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越境する日本語教師と教師研修

実践を省察するラウンドテーブル

池田広子/宇津木奈美子[編]

定価
1,980円(1,800円+税)
ISBN
978-4-87424-930-7 C3037
発売日
2023/3/24
判型
A5
ページ数
140頁
ジャンル
日本語教育 ― 日本語教師参考書
オンライン書店
amazon 楽天ブックス 紀伊國屋書店 丸善ジュンク堂書店  e-hon 

予め内容やテーマを決めて行わない「実践を省察するラウンドテーブル型日本語教師研修」。参加者からは、「このような機会がこれまでなかった。ここでは形にできないことを形にしている」「さまざまな経験や価値観を感じ、熱気に満ちていた」など、高い評価をうけている。その開催の背景、その理論及び、実践例を紹介する。


■まえがきより

本書・・・(全文を読む)では、「実践を省察するラウンドテーブル型日本語教師研修」によって、どのようなことが可能になるのかについて提案したいと考えています。これまで本研修に参加したことがない方に本研修のイメージを持っていただくだけでなく、すでに本研修に参加してくださった方にも研修で体験したことは何だったのかなどについて考えられる機会にできれば幸いです。本研修で目指しているのは、具体的には以下のとおりです。

(1) 実践を協働で丁寧に語り、聴くことによって実践から省察する力を培っていくこと。
(2) 参加した教師たちが互いに互いの学びを支え合うことによってできあがる人間関係を育むこと。
(3) 国内の様々なコミュニティ(大学・送り出し機関・日本語学校・EPAによる看護師など・年少者・NPO・ボランティア・ビジネスなど)や海外の日本語教育コミュニティとつながっていくこと。(中略)

本書では、当該研修の考え方を支える理論を紹介したうえで、これまで行ってきた本研修の具体的な実践例を書きました。本書を通して読者のみなさまの実践からの学びを下から支え、多くの日本語教育関係者を励まし、拠り所となれば幸いです。

関連情報

目次
第1章 実践を省察するラウンドテーブル型日本語教師研修とは
1-1 省察とは
1-2 実践を省察するラウンドテーブル型日本語教師研修のはじまり
1-3 ラウンドテーブルとは
1-4 日本語教育向けに考案した「実践を省察するラウンドテーブル型日本語教師研修」
1-5 なぜ、ラウンドテーブル型日本語教師研修は日本語教師に必要か
1-6 実践を省察するラウンドテーブル型日本語教師研修が目指していること
1-7 大人の学びに寄り添う:じっくり、ゆっくり、たっぷり語れる環境づくり
1-8 ラウンドテーブル型教師研修の特色
1-9 なぜ実践コミュニティが求められるのか

【理論編】
第2章 実践を省察するラウンドテーブル型日本語教師研修を支える3つの考え方—省察的実践、成人学習論、実践コミュニティ—
2-1 省察的実践
2-1-1 日本語教師教育における省察的実践
2-1-2 ラウンドテーブルに生かされているショーンの考え方
2-2 成人学習論
2-2-1 大人とは
2-2-2 なぜ、日本語教育に成人学習論が必要か
2-2-3 成人学習論の土台となる考え方
2-2-4 批判的ふり返り
2-2-5 ラウンドテーブルに生かされているメジローの考え方:3種のふり返り
2-2-6 意識変容の学習プロセス
2-2-7 成人学習における実践コミュニティと組織学習
2-3 実践コミュニティ

【実践編】
第3章 実践を省察するラウンドテーブル型日本語教師研修の全体像
3-1 日本語教育におけるラウンドテーブル型日本語教師研修の必要性
3-2 ラウンドテーブル型日本語教師研修の内容と進め方
3-3 ラウンドテーブル型日本語教師研修の構成メンバー
3-4 ラウンドテーブル型日本語教師研修の実際
3-5 ラウンドテーブル型日本語教師研修の話題提供の準備について
3-6 ラウンドテーブル型日本語教師研修の進め方
3-7 ラウンドテーブル型日本語教師研修の例
3-7-1 国内で開催されたラウンドテーブル型日本語教師研修の例
3-7-2 中国で行われたラウンドテーブル型日本語教師研修の例
3-7-3 ベトナムで行われたラウンドテーブル型日本語教師研修の例
3-8 中国とベトナムの現状とラウンドテーブル型日本語教師研修が必要とされた背景
3-8-1 中国の場合
3-8-2 ベトナムの場合
3-9 語り手と聴き手のふり返り

第4章 実践を省察するラウンドテーブル型日本語教師研修後の運営者によるふり返りの会
4-1 ラウンドテーブル型日本語教師研修後の運営者によるふり返りの会
4-2 ふり返りの会におけるファシリテーターの声
4-3 ファシリテーターの役割と力量形成

第5章 これまで行った実践を省察するラウンドテーブル型日本語教師研修の紹介
5-1 国内開催
5-2 海外開催
5-2-1 中国・北京ラウンドテーブル型日本語教師研修
5-2-2 中国・上海ラウンドテーブル型日本語教師研修
5-2-3 ベトナム・ハノイラウンドテーブル型日本語教師研修

第6章 越境学習としての実践を省察するラウンドテーブル型日本語教師研修—コミュニティを横断して学ぶ—
6-1 新たな現象
6-2 越境学習とは
6-3 越境による学びの事例紹介
6-4 国境を越えて学び合うことの意味や可能性
6-5 学び合うコミュニティ同士のつながり
著者紹介
池田広子(いけだ ひろこ)
編者/まえがき・第1~2章・第6章・おわりに
目白大学外国語学部日本語・日本語教育学科教授。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士課程修了。博士(人文科学)。立教大学講師などを経て現職。著作に『日本語教師教育の方法』(鳳書房、2007),『実践のふり返りによる日本語教師教育』(共著、鳳書房、2017),『新装版 商談のための日本語 中級』(共著、スリーエーネットワーク、2006),「実践を省察するラウンドテーブル型教師研修からの学びと可能性」(共著『日本語教育』183、2022)などがある。

宇津木奈美子 (うつき なみこ)
編者/第3~4章 
帝京大学帝京スタディアブロードセンター准教授。お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科博士課程修了。博士(人文科学)。専修大学非常勤講師などを経て現職。著作に『教科学習支援における母語支援者の当事者性獲得』(風間書房、2018)、『考える人の「上級」日本語読解』(共著、凡人社、2020)、論文に「CLD児散在地域における教育保障に向けた学校教育への挑戦のプロセス」(共著、『母語・継承語・バイリンガル教育(MBH)研究』17、2021)などがある。

尹 松 (いん しょう)
第3章・第5章
華東師範大学外国語学院日本学科准教授。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士課程修了。博士(人文科学)。首都師範大学講師などを経て現職 。著作に『日語聴力教学法的実証性研究』(上海訳文出版社、2005)、『日語聴解教程 第1–3冊』(共著、上海外語教育出版社、2008)、『日語聴力教程』(共著、華東理工大学出版社、2022)、論文に「パターン学習は理解を促進させるか」(『日本語教育』112, 35–44、2002)などがある。

佐野香織 (さの かおり)
第5章
長崎国際大学人間社会学部国際観光学科准教授。お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科博士課程修了。博士(人文科学)。早稲田大学講師などを経て現職。著作に『Steps in Japanese for Begginers 1・2 』(共著、早稲田大学日本語教育研究センター、2021)、『〈やさしい日本語〉と多文化共生』(共著、ココ出版、2020)などがある。