AIで言語教育は終わるのか?

新刊

AIで言語教育は終わるのか?

深まる外国語の教え方と学び方

李在鎬/青山玲二郎[編]

定価
3,960円(3,600円+税)
ISBN
978-4-8011-1012-0 C3081
発売日
2025/5/23
判型
A5
ページ数
272頁
ジャンル
日本語教育 ― 日本語教育専門書
オンライン書店
amazon 楽天ブックス 紀伊國屋書店 丸善ジュンク堂書店  e-hon 

人工知能(AI)の進歩により言語教育が大きく変わろうとしている現状をふまえ、言語教育とAIとの共生について理論と実践の両面から検討し、AI活用の多角的かつ新たな視点や実践のヒントを提供する。

関連情報
【誤植・修正】
第1刷(2025年5月)にて、下記のとおり誤植がありました。お詫びして訂正いたします。

p.262   奥付
(誤)著者 李在鎬・青山玲二郎
(正)編者 李在鎬・青山玲二郎
目次
■ 理論編 ■
第1章 AIとこれからの言語教育 李 在鎬
1. AIと言語教育
2. 言語教育における新しい課題
3. これからの言語教育を考えるための3つのヒント
4. AI時代の言語能力観
5. 最後に

第2章 AIと言語研究 長谷部陽一郎
1. はじめに
2. AIと文法性
3.  AIによる言語現象の理解と判断
4. AIとのコミュニケーションと記号接地
5. 終わりに

第3章 言語商品化論からみる外国語教育のゆくえ 青山玲二郎
1. はじめに
2. 言語商品化とはなにか
3. 外国語教育の変遷:国のプライドから個人のプロフィットへ
4.  言語や外国語教育は本当に商品化しているのか?
5. 生産・労働の過程を見つめ直す
6. AIを活用した外国語教育で何を研究すべきか
7. AI時代における教師と学習者の役割

第4章 AIの言語生成と人間の言語使用の違い 柳瀬陽介
1. はじめに
2. 平均的な人間存在
3. AIは平均的な人間の言語生成能力を超える
4. 実存的な人間存在
5. AIは実存的な言語使用を代替できない
6. AIを自己実現のための補助手段として使う

第5章 AI使用と教師の意思決定 山田智久
1. はじめに
2. 教師のビリーフ
3. テクノロジーの普及
4. 技術受容モデル
5. AIと日本語教師~2名の教師の事例から~
6. 終わりに

■ 実践編 ■ 
第6章 AIとCLIL  大木 充
1. はじめに
2. 外国語教育・学習でAIを用いることについての論点
3. 教科書開発の経緯
4. なぜCLILか
5. CLILの壁
6. AIとCLILはベストマッチ
7. CLILの壁を低くするためのもうひと工夫
8. まとめにかえて

第7章 AIと語彙学習 李 羽喆
1. はじめに
2. Mobile-Assisted Language Learning(MALL)と語彙学習
3. 調査1:語彙検索ツールの進化と生成AIとの組み合わせ
4. 調査2:生成AIによるツールの変化に対する学習者の態度
5. 生成AIの時代における語彙教育の新たな可能性と挑戦
6. まとめ

第8章 AIとライティング教育 水本 篤
1. 応用言語学におけるChatGPT利用の現状
2. 英語ライティング教育における生成AIの活用と効果
3. 生成AIを英語ライティング指導で活用するために必要な予備知識
4. 終わりに

第9章 AIと音声技術を用いた音声教育 峯松信明
1. はじめに
2. KGUにおける聴取力・発話力向上策
3. UTE向けカスタマイズ
4. STEACの実施と効果及び学習者の評価(2023年)
5. ChatGPTとの英会話環境の構築と導入(2024年)
6. まとめ

第10章 AIとの音声会話 相場真由子・峯松信明
1. はじめに
2. 大規模言語モデルの活用方法
3. 発表論文に対する質問生成実験
4. 実装したシステム
5. STEAC授業内での取り組み
6. まとめ

■ 報告とコラム ■ 
報告1 台湾における日本語教育のAI・DX技術の利活用 曾 秋桂
1. はじめに
2. ChatGPTとメタバースを教育現場への利活用
3. ChatGPTとメタバースをライティング教育の「日文習作(二)」に導入したクリエイティブ授業の形成
4. ChatGPTとメタバースを導入したクリエイティブライティング教育の実践例
5. おわりに

報告2 韓国における日本語教育のAI活用 検校裕朗
1. はじめに
2. 韓国における生成AIを活用した日本語(教育)の先行研究
3. 実践の背景
4. 生成AIを活用した日本語スピーチ授業の実践
5. おわりに

【コラム1】 大規模言語モデル 淺尾仁彦
1. はじめに
2. 大規模言語モデルとは
3. 大規模言語モデルの仕組み
4. 大規模言語モデルを支える技術
5. 大規模言語モデルの限界と課題

