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現代日本語における形容詞の連用用法

外面性/内面性に着目して

永谷直子[著]

定価
4,950円(4,500円+税)
ISBN
978-4-87424-895-9 C3081
発売日
2022/4/1
判型
A5
ページ数
312頁
ジャンル
日本語学 ― 日本語学専門
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「楽しく遊んだ」は言えるのに「面白く遊んだ」はなぜ不自然に感じられるのか。「どのような場合にどのような形容詞が、連用形でふるまえるのか」という問いのもと具体的な事例をあげ現代日本語における形容詞の連用用法を記述する。

◼︎庵功雄「まえがき」より
(1)は日本語として全く問題ありません。しかし、(2)はどうでしょうか。なんとな・・・(全文を読む)く不自然な感じがするのではないでしょうか。

(1) 昨日は友達と遊んで面白かったです。
(2) ?昨日は友達と面白く遊びました。

 本書はこうした日本語学習者の産出例を見て永谷さんが抱いた違和感が出発点となっています。(2)の「面白く」は形容詞の連用形ですが、形容詞の連用形が常に使いにくいとは言えず、(3)は自然に使えます。

(3) 私は彼女が乗った車を寂しく見送った。

 形容詞連用形が示すこうした振舞いの違いを形容詞の意味的・統語的タイプの違いから包括的に説明したのが、本書の最も重要な成果です。

(中略)

本書の分析は上質の記述文法の方法論を味わわせてくれる内容になっていますが、永谷さんがこうしたストーリーに行き着くまでには様々な試行錯誤があったことと思います。ゼミや面談の場で、わずかながらその現場に立ち会えた者として、今回こうした形で本書がまとめられたことに感慨を覚えます。

関連情報

目次
まえがき(庵功雄)

序章 本書の目的と構成
 1. 本書の問題意識
 2. 本書の構成

第1部 先行研究における形容詞と連用用法

第1章 日本語の形容詞と用法
 1. はじめに
 2. 日本語の形容詞の位置づけ
 3. 形容詞の用法
第2章 形容詞の分類をめぐって
 1. はじめに
 2. 「感情形容詞」と「属性形容詞」
 3. その他の分類
 4. 本書の立場と分析
第3章 形容詞の格をめぐって
 1. はじめに
 2. 形容詞の格に着目した分類
 3. 形容詞文と主題と述部
 4. まとめ
第4章 形容詞の連用用法をめぐって
 1. はじめに
 2. 先行研究における「修飾語」の扱い
 3. 連用修飾語の分類
 4. 本書の立場と分析の観点

第2部 連用用法における形容詞のタイプ

第5章 考察の枠組み
 1. はじめに
 2. 「観察可能性」による分類から
 3. 「説明対象」による分類から:「内面的用法」の下位分類
 4. 考察の対象となる形容詞について
 5. まとめ
第6章 外面的用法と形容詞のタイプ
 1. 問題の整理
 2. 外面的用法と形容詞のタイプ
 3. まとめ
第7章 内面的用法における形容詞のタイプ(1):形容詞連用形が動きの様子を表さず、述語が認識動詞ではない場合
 1. 問題の整理
 2. 動作主認識の副詞的成分と形容詞のタイプ
 3. 動作主認識の副詞的成分の文中におけるふるまい
 4. 動作主認識の副詞的成分の諸問題
 5. まとめ
第8章 内面的用法における形容詞のタイプ(2):形容詞連用形が動きの様子を表さず、述語が認識動詞である場合
 1. 問題の整理
 2. 「思う」を述語とする文における形容詞のタイプ
 3. その他の認識動詞における形容詞連用形のふるまい:「考える」「感じる」
 4. まとめ
第9章 内面的用法における形容詞のタイプ(3):動きの様子を表す場合
 1. 問題の整理
 2. 動きの様子を表す場合の形容詞のタイプ
 3. まとめ
第10章 その他の問題:「うれしい」と「楽しい」を例に
 1. 問題の整理 
 2. なぜ「メジロがうれしくさえずっている」は不自然なのか
 3. なぜ「うれしく遊びませんか」は不自然なのか
 4. その他の形容詞と持続性
 5. まとめ
第11章 連用用法における形容詞のタイプのまとめ
 1. はじめに
 2. 連用用法に関わる要素(1):形容詞が表す判断の志向性と、要素の必須性
 3. 連用用法に関わる要素(2):形容詞が表す判断の基準
 4. 連用用法に関わる要素のまとめ:形容詞と動詞とのインターアクション

第3部 残された課題

第12章 残された課題(1)属性叙述における構文の選択:「Aさんはピアノを上手に弾きます」をめぐって
 1. 問題の整理
 2. 「上手さ」を表す文とは
 3. A型で述べる「上手さ」とは
 4. V型で述べる「上手さ」とは
 5. アンケート調査に見るA型・V型の選択と事柄の具体性
 6. まとめ
第13章 残された課題(2)言語間における構文の選択の差異:「(髪を)よく切ったね」をめぐって
 1. 問題の整理
 2. 考察の対象
 3. 「よく」と「jal」が共起する動詞の違い
 4. 日本語・韓国語の「出来ばえの述べ方」における違い
 5. おわりに
終章 まとめと今後の課題
 1. 本書における2つの視点
 2. 形容詞の連用用法の分類
 3. 連用用法の成り立ちやすさに関わる形容詞のタイプ
 4. 先行研究における形容詞の分類と本書における形容詞のタイプ分けの対応
 5. まとめと今後の課題

付録
参考文献
索引
あとがき
著者紹介
永谷 直子(ながたに なおこ)
一橋大学大学院言語社会研究科博士課程修了。博士(学術)。
韓国の大学、日本国内の大学で日本語教育に携わったのち、2015年より相模女子大学専任講師。現在同大学准教授。
◉主要論文
「「上手さ」を表す文についての考察―属性叙述における構文の選択―」『日本語文法』14-2 2014年
「「動作主認識の副詞的成分」を再考する」『日本語文法』15-1 2015年
「副詞「よく」と「잘/cal/」が表す意味について」『日本語/日本語教育研究』6 2015年
「形容詞連用形の「内面的用法」について―形容詞がヲ格名詞の様子を表す場合を例に―」 『日本語文法』17-1 2017年