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構文と主観性

天野みどり/早瀬尚子[編]

定価
4,730円(4,300円+税)
ISBN
978-4-87424-877-5 C3080
発売日
2021/10/22
判型
A5
ページ数
296頁
ジャンル
日本語学 ― 日本語学専門
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「構文」の持つ全体性や形式と意味の固定化・慣習化、また実際の言語運用や歴史的変化事象について、とりわけ「主観性」という観点から論じる。言語学・英語学・日本語学の分野を越えて編まれた意欲的な一冊。

■「まえがき」より

本書は、言語学・英語学・日本語学の分野を越えて「構文」に関心を寄せる研究者が集い、通言語的な研究発展をめざし・・・(全文を読む)て2018年から進めてきた研究の成果です。
「構文」の定義は研究者により異なりますが、本書には、文の全体性に着目しているという重要な共通点があります。文は、いくつかの構成要素が様々に結び付けられ実に多様な意味を表すことができますが、さらに、結び付けられた全体は、その全体が表す意味との結びつきが固定的になり、もはや要素の総和では得られない意味に拡張することがあります。構文の持つこうした全体性や類型性、形式と意味の固定化や慣習化の問題は、言語の別を問わず、実際の言語運用や言語の歴史的変化事象と関わり、言語を論じる上でとても重要なものです。この観点から具体的な言語現象を考察すること、これが本書の第一の課題です。
さらに、本書では、「構文」を「主観性」という観点から論じることを第二の課題としました。
発話者の認識や判断、心情に関する意味がどのように言語形式で表されるかについての研究は、今に始まったことではありません。従って、言語の形式と意味を論じる概念としての「主観性」とは何か、この概念をどのように捉えれば、どのような言語現象を説明するのに有効なものとなるのかということも、言語学・英語学・日本語学の分野それぞれにおいて長い時間をかけて論じられてきました。しかし、近年、新たな言語理論、特に認知言語学を基盤とした「主観性」概念が急速に通言語的に用いられるようになり、それにつれて従来の説明概念である「主観性」との差異など、問題点も浮き彫りになりつつあります。本書では、こうした研究状況の中で、個別言語を考察対象として発展してきたそれぞれの研究分野の土台を尊重しつつ、さらに通言語的な考察も深化させるために、「主観性」概念そのものを改めて相互に考察することとしたのです。
この試みは大変難しいものであり、「主観性」とは何かについて根本から考えることにもなりました。「構文」を「主観性」の観点から論じる前に、一度立ち止まって「主観性」概念をきちんと整理し考察する必要があることを痛感したということも、一つの成果と言えるのかも知れません。分野横断的に学び合う中で突き当たった問題は、この論文集の読者の方々とともに、今後も引き続き考えていくべきものと思います。

関連情報

目次
第Ⅰ部 主観性をめぐる研究の総論および概観

第1章
総 論―構文研究・(間)主観性研究の展開
天野みどり・早瀬尚子

第2章
4種類の「主観」の用語法
小柳智一

第Ⅱ部 言語学・英語学分野

第3章
間主観的から接続的へという変化―意味機能変遷のもう1つの方向性
小野寺典子

第4章
構文拡張と主観化の解釈について―英語史におけるthe/my/Ø question isの考察に基づいて
柴﨑礼士郎

第5章
譲歩構文からの拡張
大橋 浩

第6章
フランス語の連結辞ceci dit, cela ditと語用論化
渡邊淳也

第7章
後置型懸垂分詞構文について―assuming節と(間)主観性
早瀬尚子

第8章
中間構文を含む、英語における無標識可能表現のネットワーク
本多 啓

第Ⅲ部 日本語学分野

第9章
日本語主題構文と主観性
益岡隆志

第10章
「て+みせる」の文法化
青木博史

第11章
感情形容詞の連用修飾―主観性を導く構文の機能
井本 亮

第12章
逆接の意味と構文―逸脱的なノヲ文・ノガ文の意味解釈を中心に
天野みどり

第13章
「可能性判断」と「構文」
三宅知宏
著者紹介
天野みどり(あまの みどり)
大妻女子大学文学部教授。主な業績として『文の理解と意味の創造』(笠間書院、2002)、『日本語構文の意味と類推拡張』(笠間書院、2011)、「接続助詞的な「のが」の節の文」(『日本語複文構文の研究』ひつじ書房、2014)などがある。

早瀬尚子(はやせ なおこ)
大阪大学大学院言語文化研究科准教授。主な業績として「懸垂分詞構文を動機づける「内」の視点」(『「内」と「外」の言語学』、開拓社、2009) , “The motivation for using English suspended dangling participles: A usage-based development of (inter)subjectivity,” (Usage-based approaches to language change, John Benjamins, 2014)などがある。