【コラム2】 プロンプトエンジニアリング 李在鎬
1. はじめに
2. プロンプトエンジニアリングの構成要素
3. プロンプトエンジニアリングの事例

【コラム3】 外国語学習者のプロンプトスキル 小田登志子
1. はじめに:その英語(学習言語)は自分に合っているか
2. 生成AIは学習者のことを知らない
3. 学生が使用したプロンプト
4. 外国語学習者のプロンプトスキルに必要なこと
5. 最後に

【コラム4】 AIと日本語学習者 毛利貴美
1. はじめに
2. 日本語学習者が生成AIの利用を肯定的に捉えていた点
3. 日本語学習者が生成AIの利用を否定的に捉えていた点
4. 日本語学習者自身による主体的な学びの重要性への気づき
5. 生成AI時代に求められる教師の役割と今後の課題

【コラム5】 AIと自動採点 石井雄隆
1. はじめに:説明可能なAIと自動採点
2. 生成AI時代の自動採点
3. AIと共生する自動採点

【コラム6】 AIと著作権 我妻潤子
1. はじめに
2. 著作権の基本原則
3. AIの役割
4. 著作権の持つ意味
5. 法制度の整備
6. おわりに

【コラム7】 言語の多様性と新技術 青山玲二郎
1. はじめに:言語の多様性
2. 大規模言語モデルと英語中心主義
3. 強化学習と人間の価値観
4. 新技術による多言語主義

エピローグ 小山 悟
著者紹介
相場真由子(あいば・まゆこ)
東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻 修士課程在学中(2025 年現在)。主な業績として「GPT-based simulation of oral Q&A to aid students attending first conference」(2024, JALTCALL2024),「国際会議における質疑応答練習を目的とした ChatGPT による質問生成とその評価」(2024, 言語処理学会第 30 回年次大会)他。
【本書での担当 : 第 10 章】

青山玲二郎(あおやま・れいじろう) 
香港中文大学・上級講師。北京大学博士課程修了。博士。香港人類学会会長。主な業績として『Brush Conversation in the Sinographic Cosmopolis: Interactional Cross-border Communication Using Literary Sinitic in Early Modern East Asia』(2021, Routledge, 共編),『リンガフランカとしての日本語』(2020, 明石書店, 共編),『东亚跨国自我认同 : 当代在华日本人社会的人类学研究』(2019, 復旦大学出版社, 単著),『世界に広がる日本の職人』(2017, 筑摩新書, 単著)他。
【本書での担当 : 全体企画・編集、第 3 章とコラム 7】

淺尾仁彦(あさお・よしひこ)
情報通信研究機構(NICT)データ駆動知能システム研究センター・主任研究技術員。Ph.D.(言語学)。主な業績として『認知音韻・形態論』(2013 年, くろしお出版, 共著),『言語研究のための Python 活用術』(2025, 開拓社)他。
【本書での担当 : コラム 1】

我妻潤子(あづま・じゅんこ)
東京藝術大学・非常勤講師。株式会社 IPRhino 代表取締役。早稲田大学大学院法学研究科知的財産法 LL.M. 修了。修士(先端法学)。主な業績として「図書館を取り巻く著作権の現状(前・中・後編)」(日本農学図書館協議会誌, 203 号~ 205号, 2019),『デジタル・シティズンシッププラス―やってみよう ! 創ろう ! 善きデジタル市民への学び』(2022, 大月出版, 共著)。
【本書での担当 : コラム 6】

石井雄隆(いしい・ゆたか)
千葉大学教育学部大学院教育学研究科・准教授, 理化学研究所革新知能統合研究センター・客員研究員。東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。主な業績として『英語教育における自動採点―現状と課題』
(2020, ひつじ書房, 共著),『Data Mining and Learning Analytics: Applications in Educational Research』(2016, John Wiley & Sons, 分担執筆)他。
【本書での担当 : コラム 5】

大木 充(おおき・みつる)
京都大学人間環境学研究科・名誉教授。パリ第 8 大学博士課程修了。博士(言語学)。主な業績として『CEFR の理念と現実―現実編 教育現場へのインパクト』(2021, くろしお出版, 共著),『CEFR-CV の「仲介」と複言語・複文化能力』(2024, 凡人社, 共著)他。
【本書での担当 : 第 6 章】

小田登志子(おだ・としこ)
東京経済大学全学共通教育センター・教授。コネチカット大学大学院修了。博士(言語学)。主な業績として『英語教育と機械翻訳』(2023, 金星堂, 共著),「プロンプトエンジニアリングとしての日英比較による英文法学習」(2023,『早稲田日本語教育学』No.35, 33–44)他。
【本書での担当 : コラム 3】

