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新刊

二字漢語の透明性と日本語教育への応用

本多由美子[著]

定価
5,720円(5,200円+税)
ISBN
978-4-87424-889-8 C3081
発売日
2022/2/24
判型
A5
ページ数
336頁
ジャンル
日本語教育 ― 日本語教育専門書
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紀伊國屋書店 丸善・ジュンク堂書店・文教堂

二字漢語の意味とその構成漢字の意味との対応関係に着目。その関連性の度合いを「透明性」と定義し、多数の二字漢語の透明性を明らかにする。またその調査結果から日本語教育での教材案を提案する。今後の漢字教育に大きく資する書。

■「はじめに」より
近年、日本語教育では母語の文字体系に漢字を持たない学習者の割合が増加している。(中略)
・・・(全文を読む)母語の文字体系に漢字を持たない学習者にとって、漢字学習は日本語の学習で困難を感じる点の1つに挙げられる。表記体系に平仮名、片仮名、漢字の3種類の文字が用いられる日本語において、漢字は実質語を表す。そのため、漢字は文章を理解する際の支えになる。しかし、常用漢字は2,000字以上あり、また複数の漢字を組み合わせて形成される語はそれ以上の数があるという「数の多さ」は学習者にとって大きな負担となっている。
本研究ではこの困難点に関し、二字漢語の透明性、すなわち、二字漢語の中には、二字漢語の意味とその構成漢字の意味が対応して結びつくものと結びつきにくい語があることに着目する。漢字は表語文字とも呼ばれ、1字ごとに意味を持つ一方で、漢字2字から成る二字漢語は語としての意味を持つ。「国外」や「飲酒」のように語の意味と構成漢字の意味が結びつくものがある一方で、「経済」や「精神」のように、現在用いられている一般的な意味では、構成漢字ごとに分解して語の意味を捉えることが難しい語もある。漢字の意味を理解する目的は語の意味を理解することであるとすれば、漢字教育を考えるためには、漢字のみならず、語にも注目し、造語成分としての漢字の教育を考えることが重要である。

関連情報
【誤植・修正】
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 → http://www.9640.jp/MATERIALS/889/889_errata_ver.1.pdf

ご迷惑をおかけし、お詫び申し上げます。
目次
はじめに
・背景:日本語教育における学習者層の変化と日本語教育
・二字漢語の透明性
・日本語学における「二字漢語の透明性」
・本研究の特徴
・本研究の構成

第1部 二字漢語の透明性の実態

1章 「二字漢語の透明性」とは
1.1 はじめに
1.1.1 本章の概要
1.1.2 本研究の研究対象
1.2 先行研究
1.2.1 語の有縁性と透明性
1.2.2 二字漢語の有縁性
1.2.3 専門語における漢語の透明性
1.2.4 二字漢語の意味とその構成漢字の意味の関連性
1.2.5 漢字の表意機能
1.3 本研究における「二字漢語の透明性」
1.3.1 本研究における定義
1.3.2 透明性の3分類と漢語
1.3.3 漢語の透明性と日本語教育

2章 辞書の記述に基づく二字漢語の透明性
2.1 本章の概要
2.2 調査課題
2.3 先行研究
2.4 調査方法と手順
2.4.1 方法:辞書の語義の説明を利用する方法
2.4.2 調査対象とする二字漢語
2.4.3 二字漢語と構成漢字の抽出方法
2.4.4 使用した辞書
2.4.5 調査対象とする語義と複数の語義の扱い
2.4.6 調査手順
2.4.7 調査方法の検証
2.5 結果と考察
2.5.1 分析1:書き言葉における高頻度語の透明性の割合
2.5.2 
分析2:旧日本語能力試験の語彙における二字漢語の透明性の傾向
2.5.3 分析3:母語話者の判断による透明性との比較
2.6 本章のまとめと課題
2.6.1 本章のまとめ
2.6.2 本章の課題

