文法変化の研究

文法変化の研究

小柳智一[著]

定価
3,740円(3,400円+税)
ISBN
978-4-87424-768-6 C3081
発売日
2018/5/28
判型
A5
ページ数
304頁
ジャンル
日本語学 ― 日本語学専門
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紀伊國屋書店 丸善・ジュンク堂書店・文教堂

本書は、最近5年間に発表した文法変化に関する論文を配列し、新たに2章をくわえて、全体を調整したものである。もとになった論文はそれぞれの機会に単独で読まれることを期待して書いたので、論文間で内容に重複があるが、一書にまとめるに当たっても、各章の読みやすさを考慮して削除しなかった。全体の予想があって書き継いだわけではなく、重要な問・・・(全文を読む)題を網羅することも企図しておらず(結果、論ずべき問題をいくつも残している)、ただその時その時で気になったことを取り上げてきた。だから、本書は書名の印象にもとり、体系的な研究書と言うよりも、文法変化に関する私のエッセイ集と言う方がふさわしい。
(中略)
このような性分の私が、文法変化について、先行研究に導かれながら、自分なりに普通に(かつ真面目に)考えた。日本語史を材料としたのは、長く親しんできた研究対象なので、扱いやすいという技術的な理由が大きいが、自分のよく知る言語をうまく写せない理論は、私にとって無意味なので、日本語の事例からはじめて文法変化一般へ思考を引き上げたいと考えたからである。そうして考えたことの、本書は記録である。ご批判いただければ、まことに幸いに思う。
(「あとがき」より)

関連情報

目次
序章 言語の歴史、言語変化、その記述
1. はじめに
2. 言語の歴史と言語変化
2.1 カス型動詞の記述
2.2 物語り文
2.3 遡行的な言語の歴史と順行的な言語変化
2.4 ありのままの言語変化
3. 言語の歴史の構築
3.1 後期クイーン的問題
3.2 手がかりと解釈
3.3 全体論的な営為
4. 言語変化の記述
4.1 類型タイプによる記述
4.2 時代区分
5. おわりに

第1章 言語変化の段階と要因
1. はじめに
2. 体系と変化
3. 案出と採用
4. 言語内要因と言語外要因
5. 採用の要因
6. 機能的利便性と評価的社会性
7. おわりに

第2章 言語変化の傾向と動向
1. はじめに
2. 言語変化の段階と要因
3. 言語変化の一般的傾向
4. 言語変化の時代的動向
5. おわりに

第3章 機能語生産
1. はじめに
2. 機能語化
3. 多機能化
4. 昇格機能語化と複合機能語化
5. おわりに

第4章 文法的意味の源泉と変化
1. はじめに
2. 機能語化と多機能化
3. 文法的意味の源泉
4. シネクドキー・メタファー・メトニミー
5. 文法的意味の変化
6. おわりに

第5章 文法変化の方向
1. はじめに
2. 機能語
3. 文法変化の方向的類型
4. 文法変化の方向性
5. おわりに

第6章 文法変化の方向と統語的条件
1. はじめに
2. 文法変化の方向
3. 機能語化が起こる位置
4. 多機能化と統語的条件
5. 例外的な事例
6. おわりに

第7章 語彙−文法変化―内容語生産と機能語生産―
1. はじめに
2. 「語彙化」という用語
3. 多内容化と内容語化
4. 内容語生産と機能語生産の全体像
5. 内容語生産と機能語生産の見取図
6. おわりに
補記

第8章 「主観」という用語―文法変化の方向に関連して―
1. はじめに
2. 意味特徴を指す用語としての「主観」
3. 事態把握を指す用語としての「主観」
4. 主観・客観・間主観性と主体・客体
5. 主観と文法変化
6. おわりに

第9章 対人化と推意
1. はじめに
2. 対人化の事例
3. 反対人化の事例
4. 推意の表意化
5. 2つの対照的な事例―疑問の「か」と「や」―
6. おわりに

第10章 文法変化と多義化 ―意味の重層化をめぐって―
1. はじめに
2. 重層化
3. 形式の重層化
4. 意味の重層化
5. 緩やかな連帯
6. 意味の連帯の形成
7. おわりに

第11章 文法制度化
1. はじめに
2. 文法制度化
3. 文法制度化の種類
3.1 文法制度化Ⅰ類
3.2 文法制度化Ⅱ類
3.3 文法制度化Ⅲ類
3.4 文法制度化Ⅳ類
4. 文法制度化の種類と境界
5. 文法制度化と機能語生産
6. おわりに

第12章 消失の言語変化―抑制・廃棄―
1. はじめに
2. 言語変化の段階と消失
3. 変化の事例―アスペクトの「り」―
4. 消失の要因
4.1 積極的な抑制
4.2 消極的な抑制
4.3 廃棄
5. 統合・交替―文法変化の複合―
6. おわりに

付章 古代日本語研究と通言語的研究
1. はじめに
2. ムードをめぐって
2.1 モダリティの意味変化の径路
2.2 「むとす」の事例
2.3 ムードの「む」の意味
2.4 「む」の起源
3. テンス・アスペクトをめぐって
3.1 テンポラリティ・アスペクチュアリティの意味変化の径路
3.2 古代日本語のテンス・アスペクト
3.3 「けり」とエヴィデンシャリティ
3.4 「けり」とミラティヴィティ
4. エヴィデンシャルをめぐって
4.1 「みゆ」「なり」のエヴィデンシャリティ
4.2 「なり」「めり」の意味の拡張
5. 存在動詞をめぐって
5.1 「あり」を含む機能語
5.2 既実現・現実
5.3 文法範疇全体の基盤としてのモダリティ
6. おわりに
著者紹介
小柳 智一(こやなぎ・ともかず)
1969年、東京都生まれ。
国学院大学文学部文学科卒業、国学院大学大学院文学研究科博士課程前期修了、同課程後期修了、博士(文学)。
福岡教育大学教育学部准教授、聖心女子大学文学部准教授、現在は聖心女子大学文学部教授。
専門は日本語文法史。