前置詞byの意味を知っているとは何を知っていることなのかサンプルページを見る

前置詞byの意味を知っているとは何を知っていることなのか

多義論から多使用論へ

平沢慎也[著]

定価
4,620円(4,200円+税)
ISBN
978-4-87424-804-1 C3082
発売日
2019/7/16
判型
A5
ページ数
272頁
ジャンル
言語学・英語学 ― 英語学専門
オンライン書店
amazon.co.jp 楽天ブックス
リアル書店在庫
紀伊國屋書店 丸善・ジュンク堂書店・文教堂

英語学習者が前置詞を使いこなせるようになるには? この問いに認知言語学の見地から回答しbyの使用を可能にする知識を示す。

■著者による紹介文
もし仮にあなたが英語母語話者だったとして、前置詞byを他の英語母語話者たちと同じように使えるようになるためには、byについてどのような知識を身につけなければいけないのだろうか? もしあ・・・(全文を読む)なたが英語の非母語話者ならば、byを英語母語話者と同様に使えるようになるためには、byについて何を知っていなければいけないのだろうか? 
本書はこの問いに認知言語学の見地から回答を試みる。従来、英語の前置詞に関する認知言語学の分析は、前置詞単体の抽象的な多義ネットワークを描き出すこと—つまり特定の前置詞単体が持つとされる複数の抽象的意味の間にどのような関係があるかを指摘すること—に終始してきた。これに対し本書は、小説や映画などから収集した実例を細かく観察することを通じて、by単体の抽象的な多義ネットワークを理解してもbyを(他の)英語母語話者と同様に使えるようにはならないことを明らかにする。そしてbyの使用を可能にする知識は、「byをどのような場面・状況・文脈でどのような語句・構文とともに用いると、どのような内容が伝達できるのか」という極めて具体的でディテールに溢れた使い方の知識であるということを主張する。

関連情報
【書評・紹介】
堂本秋次氏(翻訳家・校正家)のnoteに書評が掲載されました。
「この本は、英語学習者にとっての絶望の書でもあり、福音書でもある」
「これまで多くの学習者がbyという前置詞に対して関連付けようとしていた帰納的イメージに納得できていなかった人たちにとっては救済になるはずだ」
https://note.com/akitsugudomoto/n/n4054bf842f7d

野中大輔氏(国立国語研究所)のブログ「大学芋 東京の端っこでことばと戯れる言語研究者のエッセイ」に書評が掲載されました。
「この本を一言で言うなら「byという一単語について考えるのにどれだけ英語『全体』に向き合ったか」、その実践の証だと言える。(中略)単語単体の知識について考えるよりも、それを含む言い回しの知識に目を向けることが必要なのではないか。そのような考えのもと、英語の前置詞byに向き合ったのがこの本である。(中略)英語の例文(と研究書からの引用)に日本語訳が付いていることにも注目してほしい。とても自然な日本語であり、英文と日本語訳の比較を見るだけでも勉強になる。」
https://t.co/WWIXybQe89

『英語教育』2019年11月号(大修館書店)に書評が掲載されました。
評者は住吉誠氏(関西学院大学教授)「本書は教育的にも学術的にも使用基盤モデルにもとづく実証的な英語研究の手本となるであろう。」
https://www.taishukan.co.jp/book/b482162.html
目次
まえがき
本書を読まれる前に
第1章 序 論
1.1 はじめに
1.2 多義とは
1.3 従来の多義研究の論点
1.4 意味と使用
1.5 第1章まとめ:使用基盤モデルと多義
第2章 時 間
2.1 時間:概説
2.2 by の時間義
2.3 事例研究(by now)
2.4 第2章まとめ
第3章 空 間
3.1 空間:概説
3.2 空間的近接性の by
3.3 〈過ぎ去り〉の by
3.4 〈立ち寄り〉の by
3.5 第3章まとめ
第4章 手 段
4.1 手段:概説
4.2 位置コントロール用法
4.3 連結用法
4.4 経路用法
4.5 乗り物用法
4.6 メッセンジャー用法
4.7 第4章まとめと可算性選択の原理
第5章 差分・単位
5.1 差分・単位:概説
5.2 差分・単位:各用法の記述
5.3 差分・単位:用法と用法の関係
5.4 言語使用を可能にする拡張
5.5 第5章まとめ
第6章 結 語
参考文献
用語索引
英語表現索引
人名索引
著者紹介
平沢 慎也(ひらさわ しんや)
1986年,神奈川県生まれ。2016年東京大学にて博士(文学)の学位を取得。現在,慶應義塾大学,東京大学,東京外国語大学にて非常勤講師。専門は,英語学,認知言語学。
主要業績:「「クジラ構文」はなぜ英語話者にとって自然に響くのか」(『れにくさ』第5号(柴田元幸教授退官記念号)第3巻,2014年),「仕組みを理解することと,丸ごと覚えること―sit up and take noticeから学ぶ―」(『東京大学言語学論集』第37号,2016年),“Why is the wdydwyd construction used in the way it is used?”(English Linguistics 33 (2),2017年),『メンタル・コーパス―母語話者の頭の中には何があるのか―』(共編,分担翻訳,くろしお出版,2017年),「for all I knowの意味と使用,動機付け」(『東京大学言語学論集』第40号,2018年),『グラフィック・メディスン・マニフェスト―マンガで医療が変わる―』(分担翻訳,北大路書房,2019年)