近刊
形態論の諸相
6つの現象と2つの理論
乙黒亮/田川拓海[著]
- 定価
- 3,080円(2,800円+税)
- ISBN
- 978-4-87424-990-1 C3080
- 発売日
- 2024/10/10
- 判型
- A5
- ページ数
- 272頁
- ジャンル
- 言語学・英語学 ― 言語学入門
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- 紀伊國屋書店 丸善・ジュンク堂書店・文教堂
現代の形態論研究において盛んに議論されているテーマから融合や阻止、ゼロ形態など6つを取り上げ、実際の言語現象を概観すると同時に、分散形態論とパラダイム関数形態論という対立する2つの理論的枠組みによる分析を提示する。
■「第1章 はじめに」より
本書は現代の形態論研究において盛んに議論されているテーマの中でこれまで日本国内で刊・・・(全文を読む)行された入門書,概説書,研究書であまり取り上げられてこなかったものに焦点を当て,その基本概念を実際の言語現象と合わせて概観すると同時に,それらの現象の理論的分析を提示することを狙いとしている。具体的には融合(syncretism),補充法(suppletion),ゼロ形態(zero morph),虚形態(empty morph),阻止(blocking),迂言法(periphrasis)の6 つのテーマを取り上げ,分散形態論(Distributed Morphology: DM)とパラダイム関数形態論(Paradigm Function Morphology: PFM) という2つの理論的枠組みでの分析を示す。
[中略]
近年日本国内においてもDM の枠組みを採用した研究は多く見られるようになったが,その理論的内容を日本語で詳細にまとめた文献はそれほど存在しない。PFM,あるいは語・パラダイム基盤のアプローチ全般に関しても,日本語で参照できる文献はほぼ皆無である。よって本書がこれらの理論の入門書の役割を担うことも目指している。またこれら2 つを合わせて提示することで,形態素という概念を仮定するのか否か,パラダイムという語と語の間の関係の実在性を認めるのか否か,といった現代の形態理論における重要な対立点が明確になる。それと同時に両方の枠組みで同一の現象の分析を示すことで,それぞれの理論的仮定においてどの部分が問題となり得るのかを浮かび上がらせる。
関連情報
- 目次
- 第1章 はじめに
第2章 形態論への2つのアプローチ
2.1 はじめに
2.2 形態理論の2つの流れ
2.3 分散形態論とパラダイム関数形態論
2.3.1 分散形態論
2.3.2 パラダイム関数形態論
2.4 まとめ
練習問題
コラム:素性について
第3章 融合
3.1 融合とは
3.1.1 標準型屈折からの逸脱
3.1.2 融合の種類
3.2 DMにおける融合
3.2.1 語彙項目の優先順位
3.2.2 語彙項目の優先順位:競合と不完全指定
3.2.3 消去を用いた分析
3.2.4 その他の融合現象の分析
3.2.5 まとめ
3.3 PFMにおける融合
3.3.1 内容パラダイムと形態パラダイム
3.3.2 素性マッピング
3.3.3 パラダイム間のインターフェイス
3.4 まとめ
練習問題
第4章 補充法
4.1 補充法とは
4.1.1 標準型屈折と補充法
4.1.2 補充法の種類
4.2 DMにおける補充法
4.2.1 Rootに対する後期挿入
4.2.2 補充の際に参照される統語情報
4.2.3 統語的な情報と補充
4.2.4 包含関係と局所性
4.2.5 DMと補充の研究
4.3 PFMにおける補充法
4.3.1 形態統語素性による補充法
4.3.2 純形態的な補充法
4.3.3 音韻的要因による補充法
4.3.4 統語環境による補充法
4.3.5 統語構造と補充法
4.4 まとめ
練習問題
コラム:純形態的という概念について
第5章 ゼロ形態
5.1 ゼロ形態とは
5.2 様々なゼロ
5.3 DMにおけるゼロ形態
5.3.1 その他ゼロ形態
5.3.2 優先的ゼロ形態
5.3.3 特定の環境において現れる依存ゼロ形態
5.3.4 ゼロ形態の実在性
5.4 PFMにおけるゼロ形態
5.4.1 語幹選択と活用型指定
5.4.2 同形出力と恒等関数デフォルト
5.4.3 形態音韻規則によるゼロ
5.4.4 イタリア語動詞活用のゼロ形態
5.5 まとめ
練習問題
第6章 虚形態
6.1 虚形態とは
6.2 ラテン語の幹母音
6.3 DMにおける虚形態
6.3.1 解離素性
6.3.2 ラテン語の幹母音と解離節点
6.3.3 その他の虚形態
6.4 PFMにおける虚形態
6.4.1 語幹形成関数による幹母音の具現化
6.4.2 挿入辞の具現化
6.5 まとめ
練習問題
第7章 阻止
7.1 阻止とは
7.2 様々な阻止
7.2.1 屈折形態と阻止
7.2.2 類義語による阻止
7.3 DMにおける阻止
7.3.1 語同士の阻止
7.3.2 その他の阻止
7.4 PFMにおける阻止
7.4.1 屈折形態での阻止
7.4.2 派生パラダイム
7.5 まとめ
練習問題
第8章 迂言法
8.1 迂言法とは
8.1.1 様々な迂言法
8.1.2 迂言法の特徴
8.2 ラテン語の迂言形
8.3 DMにおける迂言法
8.3.1 接辞と迂言形
8.3.2 ラテン語の完了形に見られる迂言法
8.3.3 英語の比較級・最上級に見られる迂言法
8.3.4 DMにおける迂言法のまとめ
8.4 PFMにおける迂言法
8.4.1 構文としての迂言形
8.4.2 逆行指定
8.5 まとめ
練習問題
コラム:構文について
第9章 おわりに 今後の形態理論の展望
9.1 形態素基盤の理論の発展と展望
9.1.1 DM以外の理論・モデル
9.1.2 DMにおける最近の研究トピックと今後の展望
9.1.3 競合と形態の分布
9.1.4 実験を用いた研究
9.1.5 DMの特徴と課題
9.2 語・パラダイム基盤理論の発展と展望
9.2.1 形態論における統計的アプローチ
9.2.2 類推と予測可能性
参考文献
索引
言語索引
著者索引
- 著者紹介
- 乙黒 亮(おとぐろ・りょう)
1977年大阪府生まれ。大阪大学文学部英語学専攻、エセックス大学大学院PhD。福井県立大学学術教養センターを経て、現在、早稲田大学法学学術院教授。専門は形態論、統語論、言語類型論。
田川拓海(たがわ・たくみ)
1979年沖縄県生まれ。筑波大学第二学群日本語・日本文化学類卒業、筑波大学大学院人文社会科学研究科修了、博士(言語学)。現在、筑波大学人文社会系准教授。専門は形態論、統語論、日本語学。
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