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英語リーディングの認知科学

文字学習と多読の効果をさぐる

門田修平/高瀬敦子/川崎眞理子[著]

定価
2,420円(2,200円+税)
ISBN
978-4-87424-871-3 C1082
発売日
2021/11/26
判型
A5
ページ数
216頁
ジャンル
言語習得 ― 言語習得入門
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英語など第二言語のリーディングの習得をささえる認知プロセスについて、音韻符号化やワーキングメモリを中心に検討する。その上で小学校英語活動の文字学習や、英語の多読・多聴学習をどんな実践すれば効果的かについて解説する。

●まえがき 
 本書は、英語など第二言語のリーディングの習得をささえる認知プロセスについて検討しようとするもの・・・(全文を読む)です。中でもとりわけ、読みの入口にあたる文字言語のディコーディング(音韻符号化)や、読みの情報処理を支えるワーキングメモリシステムについて重点的に取り上げます。その上で、新たに導入された小学校英語活動・教育における文字学習と、英語の潜在的・非明示的習得を促進する多読・多聴学習をどのように実践すると効果的かについて解説したいと思います。
 著者のうち1人(門田)は、2001年に野呂忠司氏との共編著で、『英語リーディングの認知メカニズム』(くろしお出版)を上梓しました。英語リーディングの研究動向をまとめた、この前著の刊行から約20年が経過し、本書は当初、その改訂版の刊行という企画趣旨から、『新・英語リーディングの認知メカニズム』というタイトルを念頭に置いていました。しかし、英語リーディング研究の最新動向を、上記本と同様に1冊にまとめるとなると、今日では1000ページを超える大著となることが予想され、ほとんど現実的ではないと判断しました。
 その代わり、認知メカニズムとしては、入門期の文字認識から熟達したリーディングに至る発達過程や、文字インプットの音韻符号化とそれに対する音読の効果、リーディングを支えるワーキングメモリとそのトレーニング効果などに絞って、重点的に取り上げることにしました。そしてその成果の応用として、小学校英語活動・教育における文字学習の効果的方法を探り、大量のインプット処理を実現する多読・多聴学習の効果を、学習開始時から中、高、大を経て、その一里塚とも言うべき100 万語に至るまでたどり、成功に導く鍵について、これまで蓄積された実践について報告しています。以上のようなポイントを絞った扱いにすることで、リーディングにもとづく、英語、日本語など第二言語の習得に、今後どのような展望が開けるか、そのコアとなる部分を明らかにしようとしています。

関連情報

目次
序章 はじめに~本書がねらっているポイント~
1.リーディング(黙読)プロセスをシンプルに表現すると?
2.書きことば処理の抽象性:話しことばと対比して
3.リーディングにおける読み手依存の実態:読み手の眼球運動からわかること
4.本書のおおまかな内容構成

第2章 英語の文字と発音の関係:読みのボトムアップ処理再考
1.識字のしくみ
2.英語の識字のしくみ
3.読み能力の発達
4.読みの音韻符号化の障がいとしてのディスレクシア

第3章 音読が英文読解力をのばすしくみ:音読トレーニングのインプット効果
1.書かれた文を理解するしくみ(読み解くしくみ)とは?
2.書かれたテキストの理解と音声・音韻処理
3.リーディング(黙読)における音声リズムの役割:潜在的プロソディとは?
4.リーディング力をのばす音読学習:インプット効果

第4章 ワーキングメモリを鍛えることは第二言語リーディングに役立つか
1.はじめに:日常語になったワーキングメモリ
2.ワーキングメモリって何? どんなしくみがある?
3.第二言語ワーキングメモリ(L2 WM)モデル
4.実行系ワーキングメモリの神経機構
5.バイリンガル話者と実行系ワーキングメモリ
6.実行系ワーキングメモリの司令塔機能
7.リーディングにおける実行系ワーキングメモリ:批判的読み
8.ワーキングメモリトレーニングと第二言語習得
9.まとめ

第5章 入門期(小学校英語活動・教育)における文字学習
1.読み書き学習の前に
2.読み(書き)学習
3.識字の難しさへの理解と支援


第6章 英語習得に多読はどのような効果があるのか
1.はじめに
2.多読の必要性
3.英語に対する情意面の向上
4.多読学習による英語力向上

第7章 多読による英語習得の道筋
1.英語学習開始時の学習者:小学生
2.英語学習中期の学習者:中学生・高校生
3.大学生の多読
4.100万語多読

第8章 多読を成功に導く鍵は
1.Start with Simple Stories(SSS)
2.Sustained Silent Reading(SSR)
3.読書方法

終章 おわりに:リーディングベースのプラクティス
1.第二言語プラクティスにおけるメタ認知的モニタリング
2.第二言語習得の要としてのプラクティス
著者紹介
門田 修平(かどた しゅうへい)
関西学院大学・大学院教授 Tryon社フェロー(顧問) 博士(応用言語学)
専門は心理言語学、応用言語学。著書は、『SLA研究入門』(くろしお出版)、『英語上達12のポイント』(コスモピア)、Shadowing as a Practice in Second Language Acquisition(Routledge)、『音読で外国語が話せるようになる科学』(SBサイエンス・アイ新書)など多数。

髙瀬 敦子(たかせ あつこ)
岩野英語塾講師 博士 (教育学)
専門はTESOL。IBM勤務、英語教室経営、中学校・高等学校非常勤講師、近畿大学特任講師などを経て現職。Extensive Reading Foundation(国際多読教育学会)理事。 著書は『英語多読・多聴指導マニュアル』(大修館書店)、『話せる! 英語シャドーイング』(コスモピア)など。

川﨑 眞理子(かわさき まりこ)
新潟経営大学教授 博士(言語コミュニケーション文化)
専門は心理言語学、小学校英語。外資系企業秘書、英語教室経営、企業英語講師、関西学院大学助教を経て現職。著書は、『英語音読指導ハンドブック』(大修館)、『低学年から始める英語短時間学習 すぐに使える活動アイディアと単元展開』(教育出版)、大学教科書『Real Writing』(南雲堂)など。