検校裕朗(けんこう・ひろあき)
(韓国)極東大学校グローバル文化コンテンツ学科・教授。高麗大学校大学院修了。日本語教育グローバルネットワーク韓国 GN 代表。韓国日語教育学会会長歴任。主な業績として『情報化時代の日本語・日本語教育研究』(2021, BOGOSA, 共編著),「韓国における日本語教育の成果と今後の展望―韓国日語教育学会(KAJE)(20 周年期 : 2019 ~ 20 年)における会長経験者のナラティブ分析をもとに」(2021,『日本語教育研究』54, 39–56)他。
【本書での担当 : 報告 2】

小山 悟(こやま・さとる)
九州大学留学生センター日本語教育部門・准教授。南山大学大学院修了。博士(日本語学・日本語教育学)。主な業績として『「問う力」を育てる理論と実践―問い・質問・発問の活用の仕方を探る』(2021, ひつじ書房, 共著),『コンテントベースのデザインレシピ ー学習者の批判的思考を促す授業』(2023, 凡人社, 単著)。
【本書での担当 : エピローグ】

曾 秋桂(そう・しゅうけい)
(台湾)淡江大学日本語学科教授。広島大学総合科学部博士。主な業績として『持続可能なる文学の原動力―エコフェミニズム、AI、村上春樹を切口に―』(2022、瑞蘭國際出版),『AI 技術で切り拓く日本語教育・文学研究のエポックメーキングな可能性』(2023. 瑞蘭國際出版)。『村上春樹研究叢書』(淡江大学出版センター)を編集。
【本書での担当 : 報告 1】

長谷部陽一郎(はせべ・よういちろう)
同志社大学グローバル・コミュニケーション学部・教授。京都大学大学院修了。博士(人間環境学)。主な業績として『コーパス研究の展望』(2020, 開拓社, 共著),「談話の積層構造モデル―言語の線条性と概念構造の展開に関する試論」(2024,『認知言語学論考 No. 18』269–309)他。
【本書での担当 : 第 2 章】

水本 篤(みずもと・あつし)
関西大学外国語学部外国語教育学研究科・教授。関西大学大学院修了。博士(外国語教育学)。主な業績として『ICT を活用した英語アカデミック ・ ライティング指導―支援ツールの開発と実践』(2017, 金星堂, 編著),『外国語教育研究ハンドブック【増補版】― 研究手法のより良い理解のために』(2023, 松柏社, 共編著)他。
【本書での担当 : 第 8 章】

峯松信明(みねまつ・のぶあき)
東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻・教授。東京大学大学院修了。博士(工学)。音声科学・工学を専門とし, 研究成果を外国語音声教育に広く応用。主な業績として『音声言語処理と自然言語処理』(2018, コロナ社, 共著),『コグニティブインタラクション』(2022, オーム社, 共著)他。
【本書での担当 : 第 9 章、第 10 章】

毛利貴美(もうり・たかみ)
岡山大学学術研究院共通教育・グローバル領域・准教授。早稲田大学大学院修了。博士(日本語教育学)。主な業績として『講義理解過程におけるアカデミック・インターアクションに関する実証的研究―留学生の視線行動から考えるグローバル化時代の大学教育』(2014, ココ出版, 単著),『公共日本語教育学―社会をつくる日本語教育』(2017, くろしお出版, 共著)他。
【本書での担当 : コラム 4】

柳瀬陽介(やなせ・ようすけ)
京都大学大学院国際高等教育院・教授。広島大学大学院修了。博士(教育学)。主な業績として「「英語力」をこれ以上商品化・貨幣化するために AI を使ってはならない―技術主導の問いから人間主導の問いへ」(2024,『早稲田日本語教育学』35, 57–72),「AI を活用して英語論文を作成する日本語話者にとっての課題とその対策」(2023,『情報の科学と技術』73(6), 219–224)他。
【本書での担当 : 第 4 章】

山田智久(やまだ・ともひさ)
西南学院大学外国語学部・教授。北海道大学大学院修了。博士(学術)。主な業績として『オンライン授業を考える―日本語教師の ICT リテラシー』(2021, くろしお出版, 編著),『日本語教師のためのアクティブ・ラーニング』(2019, くろしお出版, 共著)他。
【本書での担当 : 第 5 章】

李 羽喆(り・うてつ)
マカオ大学人文学院日本語学科・助理教授。早稲田大学大学院修了。博士(日本語教育学)。主な業績として「語彙知識を深めるにはどのように検索すればよいか―マカオの初級日本語学習者を対象に』(2024, 明治書院, 共著),『生成 AI は理想の辞書になりうるか』(2025, 明治書院, 共著)他。
【本書での担当 : 第 7 章】

李 在鎬(り・じぇほ)
早稲田大学大学院日本語教育研究科・教授。京都大学大学院修了。博士(人間環境学)。主な業績として『データ科学×日本語教育』(2021, ひつじ書房, 編著),『言語研究のためのプログラミング入門―Python を活用したテキスト処理』(2013, 開拓社, 共著)他。
【本書での担当 : 全体企画・編集ならびに第 1 章、コラム 2】