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新刊

複言語教育の探究と実践

西山教行/大山万容[編]

定価
2,860円(2,600円+税)
ISBN
978-4-87424-942-0 C3080
発売日
2023/5/10
判型
A5
ページ数
192頁
ジャンル
言語政策 ― 言語政策専門
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紀伊國屋書店 丸善・ジュンク堂書店・文教堂

2001年に欧州評議会によってCEFRが発表され、日本でも複言語教育が論じられるようになった。複言語教育の考え方をめぐる概念に関する論考、及び、日本での複言語教育の実践や構築のための文脈を明らかにする論考を収録。

■まえがきより
第1章(西山論文)はCEFRの増補版が出てから特に注目されるようになったmediationの概念・・・(全文を読む)について,これを単なる外国語教育の概念から学校教育における概念へと発展させた論考を元に,その意義を論じる。続く第2章(カヴァリ論文)は学校教育の中の言語の多層性について明らかにするもので,教育の複言語主義を検討することにより,教育における言語そのものの解像度を上げるものである。第3章(奥村論文)はCEFRの提唱する複言語主義の意義をわかりやすく提示するとともに,個別の言語教育もその言語の習得だけを目指すべきではなく,包括的なことばの教育として,学習者の持つ言語レパートリーに基づいて行うべきであるとの複言語教育の根本的価値を明らかにする。第4章(大木論文)は複言語・異文化間教育には多様性を創造性に結びつける仕組みがあることを明解に論じる。これはCEFRやCARAPに見られる能力記述文の解像度を上げるものである。第5章(西島論文)はイタリアにおける複言語主義の展開について検討し,各国の採用する複言語教育の発展にはそれぞれの事情があり,教育理念は常に文脈の上に構築されることを知らしめる。

第6章(モーア論文)は,日本の小学校で実践されている複言語教育を事例として,言語と内容の学習目標を組み合わせ,カリキュラムと教育計画を概念化し,様々な教育関係者を結びつける方法として,CLILに替わるPASTELを提案する。第7章(森論文)は国語科教育と外国語教育の接続の可能性を国語科の成立の経緯と視点から丁寧に論じるもので,教科担任制の始まる中等教育において複言語教育の実践を目指すうえで検討すべき論点を明らかにする。第8章(山本論文)は大学の一般教育における複言語教育の実践から,その効果と日本における意義について詳しく描き出す。第9章(カンドリエ&大山論文)は複数の言語学習を学習者が「統合できる」ように促すための教授法(統合的教授法)について論じるとともに,日本の大学で行われる初修外国語の教室での実践を報告する。

関連情報

目次
第1章
複言語教育のなかの「媒介」の多義性
西山教行

第2章
就学言語と複言語―教科ごとの知の構築における言語の役割と機能―
マリザ・カヴァリ/倉舘健一(訳)

第3章
日本語教育と複言語教育の接続―日本語教育にもたらす課題とインパクト―
奥村三菜子

第4章
複言語・異文化間教育の新しい展開―「多様性の創造性」とCARAP―
大木充

第5章
イタリアの言語教育政策に見るplurilinguismoと複言語主義―イタリア人生徒と外国人生徒の教育政策の比較から―
西島順子

第6章
複言語主義と領域横断性―学校でのPASTELアプローチ―
ダニエル・モーア/大山万容(訳)

第7章
日本における国語教育と外国語教育の接続における課題
森篤嗣

第8章
教室に、自分のなかに、複数言語を響かせる―言語の等価性に関する認識へ―
山本冴里

第9章
構築中の複言語レパートリーを活かす統合的教授法―日本の大学でのフランス語教育を事例として―
ミッシェル・カンドリエ/大山万容
著者紹介
西山 教行(にしやま のりゆき)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授。日本フランス語教育学会会長。

大山 万容(おおやま まよ)
大阪公立大学文学研究院講師。

Marisa Cavalli (マリア・カヴァリ)
イタリア・アオスタでの中学校フランス語教師を経て,アオスタ渓谷地域教育研究所(IRRE-VDA)へ出向,その後,欧州評議会を含む様々な国際的研究プロジェクトに専門家として従事。

倉舘 健一(くらだて けんいち)
慶應義塾大学総合政策学部講師。専門は,言語教育学,フランス語教育学,メディア教育学,フランス語教育史研究。

奥村 三菜子(おくむら みなこ)
NPO法人YYJ・ゆるくてやさしい日本語のなかまたち,副理事。

大木 充(おおき・みつる)
京都大学大学院人間・環境学研究科名誉教授。

西島 順子(にしじま よりこ)
大分大学教育マネジメント機構国際教育推進センター講師。

Danièle Moore (ダニエル・モーア)
カナダ・サイモン・フレイザー大学卓越教授。フランス・ソルボンヌ大学(パリ第3大学)研究主任(DILTEC-EA2288)。

森 篤嗣(もり あつし)
京都外国語大学外国語学部教授。

山本 冴里(やまもと・さえり)
山口大学国際総合科学部・東アジア研究科教員。

Michel Candelier(ミッシェル・カンドリエ)
フランスのル・マン大学名誉教授(言語教育学)