3章 学習者と母語話者による透明性の判断傾向の相違
3.1 本章の概要
3.2 調査課題
3.3 先行研究
3.4 調査概要と手順
3.4.1 調査の概要
3.4.2 調査の手順
3.4.3 調査対象語の選択
3.4.4 調査協力者
3.4.5 質問項目
3.4.6 調査方法
3.5 全体の調査結果
3.5.1 学習者の既知語数
3.5.2 結びつく場合の意味に見られた回答
3.6 分析1:二字漢語の透明性の判断における相違
3.6.1 学習者のグループ分け
3.6.2 透明性の判断傾向の比較
3.7 
分析2:二字漢語とその構成漢字の意味の結びつきの判断における相違
3.7.1 学習者のグループ分け
3.7.2 調査対象語(30語)各語における既知の人数
3.7.3 意味の結びつきにおける判断傾向の比較
3.7.4 学習者と母語話者で判断の傾向が似る漢字と異なる漢字
3.7.5 
二字漢語の意味とその構成漢字の意味とが結びつく際の意味の比較
3.8 本章のまとめと課題
3.8.1 二字漢語の透明性の判断における相違
3.8.2 二字漢語とその構成漢字の意味の結びつきの判断における相違
3.8.3 日本語教育への示唆
3.8.4 分析の課題
3.8.5 調査方法の課題
3.8.6 二字漢語とその構成漢字の提示の順番における課題
3.8.7 尺度法との違い

4章 意味の結びつきと出現頻度による構成漢字の分析
4.1 はじめに
4.1.1 本章の概要
4.1.2 構成漢字の結付率と出現頻度による特徴
4.2 分析方法と調査課題
4.3 先行研究
4.4 調査概要と手順
4.4.1 調査概要
4.4.2 調査データ
4.4.3 調査手順
4.4.4 二字漢語における構成漢字の意味
4.5 分析1:母語話者の結付率の高低によって分類した構成漢字の特徴
4.5.1 グループ2(母語話者の結付率が30%未満)の構成漢字
4.5.2 グループ1(母語話者の結付率が100%)の構成漢字
4.6 分析2:学習者下の結付率の高低によって分類した構成漢字の特徴
4.6.1 グループ3(学習者下の結付率が90%以上)の構成漢字
4.6.2 グループ4(学習者下の結付率が30%未満)の構成漢字
4.7 結付率と出現頻度による構成漢字の分類の試み
4.7.1 母語話者と学習者下の結付率の関係
4.7.2 構成漢字の分類の目安
4.7.3 分類結果
4.8 本章のまとめと課題
4.8.1 本章のまとめ
4.8.2 本章の課題

5章 二字漢語とその構成漢字の意味の結びつきにおける「仲介語」の検討
5.1 はじめに
5.1.1 本章の概要
5.1.2 2章の調査における仲介語
5.2 仲介語に関する先行研究
5.2.1 漢字の表意機能の分析からの指摘
5.2.2 二字漢語の語構成の分析からの指摘
5.2.3 二字漢語の造語法の分析からの指摘
5.2.4 先行研究間の相違点
5.2.5 先行研究と本研究の相違点
5.3 本章における仲介語
5.3.1 
構成漢字の意味と二字漢語の意味が結びつく際に仲介語が用いられるパターン
5.3.2 母語話者の透明性の判断における仲介語(3章調査より)
5.3.3 
二字漢語とその構成漢字の意味の結びつきにおける仲介語の機能
5.4 仲介語と日本語教育
5.5 本章の調査課題
5.6 調査方法と手順
5.6.1 辞書の記述を用いる方法
5.6.2 使用した辞書および辞書説明文
5.6.3 調査データ
5.6.4 調査手順
5.7 結果:調査対象漢字とその仲介語率
5.7.1 調査対象漢字
5.7.2 仲介語率による調査対象漢字の分類
5.8 分析1:仲介語を表す構成漢字の位置の傾向
5.9 分析2:仲介語として多く用いられる語
5.9.1 仲介語の語数
5.9.2 
仲介語と意味が対応する二字漢語数および仲介語の掲載辞書冊数
5.9.3 多くの二字漢語の意味と対応する仲介語
5.9.4 二字漢語1語当たりの掲載辞書数が多い仲介語
5.9.5 
1字目と2字目の両方の漢字が二字漢語の意味と対応する仲介語
5.10 分析3:構成漢字と仲介語の意味の関係
5.10.1 「分類語彙表DB」を用いた分析方法
5.10.2 構成漢字と仲介語の中項目一致の例
5.10.3 
「分類語彙表DB」による仲介語と構成漢字の意味の一致の程度
5.10.4 「分類語彙表DB」の中項目が一致しない仲介語と構成漢字
5.11 分析4:二字漢語と仲介語の頻度の関係
5.12 本章のまとめ
5.12.1 仲介語の特徴
5.12.2 二字漢語とその構成漢字の意味の結びつきの関係
5.13 本章の課題
5.13.1 仲介語の設定の課題
5.13.2 調査方法と分析の課題

