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幻の日本語ローマ字化計画

ロバート・K・ホールと占領下の国字改革

茅島篤[編]

定価
4,070円(3,700円+税)
ISBN
978-4-87424-737-2 C3081
発売日
2017/6/27
判型
A5
ページ数
280頁
ジャンル
言語政策 ― 言語政策専門
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 かつて,私たちの日本語の表記から,漢字とかなを取り去り,ローマ字に一本化してしまおうとする計画が持ち上がったことをご存じだろうか。
 この計画の急先鋒となったのが,GHQ/SCAP(連合国軍)のCI & E(民間情報教育局)の米軍士官,ロバート・K・ホール少佐(Robert K. Hall)である。
 本書は,ホールに関する・・・(全文を読む)代表的な史(資)料を通して,ホールの国語改革の全貌に迫ろうと試みるものである。ホールが何を考え,何を行ったのか,特に文部省と占領軍内部の双方にどういった軋轢と混乱をもたらし,どういう影響を戦後の国語改革に与えたのかを辿る。文献はホール来日前の占領軍による軍政下の「カタカナ専用提案」から,1981年6月に69歳で不帰の客となる,2か月前の4月に行われた貴重な最後のインタビュー記録までを収めた。
 ホールの計画・活動は一部の日本人からも認められていたが,反対派も多かった。戦後組閣後の各文部大臣,日本教育家委員会委員長といった日本の保守層のみならず,ホールにとっては身内であるはずのCI&E内にも反対勢力がいた。とりわけ,戦前に日本在住経験があった人々からは強硬な反発にあい,彼らと戦わなければならなかったのである。
 人間現象は複雑である。「事実は小説よりも奇なり」という。一つひとつの資料から読みとれる,あるいは聞こえてくる関係者たちの息づかいを感じながら,ふだん意識することなく使っている,私たちの日本語を巡る70年前の攻防に思いを馳せていただければ望外の幸せである。
(編者「序」より)

関連情報

目次
第1章 ロバート・K・ホール来日前の日本語表記改革関連文書
1.ホールの提言とその評価
(1)カタカナのみを公用日本語表記とする提言
(2)J・H・ヒルドリングから国務省ユージン・H・ドゥーマン宛の文書
(3)ユージン・H・ドゥーマンから J・H・ヒルドリング宛の返信
2.ホールの反論と再提言
(1)公式日本語表記としてのカナの使用
(2)ロバート・K・ホールからダン・ファヒー中佐宛の文書
(3)ウィーラー・グレイ中佐からダン・ファヒー中佐宛の文書

第2章 米国教育使節団への国語改革関連文書
1.ドナルド・R・ニューゼント中佐(総司令部CI & E局長代理)覚書
ドナルド・R・ニューゼント中佐から国語改革担当官ロバート・K・ホール少佐宛の文書
2.対日米国教育使節団へのオリエンテーション 国語改革 講義録
(1)ロバート・K・ホール少佐
(2)安藤正次
3.「暫定的研究-国語表記改革研究」から採録の資料
4.ロバート・K・ホールの日本語ローマ字化5ヶ年計画案

第3章 国語改革方針転換となった文書
1.CI & E 特別会議 想定問答文書
2.CI & E 特別会議 議事録
3.ホールの部下,国語改革担当官ドーンハイムの両親宛手紙抜粋

第4章 ロバート・K・ホールの回想録・インタビュー記録
1.回想録「漢字かローマ字か」
○文字言語の問題点
○表意文字という重荷 
○日本人に読み書き能力はつくか
○試みと失敗 急襲と警報
○中国からの借字を維持できるか 
○音声表記は実用的か 
○どの表記法が最も優れているか 
○ローマ字への移行方法はどれが最良か
○音素表記で武装した国民 

2.論文「戦後日本の発展に於ける教育-国語改革再考-」
I 米国対日教育使節団 
II 国語改革 
3.インタビュー記録(オーラル・ヒストリー)

第5章 ロバート・K・ホールの人物像 
1.CI & Eの主な関係者評 
マーク・T・オア自身(Mark T. Orr)
ロバート・キング・ホール(Robert King Hall)
ケネス・リード・ダイク(Kenneth Reed Dyke)
ドナルド・R・ニューゼント(Donald R. Nugent)
ハロルド・G・ヘンダーソン(Harold G. Henderson)

2.山崎匡輔の回想録に見るホール像 
ローマ字化問題起る! 
安倍能成氏文相に就任
著者紹介
茅島 篤
教育学博士(コロンビア大学),コロンビア大学教育大学院博士課程・東アジア研究所研究科修了。工学院大学教員,早稲田大学講師,ハーバード大学大学院・スタンフォード大学客員研究員,公益財団法人日本のローマ字社理事長等を務める。文化庁国語施策百年史編集委員会執筆委員。単著『国字ローマ字化の研究 改訂版─占領下日本の国内的・国際的要因の解明─』(文部省科研費補助「一般学術図書」,風間書房,2009),編著『日本語表記の新地平─漢字の未来・ローマ字の可能性─』(くろしお出版,2012)ほか著作・論文多数。