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鹿児島県甑島方言からみる文法の諸相

窪薗晴夫/木部暢子/高木千恵[編]

定価
5,060円(4,600円+税)
ISBN
978-4-87424-786-0 C3081
発売日
2019/2/28
判型
A5
ページ数
304頁
ジャンル
日本語学 ― 日本語学専門
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本書は日本語の危機方言の一つである甑島方言(鹿児島県)の文法体系・構造を、現地での方言調査をもとに、歴史言語学と対照方言学の視点を交えて考察した研究論文集である。
(中略)
甑島は鹿児島県本土の西40kmの東シナ海に浮かぶ孤島である。その方言は鹿児島方言や長崎方言の姉妹方言でありながら、本土方言とは音声的にも文法的にも異なる独・・・(全文を読む)自の進化を遂げており、近年、方言学だけでなく日本語史や言語類型論などの観点からも注目を集めている。話者は推定で2,500人ほどであるが、方言保存の運動がない中で過疎化・高齢化が進み、あと20~30年程で消滅するのではないかと危惧されている。日本の危機方言の中でも極めて危機度の高い方言の一つである。
この方言については個々の研究者が音声もしくは文法について断片的な研究報告を行ってきたが、本格的な調査が行われていなかったこともあり体系的な記述は皆無であった。そのような中、2012年からの3年間、人間文化研究機構連携研究「アジアにおける自然と文化の重層的関係の歴史的解明」の中の一つの班として、共同研究プロジェクト「鹿児島県甑島の限界集落における絶滅危機方言のアクセント調査研究」(代表者・窪薗晴夫)を行う機会を得た。「アクセント調査研究」という名称ではあったが、実際にはアクセント研究班と文法研究班に分かれて総合的な研究を目指した。本書はこの調査研究のうち、文法研究班の成果を研究論文集としてまとめあげたものである。
本書は、甑島方言の文法体系を格構造、待遇表現、敬語体系、動詞語幹交替、モダリティ、条件表現などの観点から分析した点において、この消滅に瀕した方言に関する初めての文法書と言うことができる。本書はまた、甑島方言を他の日本語方言や昔の日本語(京都方言)と比較するという「外からの視点」も持って執筆されており、単に一方言の記述文法書にとどまらず、日本語史や方言学全体に資する内容をも有している。

関連情報

目次
Ⅰ. 甑島里方言の文法概説

甑島里方言の文法概説
松丸真大

Ⅱ. 甑島の中を比べる

甑島方言の格について
坂井美日

甑島方言の素材待遇形式の運用とその地域差
酒井雅史

甑島方言からみる言語変化と伝統方言形式のゆくえ
平塚雄亮

Ⅲ. 里方言を掘り下げる

甑島里方言のモダリティ表現
白岩広行・門屋飛央・野間純平・松丸真大

甑島里方言の条件表現
有田節子・岩田美穂・江口正

Ⅳ. 甑島の外に広げる

授与動詞「くれる」と敬語体系─甑島・北薩方言における運用から─
森勇太

甑島方言における対称詞について
山本空

指示副詞の形式と意味─古典語・甑島方言を通して─
藤本真理子

甑島里方言のノダ相当形式にみられる音変化─他方言と対照して─
野間純平

動詞語幹交替より紐解く九州方言のラ行五段化
黒木邦彦

索 引
編者・執筆者一覧
著者紹介
窪薗晴夫(くぼぞの・はるお)国立国語研究所理論対照研究領域・教授
木部暢子(きべ・のぶこ)国立国語研究所言語変異研究領域・教授
高木千恵(たかぎ・ちえ)大阪大学大学院文学研究科・准教授