6章 高頻度の二字漢語の透明性と表記の傾向
6.1 はじめに
6.1.1 本章の概要
6.1.2 二字漢語の透明性と表記
6.2 先行研究
6.3 本章の研究課題
6.4 調査方法
6.4.1 調査データ
6.4.2 調査対象の二字漢語
6.4.3 集計方法1:表記の分類
6.4.4 集計方法2:二字漢語の透明性の分類
6.4.5 手順
6.5 結果
6.5.1 全体の漢字表記の傾向
6.5.2 品詞別の漢字表記の傾向
6.5.3 漢字表記率と透明性との関係
6.6 副詞の表記と透明性の傾向
6.6.1 高頻度順上位3,000までの副詞の表記と透明性
6.6.2 レジスターによる表記の違い
6.7 本章のまとめと課題
6.7.1 まとめ
6.7.2 今後の課題

7章 二字漢語の透明性の通時的変化
7.1 はじめに
7.1.1 本章の概要
7.1.2 透明性の通時的変化
7.2 宮島(1969)による「郵便報知」と「雑誌90種」の比較
7.3 調査課題
7.4 宮島(1969)の調査方法
7.5 本章の調査方法と手順
7.5.1 調査データ
7.5.2 調査対象の二字漢語と漢字
7.5.3 手順
7.5.4 略語の扱い
7.6 結果1:「雑誌90種」と「新聞」の比較(表7-5,表7-6)
7.7 結果2:「雑誌90種」と「知恵袋」の比較(表7-7,表7-8)
7.8 結果3:「郵便報知」と「雑誌90種」,「雑誌90種」以降の比較
7.8.1 比較方法
7.8.2 比較結果
7.9 結果4:「雑誌90種」以降の「訓による用例」の減少傾向の検討
7.10 本章のまとめと課題
7.10.1 本章のまとめ
7.10.2 本章の課題

第2部 二字漢語の透明性の日本語教育への応用

8章 二字漢語の透明性の活用による負担軽減の方法
8.1 本章の概要
8.2 先行研究における二字漢語の透明性の記述
8.3 本章の研究課題
8.4 二字漢語の総合的理解と透明性
8.4.1 学習者と母語話者の判断傾向の相違(第1部3章の結果より)
8.4.2 二字漢語の意味,構成漢字の意味,透明性の三者の関係
8.5 漢字教育における「数の多さ」による学習者の負担
8.5.1 漢字学習を困難にする要因
8.5.2 本研究での「数の多さ」の捉え方
8.6 「数の多さ」の負担軽減を目的にした先行研究
8.6.1 漢字に学習の優先度をつける研究
8.6.2 「字形の複雑性」による負担を軽減することを目的とした研究
8.6.3 一度に学習する内容を減らすことによって負担軽減を図る研究
8.7 二字漢語の透明性による負担軽減の方法
8.8 本章のまとめ

