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新刊

人はなぜ言語を学ぶのか

2人の日本人多言語学習者の記録

高橋千佳[著]

定価
3,520円(3,200円+税)
ISBN
978-4-87424-965-9 C3080
発売日
2024/3/8
判型
A5
ページ数
232頁
ジャンル
言語習得 ― 言語習得専門
オンライン書店
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リアル書店在庫
紀伊國屋書店 丸善・ジュンク堂書店・文教堂

英語が事実上の共通語として機能する時代において、多言語学習に挑戦した2人の素晴らしい日本人学習者の9年の記録を二人へのインタビューを中心に紡ぐ。同時に、そのうち1人の早逝に向き合うことになった著者自身の葛藤も記す。

■「はじめに」より
本書は、2人の素晴らしい日本人多言語学習者の9年の記録である。同時に本書は、そのうち1人の・・・(全文を読む)、研究終了後の突然の死に向き合おうとした自分の記録でもある。英語が事実上の共通語として機能する時代、国内外の多くの外国語学習者が英語をコミュニケーションの手段としてのみ捉え、英語以外の外国語学習の意味を見出せない中、2人の学習者は、9年間にわたる成長や葛藤を通して、多言語学習の素晴らしさを教えてくれた。そのような2人の学習者について、2022年暮れに、イギリスの出版社、Multilingual MattersからMotivation to Learn Multiple Languages in Japan: A Longitudinal Perspective (以下、「原著」とする) を出版した。本書は、その原著に基づいたものである。2人の素晴らしい学習者の記録を執筆し終わった直後、まだ原著が出版の日の目を見る前に、私は、そのうち1人のあまりにも早すぎる死に向き合うことになった。研究者としての私は、心理的にもがきながら、自分が果たせる役割とは何かを考え続けてきた。そして思い立ったのが、彼らの思考、葛藤、成長を日本語で伝えようとする本書である。

関連情報

目次
第1章 外国語学習動機づけ理論と日本人学習者
外国語学習動機づけとは
社会教育モデル
L2セルフシステム理論
自己決定理論における内発的動機づけ
L2セルフシステム理論・内発的動機づけと日本人学習者
動機づけにおける “persistence” の重要性
LOTE学習動機づけ研究の急増
LOTE学習動機づけ先行研究の傾向
日本発のLOTE学習動機づけ研究不足の背景
日本人学習者のLOTE学習動機づけ先行研究
先行研究からみた本研究の位置づけ

第2章 研究デザイン
ユズルとシオンについて
インタビューについて
データ収集の流れ
データ分析
縦断的ケーススタディについて

第3章 初期の頃~ラジオ講座での英語学習~
実証研究の出発点
放送を通じた英語の自主学習
ユズルの集中的な学習
ユズルの半年後の変化
大学以降につながるユズルの多言語に対する姿勢
シオンの4年を超えるラジオ講座での英語学習
シオンの学習継続を支えた英語学習動機づけ
シオンの英語コミュニケーションの機会
研究課題についての考察
2人のラジオ講座での英語学習の様子から学べること
高校時代の2人を振り返って

第4章 第二外国語学習の(再)スタート
ユズルの多言語学習
ユズルのイギリスでの経験とL2理想自己
シオンの多言語学習
シオンのL2理想自己と進路選択
研究課題についての考察
2人の多言語学習から学べること
大学学部前半の2人を振り返って

第5章 日本で大学生が外国語を学ぶということ
フランスへの交換留学、そして留学前後のユズルの多言語学習
ユズルの職業関連の理想自己とL2理想自己
言語自体に対する興味と言語・文化の関係に対するユズルの見方
シオンの専門分野での集中的な学習・実習と外国語学習
シオンの外国語学習動機づけの変化
LOTE学習に対するシオンの見方
研究課題についての考察
2人の専門分野での学習から学べること
大学学部後半の2人を振り返って

第6章 人はなぜ言語を学ぶのか
~教育機関における外国語学習を超えて~
ユズルのその後の多言語学習
進路変更と多言語学習の動機づけ
ユズルにとって言語や言語学習が意味するところ
シオンのその後の外国語学習と外国語使用
教育機関での学びを終えていくシオンと彼女の外国語学習の動機づけ
シオンにとって言語や言語学習が意味するところ
研究課題についての考察
日本で多言語を学ぶということとその動機づけ
2人の自己分析から学べること
研究最後の3年間の2人を振り返って

第7章 人間としての研究者
~原著執筆を決心してから考えたこと~
ユズルの死がもたらしたもの
乏しい先行研究の中で
原著執筆開始前からつけていた日記の存在
日記からたどる自分自身の心理的変遷
原著であとがきを書いた意味
原著の表紙について
研究終了後もリフレクシブであること
省察性の3側面について
研究者が自らの感情に向き合うということ
人間としての研究者が人間についての研究を行うということ

第8章 結び~2人の多言語学習者が教えてくれたこと~
2人の9年間の変化
日本発の多言語学習動機づけ研究が理論的に示唆するところ
今後の研究の可能性
言語をこれから学習しようとする人に
人はなぜ言語を学ぶのか
著者紹介
高橋 千佳(たかはし ちか)
愛媛大学法文学部准教授。ハワイ大学マノア校第二言語研究科修了(Ph.D. in Second Language Studies)。著書に、Motivation to Learn Multiple Languages in Japan: A Longitudinal Perspective(Multilingual Matters、2023年)。