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日本語文論要綱

叙述の類型の観点から

益岡隆志[著]

定価
3,960円(3,600円+税)
ISBN
978-4-87424-880-5 C3081
発売日
2021/11/10
判型
A5
ページ数
280頁
ジャンル
日本語学 ― 日本語学専門
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文の形と意味の対応を考察する文論において要となる叙述の類型の研究(叙述類型論)について考察を進め、現代日本語文法研究をさらに深化させることを目指した書。日本語の観察から他言語と共有できる一般性の高い研究課題を見出す。

■「まえがき」より
本書は、『命題の文法』で打ち出した、叙述の類型の観点による現代日本語文法研究をさらに深化・・・(全文を読む)させることを目指したものである。思い起こせば、筆者が叙述の類型の観点を意識しはじめたのは大学院に在籍していた1975年頃のことであり、それ以来長い歳月が経過している。叙述の類型の問題を取り上げた『命題の文法』の刊行以後、折に触れてこのテーマについて考える機会があったが、本格的な再考に踏み切ったのは前著『日本語構文意味論』の上梓後のことである。
文法論が対象とする領域としては、語を対象とする「語論」、文を対象とする「文論」、談話・テクストを対象とする「談話・テクスト論」の3部門を設けることができるものと考えている。このうちの語論についてはレキシコン(語彙)の研究との関わりが、また談話・テクスト論については語用論の研究との関わりが深い。私見では、これら3部門の中心は文論にあり、文論を中心にその両側に語論と談話・テクスト論を配するという構図を思い描いている。
本書が考察の対象とする叙述の類型の研究(「叙述類型論」)は、文の形と意味の対応関係を明らかにしようとする文論の課題そのものであり、その意味において、文論の要をなすものと言ってよい。本書の書名を「日本語文論要綱」とし、また「叙述の類型の観点から」という副題を添えた理由はそこにある。
文論へのアプローチの観点として筆者が重視しているものに3つのものがある。1つは、文の意味的な構成に階層性を組み込む観点(「文の意味階層構造論」)、もう1つは、形と意味が結びついた構成体である「構文」(叙述構文)の意味の在り方を探る観点(「構文意味論」)、そしてもう1つが、文構成の背後にある叙述様式に目を向ける観点(「叙述類型論」)である。これらの観点から文論にアプローチしたものが『日本語モダリティ探究』、『日本語構文意味論』、そして本書『日本語文論要綱』である。

関連情報

目次
序章

第1部 属性叙述をめぐって

第1章 属性叙述へのアプローチ
第2章 領域設定と二重主語
第3章 述語名詞におけるカテゴリー形成
第4章 拡大名詞文としてのノダ文

第2部 事象叙述をめぐって

第1章 事象叙述へのアプローチ
第2章 日本語の受動文とその言語類型的特質
第3章 日本語の恩恵文―受益文を中心に―
第4章 日本語の存在型アスペクト形式

第3部 主題と主語をめぐって

第1章 日本語の主題と主語
第2章 主題構文と主観性
第3章 主題構文としての名詞修飾節構文
第4章 ガの多機能性

終章

補説1 日本語叙述類型論の研究史
補説2 日本語の主題と主語をめぐる研究史
補説3 叙述の類型から見た文の意味階層構造

参照文献
索引
あとがき
著者紹介
益岡隆志(ますおか・たかし)
1950年 岡山市生まれ。
1974年 大阪外国語大学外国語学部英語学科卒業。
1976年 同大学院外国語学研究科英語学専攻修了。
2008年 博士(文学)、神戸大学。
神戸市外国語大学名誉教授。現在、関西外国語大学教授。
著書に『命題の文法』(1987年)、『モダリティの文法』(1991年)、『複文』(1997年)、『日本語文法の諸相』(2000年)、『三上文法から寺村文法へ』(2003年)、『日本語モダリティ探究』(2007年)、『日本語構文意味論』(2013年)。いずれも、くろしお出版。