認知言語学を紡ぐ

近刊

認知言語学を紡ぐ

森雄一/西村義樹/長谷川明香[編]

価格
4,500円+税
ISBN
978-4-87424-814-0 C3080
発売日
2019/11/6
判型
A5
ページ数
376頁
ジャンル
言語学 ― 認知言語学専門
オンライン書店
amazon.co.jp 楽天ブックス

 本書は,「認知言語学を紡ぐ」というタイトルのもと,17名の言語研究者が,それぞれの問題関心において言語現象を分析した論考を収録する。本書のもととなっているのは,2015年度~2017年度成蹊大学アジア太平洋研究センター共同研究プロジェクト「認知言語学の新領域開拓研究―英語・日本語・アジア諸語を中心として―」(研究代表者:森 ・・・(全文を読む)雄一)である。このプロジェクトにおいては,研究会を8回,公開シンポジウムを2回開催し,プロジェクトメンバーとゲストスピーカーが報告と討議を行った。ゲストスピーカーには認知言語学的手法をメインにしている研究者だけではなく,様々なスタイルの研究者をお招きすることができ,認知言語学研究の活性化のため,有意義な機会であったと考える。その成果が,成蹊大学アジア太平洋研究センターからの助成を受け,本書『認知言語学を紡ぐ』と姉妹書『認知言語学を拓く』の2巻に成蹊大学アジア太平洋研究センター叢書としてまとめられることとなった。
 本書『認知言語学を紡ぐ』は,次のような構成となっている。
 第1部「規則性と変則性のあいだ」は,レトリックと逸脱表現を扱う。認知言語学における最重要のテーマの一つであるレトリックを主題にした論考では,定番の概念メタファー論ではなく,メトニミーの理解,くびき語法といった新鮮なトピックから,認知言語学によるレトリック研究は尽きることなき泉であることをあらためて実感させられる。また,逸脱,誤用とされる言語表現を丁寧に考察した論考からは,整合的な母語話者の言語運用が浮き彫りとなる。第2部「認知意味論の諸相」は,命名における意味拡張,百科事典的意味論,多義論について,それぞれの論者が自身の研究の蓄積を活かし,新たな展開を探った論考群となっている。認知言語学のなかで最も中心的なテーマの一つであるが,まだまだ考えなければならいない問題は多いことがお分かりいただけると思う。第3部「構文論の新展開」は,when節,身体部位所有者上昇構文,使役移動事象,虚構使役表現,主要部内在型関係節構文をそれぞれ扱った諸論考からなる。新進の研究者がそれまであまり光があたっていなかった構文現象に挑むとともに,熟達の研究者が自家薬籠中としている構文現象を見事にさばいている。日本の認知言語学研究の現在の水準を理解いただく上で絶好のセットとなっていると自負するものである。第4部「認知言語学から見た日本語文法」は,「自分」論と日本語の受身論という,日本語文法研究史の上でも認知言語学によるアプローチによっても繰り返し論じられてきたテーマを扱う。すでに何度も論じられてきた現象が新しい切り口でどのように扱われているかに注目いただきたい。
 以上に見たように,本書は,研究手法,言語現象のいずれかの面で今までの蓄積を活かしながらも,新たな認知言語学の世界を創りあげようという試みである。『認知言語学を紡ぐ』という書名の由来を理解いただけるであろう。なお,本書の姉妹書『認知言語学を拓く』は認知言語学外部からの刺激により認知言語学研究を展開させた論考を多く収録する。あわせてお読みいただければ編者にとって望外の喜びである。(まえがきより)

関連情報

目次
第1部 規則性と変則性のあいだ

第1章 日本語母語話者による英語メトニミー表現解釈における知識と文脈の役割
有薗智美

第2章 レトリックの認知構文論─効果的なくびき語法の成立基盤─
小松原哲太

第3章 創造的逸脱を支えるしくみ
─Think differentの多層的意味解釈と参照のネットワーク─
鈴木亨

第4章 母語話者の内省とコーパスデータで乖離する容認度判断
─the reason... is because...パターンが妥当と判断されるとき─
八木橋宏勇

第2部 認知意味論の諸相

第1章 生物の和名俗名における意味拡張
永澤済

第2章 百科事典的意味の射程─ステレオタイプを中心に─
籾山洋介

第3章 現代日本語における名詞「名」の多義性をめぐって
野田大志

第3部 構文論の新展開 
第1章 英語の接続詞when
─「本質」さえ分かっていれば使いこなせるのか─
平沢慎也

第2章 打撃・接触を表す身体部位所有者上昇構文における
前置詞の選択─hitを中心に─
野中大輔

第3章 日本語における使役移動事象の言語化
─開始時使役KICK場面を中心に─
古賀裕章

第4章 英語における中間構文を埋め込んだ虚構使役表現について
本多啓

第5章 主要部内在型関係節構文の談話的基盤
野村益寛

第4部 認知言語学から見た日本語文法
第1章 再帰と受身の有標性
長谷川明香・西村義樹

第2章 再帰代用形「自分」とImage SELF
─言語におけるリアリティをめぐって─
井川壽子

第3章 非情の受身の固有性問題
─認知文法の立場から─
張莉

第4章 日本語受身文を捉えなおす
─〈変化〉を表す構文としての受身文─
田中太一
著者紹介
森 雄一(もり ゆういち)成蹊大学文学部教授
西村義樹(にしむら よしき) 東京大学大学院人文社会系研究科教授
長谷川明香(はせがわ さやか)成蹊大学アジア太平洋研究センター客員研究員