評価のモダリティ

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評価のモダリティ

現代日本語における記述的研究

高梨信乃[著]

定価
4,180円(3,800円+税)
ISBN
978-4-87424-483-8 C3081
発売日
2010/6/7
判型
A5
ページ数
258頁
ジャンル
日本語学 ― 日本語学専門
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話し手の心的態度を表すモダリティのうち、「評価のモダリティ」について、その意味・用法を詳細に記述するとともに、その体系を明らかにする。あわせて、モダリティの体系の中での「評価のモダリティ」の位置づけを提示する。

関連情報

目次
目 次
序 章 はじめに
1.本書の研究対象と目的
2.本書の立場
   2.1 「評価のモダリティ」という名称
   2.2 deontic modaityとの関係
3.本書の構成

◇第1部 評価のモダリティとは

■第1章 先行研究の概観
1.第1章の内容
2.モダリティの体系における位置づけ
   2.1 仁田義雄のモダリティ論
   2.2 奥田靖雄のモダリティ論
   2.3 工藤浩のモダリティ論
   2.4 叙法論としてのモダリティ論
3.評価のモダリティの包括的研究
   3.1 森山卓郎(1997)(2000)
   3.2 益岡隆志(2007)
4.第1章のまとめ

■第2章 評価のモダリティの概観
1.第2章の内容
2.評価のモダリティの規定と形式の分類
   2.1 評価のモダリティの規定
   2.2 形による分類
   2.3 意味による分類
3.モダリティの体系における評価のモダリティの位置とは
4.評価のモダリティの性質の概観
   4.1 文法化の度合いの低さ
   4.2 叙述文における非必須性
   4.3 客観的なモダリティ
    4.3.1 〈客観的必要性・許容性〉の用法
    4.3.2 名詞修飾節や「~こと」の内部への生起
    4.3.3 質問文への生起
    4.3.4 認識のモダリティとの相互承接の順序
   4.4 実行のモダリティとの関連
    4.4.1 形式の前にテンスの対立をもたない
    4.4.2 行為要求・意志の表明としての機能
5.第2章のまとめ

◇第2部 評価のモダリティの記述

■第3章 「-いい/いけない」型複合形式
1.第3章の内容
2.「-いい/いけない」型複合形式とは
3.文法化の度合い
4.基本的意味と二次的意味
   4.1 二次的意味の分化に関わるファクター
   4.2 二次的意味の分化-「ばいい」を例に-
   4.3 当該事態の実現性とル形/タ形
   4.4 「-いい/いけない」型複合形式全体に共通する点と相違点
5.「といい」「ばいい」「たらいい」
   5.1 基本的意味
   5.2 二次的意味
6.「ほうがいい」
   6.1 基本的意味
   6.2 二次的意味
7.「てもいい」
   7.1 基本的意味
   7.2 二次的意味
8.「なくてもいい」
   8.1 基本的意味
   8.2 二次的意味
9.「てはいけない」
   9.1 基本的意味
   9.2 二次的意味
10.「なくてはいけない」
   10.1 基本的意味
   10.2 二次的意味
11.〈話し手の発話時の評価〉と〈客観的必要性・許容性〉
   11.1 「-いい/いけない」型複合形式の二側面
   11.2 二側面とタ形の意味
   11.3 二側面をもつ形式ともたない形式
12.第3章のまとめ

■第4章 評価のモダリティの助動詞「べきだ」
1.第4章の内容
2.「べきだ」の特徴
3.形態から見た「べきだ」
4.意味から見た「べきだ」
   4.1 基本的意味と二次的意味
   4.2 「なくてはいけない」「ほうがいい」との違い
5.「べきだ」と〈話し手の発話時の評価〉
6.否定形「べきではない」
7.名詞修飾の「べき」と古代語の「べし」
8.第4章のまとめ

■第5章 評価のモダリティを表すその他の形式(1)-助動詞型-
1.第5章の内容
2.「ものだ」「ことだ」と評価のモダリティ
3.評価のモダリティを表す「ものだ」
   3.1 〈当為判断〉の「ものだ」の意味と性質
   3.2 〈当為判断〉の「ものだ」と解釈される要件
   3.3 〈当為判断〉の「ものだ」の特異な用法
   3.4 否定形「ものではない」
   3.5 3節のまとめ
4.評価のモダリティを表す「ことだ」
   4.1 いわゆる助言・忠告の「ことだ」の意味と性質
   4.2 名詞止めの「こと。」の意味と性質
   4.3 「ことだ」と「こと。」の違い
   4.4 4節のまとめ
5.評価のモダリティにおける「ものだ」「ことだ」の位置づけ
6.第5章のまとめ

