないものが非常に多いのである。(中略)
 本書は,生成文法が達成してきた知見に敬意を払いつつ,それに談話構造から見える光景を加え,より地平が見渡せる俯瞰図を作成することを目標としている。談話法の要請により基本語順を変更するもの(後置文,かき混ぜ操作,分裂文)と,先行談話中の情報との照応関係の下に成り立つもの(照応関係,省略構文)の記述が,本書の中心をなす。


<日本語構文大全>
■三原健一
生成文法の枠組みで発掘されてきた、日本語の言語事実を総括する『日本語構文大全』第I巻(全III巻)。

関連情報

目次


第1章 談話と文法
1.はじめに
2.主題・解説
3.前提
4.焦点
5.活性・半活性・不活性
6.談話推論
補説

第2章 照応関係
1.はじめに
2.自分
3.「自分」と視点
4.発話主体指向性代名詞
5.心理表現における逆行束縛
6.お互い
7.彼自身・彼女自身
8.内部構造とアクセント核
9.自分自身
10.c統御とその射程
11.再帰化辞
12.日英語代名詞の特質差
13.参照点モデル
14.指示表現の導入
15.談話主題とゼロ代名詞
16.ゼロ代名詞に課される制約
17.目的語空所文
補説

第3章 省略構文
1.はじめに
2.削除操作
3.同一性条件
4.名詞句内省略構文
5.項と付加詞の非対称性
6.「の」
7.構造的同一性
8.名詞句内省略構文と談話
9.日本語のVP削除
10.ゼロ代名詞分析
11.項削除分析
12.間接疑問縮約構文
13.島の制約
14.分裂文分析
15.「のだ」文分析
16.間接疑問縮約構文と談話法
補説

第4章 後置文
1.はじめに
2.後置要素
3.付加文・有標文・修正文
4.談話主題・弱焦点・強焦点
5.後置文とフィラー
6.生成文法における分析
7.再び,談話主題・弱焦点・強焦点
8.談話における情報連鎖
補説

第5章 かき混ぜ操作
1.はじめに
2.句構造的解決
3.移動
4.着地点を巡って
5.意味的に空な移動
6.移動の駆動力
7.素性分析
8.談話主題
9.かき混ぜ句の談話機能
10.文法性判断再考
11.束縛変項
12.談話の地平へ
補説

第6章 分裂文
1.はじめに
2.ハ分裂文とガ分裂文
3.分裂文と疑似分裂文
4.基底生成分析
5.移動分析
6.焦点構造
7.ガ分裂文の統語派生
8.引き継ぎと受け渡し
9.談話主題の所有権
10.後項焦点・前項焦点・全体焦点
補説

第7章 主題標識残留構文
1.はじめに
2.コラボレーション発話行為文
3.断定
4.命令文の問題
5.主題標識残留構文と左周縁部
6.疑似対照主題
補説

索引
著者紹介
三原 健一(みはら けんいち)
宮崎県生まれ。大阪外国語大学英語学専攻修士課程修了。
2005年、東北大学から博士(文学)取得。
富山大学、大阪外国語大学を経て、現在、大阪大学名誉教授・京都ノートルダム女子大学客員教授。
単著書に、『時制解釈と統語現象』(1992年くろしお出版)、『日本語の統語構造』(1994年松柏社)、『アスペクト解釈と統語現象』(2004年松柏社、2005年度市河賞)、『構造から見る日本語文法』(2008年開拓社)、『日本語の活用現象』(2015年ひつじ書房)などがある。