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認知言語学を拓く

森雄一/西村義樹/長谷川明香[編]

定価
4,950円(4,500円+税)
ISBN
978-4-87424-813-3 C3080
発売日
2019/11/6
判型
A5
ページ数
336頁
ジャンル
言語学・英語学 ― 認知言語学専門
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リアル書店在庫
紀伊國屋書店 丸善・ジュンク堂書店・文教堂

認知言語学の外部からの刺激により、その研究を展開させようという試み。第1部 フィールド言語学と認知言語学/第2部 中国語研究と認知言語学/第3部 語用論と認知言語学の接点/第4部 言語変化と認知言語学。14篇を収録。

■まえがきより
 本書は、「認知言語学を拓く」というタイトルのもと、14名の言語研究者が、それぞれの問・・・(全文を読む)題関心において言語現象を分析した論考を収録する。本書のもととなっているのは、2015年度~2017年度成蹊大学アジア太平洋研究センター共同研究プロジェクト「認知言語学の新領域開拓研究―英語・日本語・アジア諸語を中心として―」(研究代表者:森 雄一)である。このプロジェクトにおいては、研究会を8回、公開シンポジウムを2回開催し、プロジェクトメンバーとゲストスピーカーが報告と討議を行った。ゲストスピーカーには認知言語学的手法をメインにしている研究者だけではなく、様々なスタイルの研究者をお招きすることができ、認知言語学研究の活性化のため、有意義な機会であったと考える。その成果が、成蹊大学アジア太平洋研究センターからの助成を受け、本書『認知言語学を拓く』と姉妹書『認知言語学を紡ぐ』の2巻に成蹊大学アジア太平洋研究センター叢書としてまとめられることとなった。
 本書『認知言語学を拓く』は、次のような構成となっている。
 第1部「フィールド言語学と認知言語学」は、バスク語、タガログ語をそれぞれの調査フィールドとしている研究者が、認知言語学的手法を言語事象の解明に用いたもの。世界的にみても認知言語学的分析の対象としてはほぼ未開の領域を切り拓いたものであり、本書のタイトルに最もふさわしい2論文を巻頭においた。第2部「中国語研究と認知言語学」は長年の研究蓄積のある中国語文法に認知言語学のアプローチによって切り込んだ4論考を収める。構文、メトニミー、移動表現、文法化という認知言語学の主要トピックが中国語文法研究のフィールドでどのように展開されているか、じっくりとお読みになっていただきたい。第3部「語用論と認知言語学の接点」は、2017年8月29日に開催された公開シンポジウムをもとにしている。シンポジウムでは関連性理論と認知言語学との関わりが主たる焦点となったが、当日の討議を承け、各論者においてどのように論考の形で述べられているかという点にまず注目いただきたい。加えて、語用論には多様なスタイルがあり、関連性理論とは別の立場からの発題もあったが、それらと認知言語学との今後の関係をどのように予期するか、といった点も重要なポイントである。第4部「言語変化と認知言語学」は、2016年8月12日に開催された公開シンポジウムをもとにしている。日本語学における代表的な文法史研究者をお招きし、英語を研究対象とする認知言語学者とともに行ったこのシンポジウムでの相互の意見交換が論考のなかにどのように反映されているのか、本書の読みどころの一つであろう。
 以上はいずれも認知言語学の外部からの刺激により、その研究を展開させようという試みである。本書が『認知言語学を拓く』という書名になった由来を理解いただけるであろう。なお、本書の姉妹書『認知言語学を紡ぐ』は認知言語学内部からの問題意識を発展させた論考を多く収録する。あわせてお読みいただければ編者にとって望外の喜びである。(まえがきより)

関連情報
【誤植・修正】
第1刷(2019年10月31日発行)に次のとおり誤りがありました。お詫びし、訂正いたします。

・p.222、最後の行
(誤)次に類で種を
(正)次に種で類を

・p.223、下から3行目~2行目
(誤)提喩の一種で類によって種を置き換える
(正)提喩の一種で種によって類を置き換える

・p.229、 3行目
(誤)類によって種で表す
(正)類によって種を表す

・p.230、下から2行目
(誤)([動揺した]
(正)([動揺した])

・p.232、図6の7行下
(誤)背後にあるということになるまた、(30b)
(正)背後にあるということになる。また、(30b)
目次
第1部 フィールド言語学と認知言語学

第1章 バスク語の名詞文・形容詞文の文法と意味
石塚政行

第2章 意図と知識─タガログ語のma-動詞の分析─
長屋尚典

第2部 中国語研究と認知言語学
第1章 中国語の攻撃構文における臨時動量詞の意味機能
李菲

第2章 行為の評価からモノの属性へのプロファイル・シフトについて
─中国語の難易度を表す形容詞の事例から─
三宅登之

第3章 中国語主体移動表現の様相
─ビデオクリップの口述データに基づいて─
小嶋美由紀

第4章 中国語における直示移動動詞の文法化
─[動作者名詞句+来+動詞句]の“来”の意味と文法化の道筋─
相原まり子

第3部 語用論と認知言語学の接点

第1章 認知言語学と関連性理論
西山佑司

第2章 なぜ認知言語学にとって語用論は重要か
─行為指示の動詞と項構造─
高橋英光

第3章 日本語の語用選好と言語特性
─談話カプセル化を中心に─
加藤重広

第4章 提喩論の現在
森雄一

第4部 言語変化と認知言語学

第1章 認知言語学と歴史語用論の交流を探る
─MUSTの主観的義務用法の成立過程をめぐって─
眞田敬介

第2章 譲歩からトピックシフトへ─使用基盤による分析─
大橋浩

第3章 ノダ文の通時態と共時態
野村剛史

第4章 副詞の入り口─副詞と副詞化の条件─
小柳智一
著者紹介
森 雄一(もり ゆういち)成蹊大学文学部教授
西村義樹(にしむら よしき)東京大学大学院人文社会系研究科教授
長谷川明香(はせがわ さやか)成蹊大学アジア太平洋研究センター客員研究員