9章 透明性の調査結果を活用した学習案の検討
9.1 本章の概要
9.2 本研究における二字漢語の透明性を活用した負担軽減の方法
9.3 本章の研究課題
9.4 「結付率と出現頻度による構成漢字の分類の試み」(4章)の活用
9.4.1 「構成漢字の分類」(4章4.7表4-6,表4-8)の概要
9.4.2 結付率による「学習の順序」の案
9.4.3 分類別に見た「漢字1字の学習内容」の案
9.5 仲介語の検討結果の活用
9.5.1 5章での仲介語の設定
9.5.2 仲介語の漢字教育への活用
9.5.3 「漢字教育に活用できる仲介語リスト」の作成
9.5.4 リスト作成の手順
9.5.5 作成結果1:語数
9.5.6 作成結果2:多くの二字漢語に用いられる仲介語
9.5.7 「漢字教育に活用できる仲介語リスト」の利用方法と課題
9.6 本章のまとめ
9.7 本章の課題

10章 二字漢語の透明性リストの作成
10.1 本章の概要
10.2 先行研究
10.3 研究課題
10.4 透明性リストに掲載する情報
10.5 調査方法と手順
10.5.1 調査方法
10.5.2 二字漢語とその構成漢字の意味の結びつきの分類方法
10.5.3 調査対象語と漢字
10.5.4 調査対象から除外した語
10.5.5 使用した辞書
10.6 二字漢語の透明性の分類
10.6.1 分類の手順
10.6.2 
本リストにおける「二字漢語とその構成漢字の意味の結びつき」の捉え方
10.7 作成結果
10.7.1 調査対象語数と調査対象漢字数
10.7.2 二字漢語の透明性の3分類と構成漢字の結付率
10.8 リストの情報の活用案
10.8.1 市販の漢字教材と組み合わせた利用案
10.8.2 学習目標の語に対する漢字教育での利用案
10.8.3 読解活動を通じた語彙教育
10.9 本章のまとめ
10.10 本章の課題
10.10.1 意味の結びつきの判断における課題
10.10.2 リスト作成の課題
10.10.3 学習者の下位群を想定した透明性リスト

11章 透明性を利用した「初級漢字語リスト」の教材案
11.1 はじめに
11.1.1 本章の概要
11.1.2 教材案作成の背景
11.2 本章の研究課題
11.3 本教材案における語とその構成漢字の意味の結びつき
11.3.1 語と漢字表記を結びつける「要素語」
11.3.2 学習者の既習の知識の活用
11.4 作成手順
11.4.1 初級漢字語の選定
11.4.2 「初級漢字語リスト」の作成
11.5 教材案の作成
11.5.1 各テーマの基本的な練習の流れ
11.5.2 語と漢字の意味が結びつきにくい語(資料11-2 7)
11.6 応用練習とリストの活用
11.6.1 漢字の読みへの応用
11.6.2 未習の語への応用
11.6.3 「初級漢字語リスト」の活用
11.7 本章のまとめと課題
11.7.1 本章のまとめ
11.7.2 本章の課題

おわりに:まとめ,今後の課題・展望
・本研究で明らかなったこと
・二字漢語の透明性の活用案として示したこと
・本研究の課題
・今後の展望

引用文献
調査資料
初出一覧
あとがき
事項索引
漢字・漢字語彙索引
著者紹介
本多由美子(ほんだ ゆみこ)
一橋大学大学院言語社会研究科博士後期課程修了。博士(学術)。
千駄ヶ谷日本語教育研究所専任講師、千駄ヶ谷日本語学校教務主任、国際交流基金日本語試験センターアシスタントを経て、現在、国立国語研究所研究系日本語教育研究領域プロジェクト非常勤研究員、東洋大学非常勤講師、一橋大学非常勤講師、相模女子大学非常勤講師。
研究分野は、日本語教育、漢字教育、語彙教育、語彙。