■第6章 評価のモダリティを表すその他の形式(2)-複合形式型-
1.第6章の内容
2.「-いい/いけない」型以外の複合形式
   2.1 どのような単位として扱うか
   2.2 「-いい/いけない」型以外の複合形式の整理
3.「必要がある」「必要がない」とその類義形式
   3.1 概観-文法化の度合い-
    3.1.1 肯否の対応ととりたて助詞
    3.1.2 ほかの要素の挿入
    3.1.3 形態と接続のし方
    3.1.4 後接する要素
   3.2 「必要がある」
   3.3 「必要がない」
   3.4 「ことはない」「こともない」「までもない」
    3.4.1 共通する意味と性質
    3.4.2 形式間の違い
   3.5 3節のまとめ
4.「わけにいかない」「ないわけにいかない」とその類義形式
   4.1 概観-可能表現との関わり-
   4.2 「わけにいかない」
   4.3 「ないわけにいかない」「ざるを得ない」「しかない」
    4.3.1 共通する意味と性質
    4.3.2 形式間の相違点
   4.4 4節のまとめ
5.第6章のまとめ

◇第3部 評価のモダリティをめぐる問題

■第7章 評価のモダリティ形式のタ形
1.第7章の内容
2.評価のモダリティ形式のタ形の事実性
3.タ形の事実性の含意による評価のモダリティ形式の分類
4.〈反事実〉を含意する形式「べきだった」
5.〈事実〉と〈反事実〉の両方の含意がありうる形式「なくてはいけなかった」
6.〈事実〉を含意する形式「ざるを得なかった」
7.第7章のまとめ

■第8章 評価のモダリティと希望表現
1.第8章の内容
2.評価のモダリティと希望表現の接点
3.評価のモダリティと希望表現の比較
   3.1 相違点-評価(判断)と希望(感情)-
   3.2 共通点-事態の望ましさ―
4.評価のモダリティと希望表現の意味が接近する場合
   4.1 「たい」と「べきだ」
   4.2 「てほしい」と評価のモダリティ形式
    4.2.1 「てほしい」と「といい」「ばいい」「たらいい」
    4.2.2 「てほしい」と「べきだ」
5.希望表現のタ形「たかった」「てほしかった」
   5.1 考察外とする場合-描出話法-
   5.2 〈反事実〉と〈過去の希望〉
   5.3 2種類の「たかった」「てほしかった」が現れる環境
   5.4 〈話し手の発話時の希望表出〉と〈希望存在の叙述〉
6.評価のモダリティと希望表現のタ形の平行性
7.第8章のまとめ

■第9章 評価のモダリティと実行のモダリティ
1.第9章の内容
2.評価のモダリティ形式による行為要求
   2.1 評価のモダリティ形式による行為要求の特徴
   2.2 各形式による行為要求の典型
     2.2.1 〈許可〉
     2.2.2 〈否定の許可〉
     2.2.3 〈勧め〉~〈忠告〉
     2.2.4 〈否定の勧め〉~〈否定の忠告〉
   2.3 機能の変容
   2.4 質問文での機能
3.評価のモダリティ形式による意志の表明
4.行為要求から評価のモダリティへ
   4.1 命令形・禁止形と評価のモダリティ形式の基本的な違い
   4.2 命令形から評価のモダリティ形式への接近
   4.3 禁止形から評価のモダリティ形式への接近
5.第9章のまとめ

■第10章 評価のモダリティの位置づけ
1.第10章の内容
2.モダリティの体系における評価のモダリティ
3.評価のモダリティと認識のモダリティ
   3.1 評価のモダリティと認識のモダリティの関係
   3.2 評価のモダリティと認識のモダリティの交渉
4.評価のモダリティと可能表現
5.評価のモダリティと希望表現
6.評価のモダリティと実行のモダリティ
7.評価のモダリティと説明のモダリティ
8.第10章のまとめ
5.評価のモダリティ形式の整理

終 章 おわりに

  用例の出典
  参考文献
  索引
  あとがき
著者紹介
高梨 信乃(たかなし しの)

◆略歴

1965年大阪府生まれ

大阪大学文学部文学科国文学専攻卒業

大阪大学大学院文学研究科博士後期課程日本学専攻現代日本語学講座中退

大阪大学文学部助手,神戸商船大学商船学部講師を経て,

2003年より神戸大学留学生センターに勤務,現在,准教授

2007年大阪外国語大学(現・大阪大学)より博士(言語文化学)の学位を取得



◆著書

『初級を教える人のための日本語文法ハンドブック』(共著 スリーエーネットワーク 2000)

『中上級を教える人のための日本語文法ハンドブック』(共著 スリーエーネットワーク 2001)

『モダリティ』(新日本語文法選書4)(共著 くろしお出版 2002)