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新刊

一般言語学から見た日本語の語形成と音韻構造

窪薗晴夫[著]

定価
4,950円(4,500円+税)
ISBN
978-4-87424-956-7 C3081
発売日
2023/10/10
判型
A5
ページ数
314頁
ジャンル
日本語学 ― 日本語学専門
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リアル書店在庫
紀伊國屋書店 丸善・ジュンク堂書店・文教堂

本書は、1995年に出版した『語形成と音韻構造』(くろしお出版)の続編として、語形成と音韻構造の関係(音韻構造の変化、音韻制約、統語制約、意味制約)をめぐる過去30余年間の筆者の研究を、国内外における研究の動向を踏まえてまとめたものである。

●まえがきより
この30年間で世界の音韻研究が大きく変わる中で、日本語の研究において・・・(全文を読む)も、形態論・語形成と音韻構造に関わる研究が着実に進展してきている。以前からこの分野の研究は複合語の分析を中心に展開されてきたが、音韻現象の普遍性や記述の一般性が求められる中、東京方言の連濁や複合語アクセントに関する理論的研究が進展すると同時に(本書第2章、第3章)、東京方言に偏っていた分析から諸方言の分析へと研究対象が広がってきた。また、連濁や複合語アクセントなどの複合語の音韻分析に加え、アルファベット頭文字語(第4章)や短縮語(第5章、第6章)、混成語(第6章)、逆さ言葉(第7章)といった語形成過程の研究が進み、そこに現れる音韻構造の変化や音韻制約が明らかにされている。本書はこの分野における近年の筆者の研究をまとめたものである。

音韻理論との関係では、最適性理論が唱える普遍的制約という視点から、複合語アクセント(第2章)やアルファベット頭文字語のアクセント(第4章)について新しい分析を提示する。また韻律形態論との関連では、日本語にも韻律的鋳型に基づく語形成過程が複数存在することを第6章および第7章で示し、また、複合語形成をはじめとする数多くの語形成過程に無標のアクセント構造が出現することを複数の章(第2章、第6章、第7章)で指摘する。

関連情報

目次
まえがき
序章 本書の概要
本書の構成
用語の解説

第1章 語形成と音韻構造の関係
1.1 語形成の種類
1.2 音韻構造の変化
1.3 語形成にかかる音韻制約
1.4 音韻規則にかかる制約

第2章 東京方言の複合語アクセント
2.1 東京方言のアクセント体系
2.1.1 アクセントの型とアクセント規則
2.1.2 複合語アクセント規則
2.2 複合語アクセント規則再考
2.2.1 後部要素が短い複合語
2.2.2 複合語アクセント規則の一般化
2.2.3 東京方言の言語類型論的特徴
2.2.4 例外の脳内指定
2.3 単純名詞アクセントとの関係
2.3.1 外来語アクセント規則
2.3.2 単純語アクセントと複合語アクセントの一般化
2.3.3 複合語アクセントと単純語アクセントの違い
2.3.4 外来語の特殊性
2.4 動詞・形容詞への一般化
2.5 ラテン語・英語との共通性
2.5.1 ラテン語・英語のアクセント規則
2.5.2 日本語との比較
2.6 例外的なアクセント規則
2.6.1 X-太郎とX-次郎のアクセント
2.6.2 X-町のアクセント
2.6.3 X-屋のアクセント
2.6.4 X-物のアクセント
【参考資料1】 「X-物」のアクセント

第3章 一語化しない複合語
3.1 語と句の境界
3.2 形態・意味構造と音韻構造のミスマッチ
3.2.1 並列構造
3.2.2 枝分かれ構造
3.3 意味制約と枝分かれ制約の一般化
3.4 語順と複合語化
3.5 方言差
3.6 中途半端な複合化
【参考資料2】 並列構造の複合語
【参考資料3】 右枝分かれ構造の複合語

第4章 アルファベット頭文字語のアクセント
4.1 2つのアクセント型
4.2 起伏式のアルファベット頭文字語
4.3 パラドックス
【参考資料4】 アルファベット頭文字語調査語彙

第5章 短縮語形成のメカニズム
5.1 短縮語の種類と基本原理
5.2 基本的事実と制約
5.2.1 単純語の短縮
5.2.2 入力条件と出力条件
5.2.3 最小性条件(1)
5.2.4 最小性条件(2)
5.2.5 *〔軽音節+重音節〕
5.2.6 残された問題
5.3 アクセント基盤説
5.4 疑似複合語説
5.4.1 概要
5.4.2 4モーラと5モーラの境界
5.4.3 分節点
5.5 基底3分割構造説
5.5.1 概要
5.5.2 アクセントとの一致
5.5.3 短縮語との一致

第6章 語形成過程のアクセント:無標の出現
6.1 「_ズ」(グループ名)のアクセント
6.2 ポケモンのアクセント
6.3 混成語のアクセント
6.3.1 混成語の基本構造
6.3.2 混成語のアクセント
6.4 短縮語のアクセント
【参考資料5】 混成語データ

第7章 テンプレート型の語形成
7.1 赤ちゃん言葉
7.2 ニックネーム(愛称)
7.3 逆さ言葉
7.4 「グレージュ」タイプの混成語
【参考資料6】 〔お+名詞(N)〕

第8章 結び
8.1 出力のアクセント構造
8.2 語形成にかかる音韻制約
8.3 音韻規則にかかる統語・意味制約
8.4 今後の展望
【補遺】 平板型の生起条件
条件1 語種と語長の条件
条件2 意味・用法との関係
条件3 平板化形態素
条件4 疑似平板化形態素
条件5 特定の韻律構造
条件6 特定の語形成規則
【参考資料7】 動詞からの転成名詞を後部要素(N2)とする複合語

英文要旨(English summary)
参考文献
著者紹介
著者紹介
鹿児島県(薩摩)川内市生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)で英語を、名古屋大学大学院で英語学を、イギリス・エジンバラ大学で言語学・音声学を学ぶ。専門は音韻論(言語学)、他の言語との対照により日本語の仕組みを研究している。南山大学外国語学部、大阪外国語大学、神戸大学文学部で教鞭を執った後、2010年より人間文化研究機構・国立国語研究所教授。現在、神戸大学および国立国語研究所名誉教授。主な単著に『語形成と音韻構造』、The Organization of Japanese Prosody、『一般言語学から見た日本語のプロソディー』(以上、くろしお出版)、『日本語の音声』『新語はこうして作られる』『アクセントの法則』(以上、岩波書店)、『通じない日本語』(平凡社)、Word and Sentencee Prosody: The Endangered Dialect of Koshikijima Japanese(De Gruyter Mouton)など。主な編著書にHandbook of Japanese Phonetics and Phonology(De Gruyter Mouton)、The Phonetics and Phonology of Geminate Consonants(Oxford University Press)、Prosody and Prosodic Interfaces(同上)など。