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「移動する子ども」学

川上郁雄[著]

定価
3,080円(2,800円+税)
ISBN
978-4-87424-855-3 C0080
発売日
2021/3/16
判型
A5
ページ数
296頁
ジャンル
日本語教育 ― 日本語教育専門書
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紀伊國屋書店 丸善・ジュンク堂書店・文教堂

「移動する子ども」学という新しい学問領域を提案。幼少期より複数言語環境で成長したという経験や記憶によって、どのようにアイデンティティが形成されるのか。移動性・複文化性・複言語性のリアリティを大胆かつ斬新に切り拓く。

研究者にとっては今後の研究の道標として、一般読者にとっては「移動する子ども」の経験や記憶をたどる読みごたえのあ・・・(全文を読む)る読み物として、手にとってほしい一冊。

■「序」より
 本書は、新しい学問領域として「移動する子ども」学を提案する。
 「移動する子ども」とは、目の前の生きている子ども(実体概念)ではなく、幼少期より複数言語環境で成長したという経験と記憶を中心に持つ分析概念である。その分析概念には、「空間」「言語間」「言語教育カテゴリー間」の移動経験の貯蔵庫が3つあり、それらが相互に影響しつつ重なり、記憶が形成されていく。また、「今、ここ」の日常的移動の横軸と、「あの時そしてこれから」という過去と未来を繋ぐ個人史的移動の縦軸を持つ。幼少期から複数言語環境で成長する人の生を捉え、理解するには、このような分析概念としての「移動する子ども」が有効である。
「移動」と「ことば」というバイフォーカルな視点に立つ「移動する子ども」学は、必然的に、既存の学問領域の視点と研究方法と微妙にズレた視点を取ることなり、結果として、既存の学問領域を超えた学問領域を創出することになろう。それは、新たな子ども理解や、認識枠組み、成長と記憶、人の主観的な意味世界を探究することになり、21世紀に生きる人々の移動性、複文化性、複言語性のリアリティを明らかにすることになろう。

関連情報

目次
序 なぜ「移動する子ども」学なのか
第1章 「移動する子ども」という記憶と社会
第2章 「移動する子ども」というフィールド
第3章 ことばとアイデンティティ―複数言語環境で成長する子どもたちの生を考える
第4章 名付けと名乗りの弁証法―くくり方を解体する
第5章 「移動する子ども」学の研究主題とは何か―複数言語環境で成長する子どもと親の記憶と語りから
第6章 「ことばの力」と「ことばの教育」―子どもの日本語教育のあり方を問う
第7章 「移動とことば」を昇華する―温又柔を読む
第8章 モバイル・ライブズを生きる―岩城けいの物語世界を読む
第9章 海に浮かんでいる感じ―モバイル・ライブズに生きる若者の語り
第10章 記憶と対話する―ある女性の半生の「移動する子ども」という記憶
第11章 人生とことばの風景―映画監督崔洋一のことばをめぐる語り
第12章 展望―実践の学としての「移動する子ども」学
著者紹介
川上郁雄(かわかみ いくお)
早稲田大学大学院日本語教育研究科教授
オーストラリア・クイーンズランド州教育省・日本語教育アドバイザー(国際交流基金派遣日本語教育専門家)、宮城教育大学教授等を経て、2002年より現職。博士(文学、大阪大学)。専門は、日本語教育、文化人類学。

主編著に、『越境する家族—在日ベトナム系住民の生活世界』(2001、明石書店)、『「移動する子どもたち」と日本語教育—日本語を母語としない子どもへのことばの教育を考える』(編著、2006、明石書店)、『「移動する子どもたち」の考える力とリテラシー—主体性の年少者日本語教育学』(編著、2009、明石書店)、『海の向こうの「移動する子どもたち」と日本語教育—動態性の年少者日本語教育学(編著、2009、明石書店)、『私も「移動する子ども」だった—異なる言語の間で育った子どもたちのライフストーリー』(編著、2010、くろしお出版)、『「移動する子どもたち」のことばの教育学』(2011、くろしお出版)、『「移動する子ども」という記憶と力—ことばとアイデンティティ』(編著、2013、くろしお出版)、『日本語を学ぶ/複言語で育つ—子どものことばを考えるワークブック』(共著、2014、くろしお出版)、『公共日本語教育学—社会をつくる日本語教育』(編著、2017、くろしお出版)、『移動とことば』(共編著、2018、くろしお出版)、『探究型アプローチの大学教育実践—早大生が「複言語で育つ子ども」を考える授業』(2020)くろしお出版、など。