近刊
場所格交替への認知言語学的アプローチ
「豊かな文法」から捉える英語構文
野中大輔[著]
- 定価
- 4,950円(4,500円+税)
- ISBN
- 978-4-87424-977-2 C3082
- 発売日
- 2024/10/25
- 判型
- A5
- ページ数
- 364頁
- ジャンル
- 言語学・英語学 ― 英語学専門
Ronald W. Langackerが提唱する認知文法理論の文法観を「豊かな文法」と名づけ、その立場から英語の場所格交替を分析。関連する文法現象を含め多様な実例を観察し、英語話者による構文選択の実態に迫る。
■まえがきより
日本語の「ジョンが干し草をトラックに積んだ」に当たる内容を英語で表現する場合,以下のような2通りの言・・・(全文を読む)い方が可能である。
John loaded hay onto the truck.
John loaded the truck with hay.
どちらの表現でもloadという動詞が使われているが,一方ではhayが目的語になっているのに対して,もう一方ではthe truckが目的語になっている。このように動詞が2通りの構文に現れる現象は構文交替と呼ばれており,上記のような例は特に「場所格交替」として知られている。本書は英語の場所格交替を取り上げ,なぜこのように複数の構文が成立するのか,それらはどのように使い分けられているのかという問いを,認知言語学の観点から考察する。
(中略)
本書が扱う主な現象は英語の場所格交替であるが,場所格交替は英語のほかの文法現象とも関わり合っている。場所格交替と同じような発想に基づく現象を見出せることもあれば,場所格交替の構文が別の構文(受身文など)と組み合わさっていることもある。また,日本語との比較・対照をすることで見えてくる特徴もあるだろう。したがって,関連する文法現象を扱った文献も幅広く参照し,場所格交替の分析に生かすよう努めた。
関連情報
- 目次
- 第1章 序論
1.1. 構文交替
1.2. 認知言語学の特徴
1.3. 研究の実践方法
1.4. 場所格交替の概観と本書の目的
第2章 認知言語学の構文研究と場所格交替
2.1. 捉え方と文法
2.2. 使用基盤モデルと文法
2.3. 事例研究:穴あけ構文
2.4. まとめ
第3章 場所格交替の先行研究と課題
3.1. 統語的アプローチ
3.2. 統語的アプローチの破棄
3.3. 語彙意味論
3.4. 構文文法
3.5. 残された課題
3.6. 以降の構成
第4章 場所格交替と評価的意味
4.1. 意味的韻律とは
4.2. 意味的韻律の論点を整理する
4.3. 事例研究:load
4.4. 事例研究:smear
4.5. 全体的解釈・状態変化・評価
4.6. 評価(評価的意味)の位置づけ
4.7. まとめ
第5章 場所格交替と構文の複合形
5.1. 構文の複合形
5.2. 仮想変化
5.3. Langackerの主体化
5.4. スル的言い回しと構文ネットワーク
5.5. 複合構文に見る慣習的表現
5.6. 構文の複合形の種類とその分析方法
5.7. まとめ
第6章 場所格交替とレシピ
6.1. 言語知識の一部としての料理表現
6.2. レシピで用いられる非交替動詞
6.3. レシピにおける省略
6.4. レシピの調査
6.5. 5つの問いに答える
6.6. 慣習性と話者の意識
6.7. 関連現象:目的語の省略と結果目的語
6.8. まとめ
第7章 非交替動詞が交替するとき
7.1. 創造的な言語使用としての代換
7.2. 構文と類推
7.3. 意図性と料理表現
7.4. 形容詞的受身
7.5. 慣習性の度合い
7.6. 先行研究との比較
7.7. 関連現象:under-Vとunder-V-ed
7.8. まとめ
第8章 英語の場所格交替に相当する日本語の表現
8.1. 料理表現と動詞
8.2. 調味動詞の抽出
8.3. 調味動詞の観察
8.4. 構文上の特徴と英語との比較
8.5. 動機づけと慣習性
8.6. まとめ
第9章 結語
9.1. 全体のまとめ
9.2. 本書の意義
9.3. おわりに
- 著者紹介
- 野中 大輔(のなか だいすけ)
2021年,東京大学大学院人文社会系研究科にて博士(文学)の学位を取得。現在,工学院大学学習支援センター講師。専門は英語学,認知言語学。本書にて第四回東京大学而立賞を受賞。
主要業績:『不確かな医学』(翻訳,朝日出版社,2018年),「打撃・接触を表す身体部位所有者上昇構文における前置詞の選択:hitを中心に」(『認知言語学を紡ぐ』,くろしお出版,2019年),「TED Talksのデータを検索して英語を学ぶ,教える,研究する:TED Corpus Search Engineの可能性」(『東京大学言語学論集』43,2021年),「実例から眺める「豊かな文法」の世界」(平沢慎也氏との共著,月刊誌『英語教育』の連載,2021–2022年),“Verbs of seasoning in Japanese, with special reference to the locative alternation in English”(The Language of Food in Japanese: Cognitive Perspectives and Beyond, John Benjamins, 2022年),「explainは交替するのか,しないのか:与格交替への使用基盤的アプローチ」(『ことばの謎に挑む:高見健一教授に捧げる論文集』,開拓社,2023年)。
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